“業務を変えずにDX”は幻想か? 〜文化シヤッター訴訟が突きつけたシステム導入時の意思決定の盲点〜
現場重視と業務改善のバランスを追及する
2025-04-01

DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが加速する中、「現場の業務はそのままに、効率化だけ実現したい」という要望をよく耳にします。
しかし、システムだけを入れ替え、業務には一切手を加えないというアプローチが、本当にDXの成功につながるのでしょうか。
本コラムでは、文化シヤッターと日本IBMのシステム開発訴訟を事例に、「業務を変えずにDX」を目指す危うさと、意思決定の本質を問い直します。
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目次
【記事要約】文化シヤッター訴訟にみるDXの落とし穴、PaaS活用失敗で日本IBMに賠償命令
文化シヤッターの販売管理システム刷新において、日本IBMはPaaS「Salesforce1 Platform」での開発を請け負ったが、カスタム開発が想定の20%から95%に膨張し、開発は頓挫。東京地裁は、同社がPaaSの技術的制約を軽視しプロジェクト管理義務を怠ったと認定し、19.8億円の賠償を命じた。DX推進には、標準機能の活用と業務プロセス改革の両立が不可欠である。
出典:日経コンピュータ、2022年8月4日号 pp.104-106「販売管理システムの開発が頓挫 日本IBMに19.8億円の賠償命令」
【記事要約】文化シヤッター訴訟確定、DX失敗の責任問われ日本IBMに約20億円の賠償命令
文化シヤッターのDX推進の一環で始まった販売管理システム刷新が頓挫し、日本IBMに約20億円の賠償が確定した。最高裁は2025年1月、双方の上告を棄却。PaaS「Salesforce1 Platform」の制約やカスタム開発の過剰による構築失敗が主因とされ、プロジェクト管理の不備がDX失敗に直結した。本件は、クラウド活用における適切な設計と標準機能重視の重要性を浮き彫りにしている。
出典:日経クロステック「文化シヤッターのシステム開発訴訟の判決が確定、日本IBMに20億円の賠償命じる」2025年1月15日
ポイントをひとことで
このコラムは、「業務を変えずにDXを実現したい」という多くの企業が抱きがちな幻想に警鐘を鳴らしています。現場の声を尊重するあまり、課題の本質に踏み込まずにシステム化を進めると、結果的に非効率を固定化し、開発コストや運用負荷が膨らむリスクがあります。特に文化シヤッターの事例は、業務フローに過度に引っ張られた結果、プロジェクトが頓挫した典型例です。DX成功の鍵は、“変わる覚悟”と“柔軟に業務を再設計する視点”にあるといえます。
システム刷新は業務改善の代替ではない
DXの導入に際し、「業務フローはそのままでいいから、今のやり方をシステム化してほしい」と考える担当者は少なくありません。特に長年使い続けてきた業務プロセスや、現場に根付いた習慣を変えることには、大きな抵抗があるのが実情です。
しかし、現状の業務をそのままデジタルに置き換えるだけでは、非効率や属人性といった問題点も引き継がれてしまいます。DXの目的は“今のやり方をそのまま再現する”ことではなく、“より良い業務のあり方をテクノロジーで実現する”ことにあるのです。
「業務に合わせたシステム化」が招いたプロジェクト崩壊
この問題の本質を浮き彫りにしたのが、文化シヤッターと日本IBMの間で起きた販売管理システム刷新プロジェクトの失敗事例です。文化シヤッターは、SalesforceをベースとしたPaaSで新システムを構築するにあたり、「旧システムと同じ画面や操作性を維持すること」を強く要望しました。
その結果、標準機能を前提としていた開発方針は大きく崩れ、当初20%の想定だったカスタム開発が最終的に95%へと膨れ上がるという異常な状況に至ります。さらに、頻繁なバージョンアップに対応できない設計や、大量の不具合によってプロジェクトは頓挫。東京地裁と高裁は、日本IBMに対して20億円超の損害賠償を命じる判決を下しました。
この事例は、「現場の声をそのまま形にすること」が、必ずしも正解ではないという教訓を私たちに突きつけています。
DXに必要なのは「業務とシステム、両方を見直す視点」
「現場のニーズを尊重する」ことと「現場の要望をすべて反映する」ことは、似て非なるものです。現状の業務プロセスに問題がある場合、その課題を解決せずにシステム化を進めてしまうと、かえって非効率を固定化することになりかねません。
DXを成功に導くためには、次のような視点が求められます。
- 業務プロセスを棚卸しし、課題を明確化する
- 業務の標準化・簡素化を前提にシステム設計を行う
- システム開発会社と密に連携し、業務の最適化を支援してもらう
- 「変えるべき業務」と「守るべき業務」を見極める判断力
このように、業務の見直しとシステム導入を並行して行う姿勢こそが、本質的なDXの第一歩となるのです。
フルスクラッチ開発がもたらす柔軟性と本質的価値
業務プロセスが複雑で、標準パッケージではフィットしづらい企業にとっては、フルスクラッチ(オーダーメイド)でのシステム開発が極めて有効な選択肢となります。
フルスクラッチ開発であれば、既存業務を理解したうえで、必要な部分は残しつつ、改善すべき部分には柔軟に手を加えることが可能です。標準機能に業務を無理に合わせる必要がないため、真に業務にフィットしたシステムが構築できます。
さらに、将来的な拡張や変更にも柔軟に対応できるため、事業の成長とともに進化する“生きたシステム”として活用し続けることができます。
まとめ:DXは「変えない」ことではなく、「変わる覚悟」から始まる
「業務を変えずにDXを進めたい」という考えは、現場の負担を減らす意図として理解できます。
しかし、システム導入の本質は、“業務の課題を見直し、より良い姿へと進化させる”ことにあります。
文化シヤッター訴訟は、「現状維持で成功するDXは存在しない」という現実を私たちに示しました。
変わるべきものを見極め、変える覚悟を持つこと。
それこそが、DXを成功に導く最大の鍵なのです。
だからこそ、DXを成功に導くためには、業務をそのまま再現するのではなく、“あるべき業務の姿”を見据えたシステム設計が必要です。
フレシット株式会社は、業務の本質を丁寧に見極める要件定義力と、柔軟なフルスクラッチ開発の実行力を兼ね備えた開発パートナーです。ヒアリングから設計・開発・運用までを一貫して担い、「変えないリスク」ではなく、「変える価値」に向き合える体制で、貴社のDXを本質的に支援します。
現場に寄り添いながらも、必要な変化を共に考え、将来を見据えたシステムを構築したいとお考えでしたら、ぜひ一度フレシットにご相談ください。
オーダーメイドだからこそ実現できる、本当に意味のあるDXをサポートさせていただきます。
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<著者プロフィール>
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。
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