過去のシステムがブラックボックス化──要求書に書けない仕様をどう洗い出す?
ブラックボックス化の罠! そのまま移行すると、業務が止まるかもしれない?
2025-03-10

近年、多くの企業がシステムの老朽化やDX推進のためにシステム移行を検討しています。しかし、長年運用されてきたシステムには「ブラックボックス化」の問題があり、仕様書や要求書には書かれていない隠れた仕様が存在することが少なくありません。この見えない仕様を考慮せずに移行を進めると、業務に支障をきたす可能性があります。本コラムでは、ブラックボックス化したシステムの仕様を洗い出し、スムーズな移行を実現する方法を解説します。
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【記事要約】NHKの営業基幹システム開発訴訟、日本IBMは協議継続を希望
日本IBMは、NHKの営業基幹システム開発を巡る訴訟に対し、これまで協議を申し入れてきたと声明を発表した。同システムは契約・支払情報を管理するもので、日本IBMは現行システムの複雑性を解析し、移行リスクを指摘。2024年5月に品質確保が困難であると報告し、代替策を提示したが、NHKは契約解除を決定。IBMは協議継続を望むが、NHKは応じず訴訟に至った。IBMは裁判で対応を主張する方針。
出典:日経クロステック「IBMがNHKからの提訴を受けて声明、『幾度も協議開始を申し入れた』」2025年2月7日
ポイントをひとことで
ブラックボックス化したシステムの移行は、”見えないリスク”をどう管理するかが鍵となります。
長年運用されたシステムには、仕様書には記載されていない業務ロジックや例外処理が多く含まれています。これを把握せずに移行を進めると、新システムで業務が回らなくなり、追加開発や運用コストが膨らむリスクが高まります。
成功のポイントは、現場ヒアリング・ログ解析・リバースエンジニアリングを駆使して仕様を可視化することです。また、段階的な移行とテストを重ねることで、リスクを最小限に抑えながらスムーズなシステム刷新が可能になります。
システム移行を検討する際は、隠れた仕様の把握と計画的なアプローチを忘れずに。
ブラックボックス化したシステムの危険性
1. 現場の業務と仕様が乖離する
長年にわたり改修を重ねたシステムでは、実際の業務とシステム仕様が必ずしも一致していないケースがよくあります。ユーザー側が知らないうちに回避策や手作業での補完が行われ、現場レベルで業務が成立していることもあります。移行後に「想定していた通りに動かない」といった問題が発生するのはこのためです。
2. システム開発会社でも把握しきれない「暗黙知」
既存システムの仕様書や要求書には、システム開発当初の要件しか記載されていないことが多く、その後の改修内容が十分に記録されていない場合があります。結果として、システム開発会社が移行プロジェクトを進める際、過去の改修履歴や業務プロセスを把握しきれず、適切な設計ができないリスクが生じます。
3. 移行後のトラブルによるコスト増大
ブラックボックス化した仕様を把握しないまま移行すると、テスト段階や運用開始後に多くの想定外のトラブルが発生します。それによる追加開発や運用サポートのコストが増大し、結果的に当初の予算を大幅に超過する可能性があります。
要求書に書けない仕様を洗い出す方法
1. 現場ヒアリングの徹底
システム移行において最も重要なのは、現場の業務担当者へのヒアリングです。システム開発会社が直接、利用者の声を聞くことで、仕様書に書かれていない業務フローや運用上の工夫を発見できます。
2. システムのログやデータ解析を活用
過去の運用データやシステムのログを分析することで、どの機能が頻繁に利用されているか、どの業務で例外処理が多発しているかを把握できます。特に、手作業で処理されている部分や、特定の条件で発生する例外処理は、仕様書には記載されていないことが多いため、移行時の重要なポイントとなります。
3. リバースエンジニアリングの活用
既存システムのコードを解析し、業務ロジックを可視化することで、暗黙の仕様を明らかにすることが可能です。特に、長年の改修によって複雑化したシステムでは、リバースエンジニアリングを行うことで、現行システムの正確な挙動を把握できます。
4. 段階的な移行とテストの徹底
一度にすべてを移行するのではなく、重要な機能から優先的に移行し、テストを重ねながら段階的に新システムへ移行するアプローチが有効です。これにより、ブラックボックス化した仕様が移行後に問題を引き起こすリスクを軽減できます。
5. 現行システムのドキュメント整理
システム移行の前段階で、現在のシステム仕様を整理し直すことも重要です。業務フロー図やシステムマップを作成することで、どの部分がブラックボックス化しているのかを特定し、移行計画の精度を向上させることができます。
まとめ
ブラックボックス化したシステムをそのまま移行すると、多くの予期せぬトラブルが発生し、結果的にプロジェクトが頓挫するリスクがあります。システム移行の成功には、現場ヒアリングやデータ分析、リバースエンジニアリングなどを活用し、隠れた仕様を正確に把握することが不可欠です。
システム開発会社と協力し、現行システムの仕様を徹底的に洗い出すことで、スムーズな移行と業務の効率化を実現しましょう。
ブラックボックス化したシステムの移行も、フレシット株式会社なら安心
ブラックボックス化した既存システムの移行には、見えない仕様を正確に洗い出し、業務の本質を捉えた設計を行う力が不可欠です。フレシット株式会社は、徹底したヒアリングと業務分析を基に、仕様書に書かれない業務ロジックまで把握し、フルスクラッチ開発で最適なシステムを構築します。
特に、リバースエンジニアリングや段階的な移行戦略のノウハウを活かし、スムーズなシステム刷新を実現。過去のシステムに縛られない、柔軟で拡張性のあるシステムを提供します。
「移行後に業務が止まるのでは?」と不安を感じる企業こそ、業務にフィットしたオーダーメイドの開発ができるフレシット株式会社にご相談ください。
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<著者プロフィール>
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。