パッケージ開発とスクラッチ開発の違いとは?それぞれの特徴と適切な選び方について解説
2025-04-14

システム開発を検討する際、「パッケージ開発」と「スクラッチ開発」のどちらを選ぶべきかという課題に直面する担当者もいるのではないでしょうか。
本コラムでは、「パッケージ開発」と「スクラッチ開発」について、それぞれ詳しく解説していきます。
開発手法の違いや選び方のポイント、それぞれの成功事例なども解説していきますので、自社プロジェクトに適した開発手法を選ぶための参考になれば幸いです。
目次
パッケージ開発とは
パッケージ開発とは、あらかじめ用意された既存のソフトウェア(パッケージ)を導入して、自社の業務に適応させる手法です。
パッケージ開発では、既存のソフトウェアを利用するため、ゼロから設計する必要がありません。なお、パッケージ開発は初期費用が比較的低く抑えられている一方で、自社特有の独自要件には対応できないというデメリットもあります。
スクラッチ開発とは
スクラッチ開発は、一からシステムを設計・構築する手法です。特定の業務要件や独自ビジネスモデルに完全対応したシステムを構築したい場合に適しており、主な特徴は以下の通りです。
スクラッチ開発では、自社の要件に合わせた自由な設計を行うことができます。一から作るため、独自性の高いシステム構築を行うことができます。一方で、ゼロベースで構築するため、初期投資や導入期間が大きくなってしまうデメリットが懸念されます。
パッケージ開発とスクラッチ開発の違い
パッケージ開発とスクラッチ開発の違いを理解するために、それぞれの特徴から比較してみましょう。
比較項目 | パッケージ開発 | スクラッチ開発 |
---|---|---|
コスト | 既存システムを活用するので、比較的に低コスト | 一から構築するので、比較的に高コスト |
導入期間 | 短期間 | 長期間 |
カスタマイズ性 | カスタマイズは限定的 | 柔軟なカスタマイズ可能 |
適用範囲 | 一般的な業務要件 | 独自要件や競争優位性が必要な場合 |
コスト面の違い
パッケージ開発は、すでに市場に出回っている完成品となるシステムを前提に導入・カスタマイズを行うため、初期投資や導入にかかる予算が抑えられ、コスト面で優位性があります。
スクラッチ開発はシステムをゼロから設計・構築する手法のため、開発する際の自由度が大きい点が特徴です。
しかし、要件の詳細な定義、システム設計、コーディング、テストなど全工程を一から実施するため、開発期間が長期化し、開発費用が高額になるリスクがあります。
導入期間の違い
パッケージ開発は既存製品を利用するため、要件定義や基本設計を短期間で済ませられ、導入までのスケジュールが短縮されます。製品として完成されているため、初期設定やシステムの慣熟に時間がかからず、迅速に運用を開始できる点が評価されます。
スクラッチ開発は、システム全体の構築にあたって要件の整理から運用準備まで多段階のプロセスを踏む必要があり、その結果、導入完了までに長い期間を要する傾向があります。
特に、ユーザーや関係部門とのフィードバックを反映しながら仕様を固める場合は、納期がさらに延びる可能性があります。
カスタマイズ性の違い
パッケージ開発はあらかじめ決められた機能をベースに動作するため、ユーザーの細かいニーズに対しては一定の制約があります。システム自体が多くの企業で共通利用される汎用性を持つため、業務プロセスをシステムに合わせる必要が生じることもあり、必ずしも個別の要件に柔軟に対応できるとはいえません。
スクラッチ開発は最初から企業固有の業務フローやビジネスモデルに合わせて設計するため、システムの各要素や機能を自由にカスタマイズすることが可能です。結果として、細かな業務ニーズに応じた機能実装ができ、企業独自の競争力を強化する要素となり得ますが、その設計・開発には高度な技術と十分なリソースが求められます。
適用範囲の違い
パッケージ開発は基本的に標準的な業務要件を持つ企業に最適化されており、汎用機能が数多く用意されているため、広範な業種や企業規模で利用しやすいといえます。共通の課題や業務プロセスに対して、すぐに機能するシステムとして提供されるため、初めてシステムを導入する企業やコスト・期間面を重視する場合に適しています。
スクラッチ開発は個々の企業が抱える独自のチャレンジや、競合との差別化を図るための特殊な要件に応じたシステム作りに向いており、汎用性よりも独自性が求められるプロジェクトに効果を発揮します
パッケージ開発とスクラッチ開発の選び方
プロジェクトごとに最適な手法は異なります。パッケージ開発にするか、スクラッチ開発にするか、以下の観点から選択基準を考えてみましょう。
プロジェクト規模
開発手法を決定するうえで、プロジェクトの規模は大きな要因になります。
例えば、従業員数が少なく、業務プロセスもシンプルな中小企業の場合、パッケージ開発が適しているケースが多いです。理由としては、業務の基本的な機能がすでにパッケージ内に含まれており、大規模なカスタマイズを求められることが少ないからです。
一方、大規模プロジェクトでは、業務プロセスが複雑化し、独自の業務フローや特殊な要件が必要になるケースが多くなります。このような場合、既存のパッケージでは対応が難しいケースがあり、スクラッチ開発のような一からのシステム構築が有効となります。
また、組織の規模が大きい場合、プロジェクトにかけられるリソースや予算、さらには運用保守体制も整っているため、初期投資は大きくなったとしても、長い目で見たときにカスタマイズされたシステムが業務効率向上に寄与するケースが多い傾向にあります。
コストとスケジュール
短期間で市場へ投入する必要がある場合や、初期投資を抑えたいという企業には、短納期で運用開始が可能なパッケージ開発が魅力的です。既存のソフトウェアをベースにしているため、設計やテストにかかる期間が短く、導入に必要な人材や工数も削減しやすいというメリットがあります。
ただし、初期のコストや期間のメリットだけでなく、事業の将来計画を見据えると、柔軟なカスタマイズや機能拡張が求められる場面も出てきます。
スクラッチ開発は初期の開発費用やスケジュールが長期化するリスクはあるものの、最初から自社の業務にぴったり合った機能を盛り込むことが可能です。
結果として、長期的には運用保守コストの削減や業務効率化、さらには競争優位性の獲得につながる場合も多いため、初期投資とその後のメリットとのバランスを慎重に検討することが大切です。
拡張性
システム導入は単に今すぐの業務効率化だけでなく、将来的な事業拡大や戦略の変化に対応できるかが問われます。
パッケージ開発の場合、標準機能が豊富で導入直後は安定した運用が期待できますが、企業の成長やビジネスモデルの変化に合わせた柔軟な拡張が難しい場合があります。補助的なカスタマイズや外部ツールの連携で対応することは可能ですが、根本的なシステムの柔軟性は、最初から設計段階で組み込む必要があります。
スクラッチ開発は設計段階で将来的な拡張性やモジュール化を十分に考慮することができるため、事業の成長に合わせた柔軟なシステム改修が可能です。ただし、この柔軟性を実現するには、初期の設計や技術的なリソース、さらには開発チームの熟練度が不可欠です。
つまり、短期の導入スピードや初期コストだけでなく、長期運用の視点からどれだけシステムを拡張・改善できるかを重視する場合は、スクラッチ開発が理想的な選択肢となるでしょう。
パッケージ開発とスクラッチ開発の成功事例
パッケージ開発は、あらかじめ用意されたソフトウェアをベースにカスタマイズしながら導入する手法で、短期間・低コストで業務プロセスを整備できる点が評価されています。
三菱UFJ銀行
例えば、三菱UFJ銀行は、「Salesforce Platform」を利用することで、従来のシステム開発と比べて開発費用を大幅に削減し、導入期間も短縮することに成功しました。
参考URL:https://www.salesforce.com/jp/customer-success-stories/mufg/
株式会社アイル
株式会社アイルが開発した「Aladin Office」を活用したパッケージ開発の成功事例を紹介します。
こちらでは、従来のアナログな業務プロセスをデジタル化することで、業務効率を向上させた例が報告されています。全社の実績把握期間が年単位から月単位に短縮されることで、事務作業の労力削減と人件費の削減に成功しました。
参考URL:https://aladdin-office.com/case/
スクラッチ開発は、企業独自の業務ニーズやビジネスロジックに合わせてシステムを一から構築できるため、柔軟性と独自性を追求するプロジェクトに有効です。
もみ徳
例えば、福岡で展開するマッサージリラクゼーションサービス「もみ徳」では、従来の既存パッケージでは対応できなかった独自の予約システムをスクラッチ開発することで、リピート客の獲得やスタッフの稼働管理が最適化され、その結果、競合との差別化に成功しました。
参考URL:https://rabiloo.co.jp/blog/app-case-study
株式会社クボタ
建機・農機のトータルソリューションを提供する株式会社クボタによる故障診断アプリ「Kubota Diagnostics」は、スクラッチ開発ならではの自由な設計を活かし、現場作業の効率化と信頼性向上に寄与しています。3DモデルとARの組み合わせによって、現場担当者が迅速に故障箇所を特定できる仕組みを実現し、従来の作業時間を大幅に短縮することができました。
参考URL:https://www.kubota.co.jp/news/2020/20-75j.html
まとめ
パッケージ開発とスクラッチ開発にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
コストや導入期間など、さまざまな観点からどちらの開発手法が自社に適しているか検討してみましょう。
フルスクラッチ開発なら、フレシット株式会社にお任せください
パッケージ開発は短期間・低コストで導入できる一方、カスタマイズ性に限界があり、成長する企業の柔軟なニーズに応えられないこともあります。その点、スクラッチ開発なら、自社の業務フローやビジネスモデルに完全にフィットしたシステムを構築でき、長期的な競争優位性を獲得することが可能です。
フレシット株式会社は、オーダーメイドのシステム開発を専門とし、企業の本質的な課題を解決するための最適なシステムを提供しています。経験豊富なエンジニア陣が、要件定義から設計・開発・運用保守までを一貫してサポートし、「本当に必要な機能だけを実装」することで、無駄のない効率的なシステムを構築します。
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監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。