システムのランニングコストの相場はいくら?コスト削減方法についても解説
2025-04-04

近年、企業におけるIT化やDXの進展に伴い、業務の効率化などに向けたさまざまなシステムを導入する動きが加速しています。一方で、導入したシステムを適正に維持・管理し、最大限活用するには、ランニングコストを正確に見極めた中・長期的な予算計画の立案が重要であることも忘れてはなりません。
この記事では、システムのランニングコストが増加する要因などに触れながら、その相場や計算方法について詳しく解説しています。システムのランニングコストを削減する方法や、システムの管理・運用を外部委託する際の注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
システムのランニングコストとは
システムのランニングコストとは、運用保守、改修、トラブル対応など、システムを管理・運用保守していく上で必要な作業を実施するための継続的な費用のことです。
一般的には、定期的なメンテナンスや機能改修といった、システムを維持・管理するための実務に対して発生する「役務コスト」、およびハードウェアの保守費やネットワークの利用料など、システムを稼働させる設備に対して発生する「設備コスト」に大別されます。
ランニングコストは、当該システムを利用している限りは発生し続けるものであるため、将来に向けて起こり得るさまざまな要素を予測しながら、中・長期的な観点で考慮することが重要です。
システムのランニングコストが発生する作業
システムのランニングコストが発生する作業は、主に次のようなものです。これらの中には、コストに対する成果物を明確に可視化できないものもあります。そのため、適切に全容を把握するには、実施後の効果測定までを含めた慎重な分析・管理が不可欠となることに注意が必要です。
- サーバー・ネットワークなどのハードウェアやインフラ環境に対するメンテナンス
- システムのバージョンアップや新たな機能開発
- 付随するツールの選定やインストール
- データの保全・バックアップ作業
- トラブル時の復旧作業や再発防止手段の適用
- 従業員に対するオペレーション教育
- 課題や疑問が生じた際の解決に向けたサポート
- その他システムを適正に維持・管理する上で発生する付随作業
システムランニングコストの相場
年間で発生するシステムランニングコストの一般的な相場は、開発した際にかかった費用の10〜15%程度と言われています。つまり、開発費用が1,000万円のシステムにかかるランニングコストは、年間で100万〜150万円程度が目安です。
実際のランニングコストがこの金額を大きくオーバーしている場合は、見直しが必要であるといえるでしょう。逆に、目安の金額を大きく下回っている場合には、システムの運用保守に適切な投資をしておらず、将来に渡って安定稼働を続けるには危うい状態となっている恐れがあります。
ただし、ランニングコストの妥当性を評価する際には、相場のみにとらわれるのではなく、費用対効果の検証を含む慎重な分析を実施することが重要です。大きな金額を一気に削減したり増やしたりするようなことはせず、トラブルの発生頻度や実業務への貢献度などを総合的に考慮しながら定期的な見直しを続け、相応の時間をかけて最適化していくことをおすすめします。
システムランニングコストの計算方法
システムランニングコストを正しく計算するには、その内訳や必要となる情報をしっかりと把握の上、基本的な見積もりのステップを押さえることが重要です。以下、詳しく解説します。
システムランニングコストの内訳
システムランニングコストの基本的な内訳は、次の通りです。
- ソフトウェア・アプリケーションの運用保守費
トラブル対応や改善・最適化など、システムの核となるソフトウェアやアプリケーションを安定稼働させるための費用です。 - インフラの運用保守費
サーバーやネットワークなど、システムを稼働させるために必要となるインフラを安定的に運用するための費用です。インフラ設備を自社で保有しない場合には、リース費用やレンタル費用も含まれます。 - ユーザー向けサービス費
認知拡大のための広告費、カスタマーサポートの運営費など、システムを使うユーザーを増やしたり、利便性を高めたりするための費用です。 - 人件費
さまざまな作業にあたるエンジニア、管理者、セキュリティ専門家など、一定のスキルと知識を兼ね備えた人材を保持するための費用です。 - アウトソーシング費
運用保守のあらゆる作業を自社で賄うのではなく、すべて、もしくは一部を外部の専門家に委託する場合の費用です。
システムランニングコストを導くために必要となる情報
システムのランニングコストを正確に導くためには、主に次のような情報が必要です。
- システムの構成および仕様
- ハードウェア性能やネットワーク構成などの稼働環境
- 付随するツールや必要となる外部アプリケーションの構成および諸費用
- 安定稼働させるための人員構成・チーム体制
- トラブルが発生した際の対応フローや必要リソース
- 参考となる過去の運用事例や他社事例
これらの情報はさまざまな要因によって変化するため、運用・保守フェーズに突入したあとも定期的に収集の上、都度ランニングコストを見直す必要があります。また、すべてを漏れなく収集するには相応の時間と手間がかかることも認識しておきましょう。
システムランニングコストの見積もりステップ
上述した情報を漏れなく収集しながら、次のようなステップでシステムのランニングコストを見積もります。
- システムの仕様や要件を実現するための必要コストを明確にする
- ハードウェアやネットワークの環境維持にかかるコストを洗い出す
- 付随ツールや外部アプリケーションにかかるコストを合算する
- システムの安定稼働に必要となる人件費を算出する
- 必要に応じてプロモーションやマーケティング費用を算出する
- トラブルなど想定外の事態も考慮した予算枠を設ける
- 変更・改善・拡張など将来的なシステムの成長も加味しておく
自社における過去のプロジェクト事例や、類似システムの他社事例なども大いに参考にした上、これらのステップに沿って丁寧に進めることで、見積もりの精度を高められます。また、技術の進化や競合他社の動向など、ビジネス環境の変化に伴ってコストが大きく変わるケースもあるため、定期的に見直しながら調整を続けていくことが重要です。
システムランニングコストの計算式と一般的な例
以上を踏まえたシステムランニングコストを算出するための一般的な計算式は次の通りです。
システムランニングコスト=ソフトウェア運用保守費+インフラ運用保守費+付随ツール・アプリケーションのコスト+人件費+トラブル・拡張などを加味した予算
これらに加え、外部向けサービスのシステムであれば認知拡大やユーザー増加のためのプロモーション・マーケティング費用なども必要になります。また、大規模なシステムでは、サーバーなどの稼働に要する電気代も大きな金額になることがあるため、考慮しておくと良いでしょう。
以下、システムランニングコストの一例です。
- ソフトウェア運用保守費:450万円/年
- インフラ運用保守費:350万円/年
- 付随ツール・アプリケーションコスト:150万円/年
- 人件費:800万円/年
- 予備予算枠:200万円/年
- 電気代:50万円/年
この例では、年間で2,000万円のランニングコストが発生しています。前述の通り、システムランニングコストの相場が開発費用の10〜15%程度と考えると、それなりに大きなシステムの例といえるでしょう。なお、実際のランニングコストは、システムの内容や特性などによって大きく変わることがあります。
システムランニングコストが増加する要因
システムのランニングコストが増加する主な要因には、次のようなものがあります。
- ベンダーサポートの終了
- 故障などのトラブル発生
- 分析・評価の未実施
以下、順に解説します。
ベンダーサポートの終了
システムのランニングコストが増加する要因の1つに、システムの構成要素を提供しているベンダーのサポート終了があります。これは、サーバーなどのハードウェアに限ったことではなく、システムに不可欠となる付随ツールやアプリケーションにおけるベンダーサポートにおいても同様です。
ベンダーによるサポート終了後は、自社によって保守を実施せざるを得ないため、必要となる部材の確保やスキル・ノウハウの習得に大きな手間と時間を要し、結果的にランニングコストが上昇します。これを避けるために、ベンダーサポートを延長できることもありますが、その場合であっても費用はそれまでより高額になるのが一般的です。
故障などのトラブル発生
故障などのトラブル発生も、システムのランニングコストを増加させる要因です。トラブルをできる限り避けるためには、システムを常時監視の上、何らかの兆候が表れた際に早めの対応を実施する必要があります。
外部の専門業者と年間運用保守契約を締結し、その適用範囲に故障対応やトラブル復旧を含めておくことで、あらかじめ予算を明確にしておくことは可能です。ただし、それらを含めた運用保守料金は、一般的に高額に設定される傾向にあるため、慎重に検討することをおすすめします。
分析・評価の未実施
システムの運用保守に関する分析や評価を実施しないために、ランニングコストが高額であることに気付かないケースも珍しくはありません。これを避けるには、システムの運用保守状況に関して定期的なレビューを実施し、課題などを把握しながら費用対効果を見極めることが重要です。
特に、システムの運用保守を外部に委託している場合には、実施した作業やその成果などに関する定期的な報告を受けながら、課題があれば具体的な改善策を提案してもらう必要があります。費用対効果が悪いと感じたら、外部業者にその旨をしっかりと伝え、改善に向け協力して取り組むようにしましょう。
システムランニングコストの削減方法
システムのランニングコストを削減するには、主に次のような方法があります。
- クラウドサービスを活用する
- 自動化を推進する
- 複数のシステムを集約し効率化を図る
- 外部のプロフェッショナルに委託する
以下、それぞれについて解説します。
クラウドサービスを活用する
サーバーやネットワークなどのインフラ環境を自社で保有するオンプレミス型でシステムを運営している場合、クラウド環境に移行することでシステムランニングコストを削減できることがあります。
クラウド環境では、クラウドサービスの提供者が用意したサーバーやネットワークを自由に利用でき、自社で調達する必要がありません。また、メンテナンス、アップデート、セキュリティ対策などの運用保守に関しても自動で行われるため、役務コスト・設備コストの双方を抑えることが可能です。
自動化を推進する
システムで稼働しているソフトウェアはもちろん、多くのIT機器やネットワークなどを安定して運用するには、一般的に相応の知識とノウハウを持った人材が必要です。そこで、運用保守の業務を自動化することで、人件費などのシステムランニングコストを削減できることがあります。
例えば、システムに監視エージェントを組み込み、トラブル発生の際には自動で通知されるような仕組みを構築することで、24時間有人監視などの手間が不要となり、コストを大幅に抑えることが可能です。
複数のシステムを集約し効率化を図る
社内で複数のシステムが稼働している場合には、それらを集約することで効率性が向上し、ランニングコストを抑えられることがあります。
例えば、販売管理・在庫管理・プロジェクト管理・財務管理などの業務システムをそれぞれ個別に運用しているようなケースです。集約によってさまざまなデータのシームレスな共有や作業フローの最適化が実現できるため、ランニングコスト削減に加えて業務品質の大幅な向上も期待できます。
外部のプロフェッショナルに委託する
システムの運用保守を外部のプロフェッショナルに委託することで、ランニングコストが削減されるケースもあります。
外部委託によって運用・保守を担う要員を自社で確保する必要がなくなり、人件費などが抑えられるからです。もちろん、委託費用は別途必要となるため、複数社から見積もりを取って慎重に比較検討するなどの配慮は必要となります。
なお、システムランニングコストの削減に向け外部委託する際の注意点については、次章で詳しく解説します。
システムランニングコストの削減に向け外部委託する際の注意点
システムランニングコストの削減に向け、外部のプロフェッショナルに運用保守業務を委託する際の主な注意点やポイントは次の通りです。
- 運用保守の要件を明確化する
- 定期的な報告により課題を共有する
- 評価・改善を継続的に行う
運用保守を外部委託する際は、業務範囲を定義した上、安定稼働に向けた要件を明確にすることが重要です。要件には、データの保護やバックアップを始め、外部からの脅威に対する対策など、セキュリティを高いレベルで維持することも必ず含めておきましょう。
また、プロフェッショナルだからといって丸投げするのではなく、定期的に運用状況の報告を受けながら、課題の改善に向けて一緒に取り組む姿勢を持つことが大切です。
これらを踏まえ、委託先を選定する際には、パートナーとして親身になって伴走してくれる会社を見極める必要があります。過去に類似システムの運用保守経験があり、成果をしっかりと残している会社であれば安心といえるでしょう。
まとめ
以上、システムランニングコストの相場や削減方法、外部委託する際の注意点などについて解説しました。
システムのランニングコストを抑えながら費用対効果を高めるには、その内訳を把握した上で分析・評価を繰り返し、中・長期的な観点から最適化を進めていく必要があります。本コラムで触れたコスト増加の要因などにも注意しながら、ぜひ適正なランニングコストによるシステムの安定稼働を実現してください。
システム運用保守のコスト最適化を実現するなら、フレシット株式会社へ
システムのランニングコストを適正に管理しながら、安定稼働と業務効率化を両立するためには、専門的な知見を持つパートナーの協力が不可欠です。フレシット株式会社は、運用保守の最適化を熟知し、クラウド活用・自動化・システム統合など、コスト削減につながる最善のアプローチを提供します。
また、フレシットはシステム開発から運用保守まで一貫したサポートを行い、企業ごとの課題に寄り添った柔軟な対応が可能です。長期的な視点でのコスト管理や、定期的な評価・改善提案を行うことで、単なる「運用」ではなく、貴社の成長を支える「戦略的なIT活用」を実現します。
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システムのランニングコストを最適化し、安定した運用を実現するためには、システムの設計段階から運用を見据えた戦略が重要です。以下のコラムでは、システム開発における「見積もり」に関するポイントを詳しく解説しています。適切な開発コストの把握は、ランニングコストの適正化にも直結しますので、ぜひ併せてご覧ください。
▶ システム開発後に発生するランニングコストとは?主要な費用項目とその目安について解説
監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。