【ETC障害に見る教訓】“つぎはぎ地獄”からの脱出法──事業の未来を支える再構築のススメ
部分改修の限界を超える、段階的再構築のすすめ
2025-04-28

2025年4月に発生したETCシステムの障害は、新機能追加に伴う改修作業が引き金となり、17路線・106カ所に影響を及ぼしました。この事例は、継ぎ接ぎ的に拡張されてきたシステム構造がもはや限界を迎えていることを象徴しています。業務の柔軟性・拡張性・セキュリティを著しく損なう“つぎはぎ地獄”は、決して特殊なケースではなく、今多くの企業が抱える構造的課題です。
本コラムでは、そのリスクの正体と、脱却に向けた現実的な開発ロードマップをご紹介します。
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目次
【記事要約】ETC障害が浮き彫りにしたDXの課題──複雑化する基幹システムと「2025年の崖」
中日本高速道路のETC障害は、継ぎはぎ的なシステム改修による複雑化が主因で、DX推進の遅れが浮き彫りとなった。基幹システムの老朽化と技術者不足が重なる「2025年の崖」が迫る中、多くの企業がブラックボックス化したシステムを抱え、改修のたびに障害リスクが高まっている。DXを進めるには、抜本的な再設計と障害時に備えた「切り戻し」体制の整備が不可欠である。
出典:日本経済新聞「ETC障害、システム複雑化が弱点 応急復旧で再開」2025年4月8日付朝刊
ポイントをひとことで
このコラムは、継ぎ接ぎ型で維持されてきた基幹システムが、企業の柔軟性・拡張性・セキュリティを根本から損なう構造的リスクを的確に捉えています。DXの推進や外部連携が求められる現在、技術的負債を抱えたシステムでは事業変化に即応できず、むしろ足かせとなる場面が増えています。部分的な改修では限界があるからこそ、段階的な再設計と中長期的視点でのフルスクラッチ再構築が、企業の持続的な成長と競争力を支える基盤になるといえるでしょう。
継ぎ接ぎ構造が招く“見えない業務リスク”
基幹システムは本来、業務の変化や成長に合わせて柔軟に対応できるものであるべきです。しかし、部分的な改修を繰り返したシステムは、各機能が相互に複雑に依存し合い、全体像を誰も把握できない状態へと陥りがちです。
こうした“つぎはぎ状態”では、わずかな仕様変更が想定外のバグや障害を引き起こしやすく、改修には過剰な工数とリスクが伴います。また、内部の構造が複雑化・属人化することで、セキュリティホールや不正アクセスの温床となる場合もあります。
DXを阻害する“古い構造”のままでは戦えない
多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、「既存の基幹システムが新しい技術やサービスに対応できない」という課題に直面しています。API連携、クラウド移行、SaaSとの統合など、現代のデジタル基盤に対応するには、旧来の構造では限界があるのです。
とくに、“改修の限界”に直面している企業では、DX施策を立ち上げたくても、既存システムの制約がボトルネックとなり、ビジネススピードを著しく損ねてしまうケースが少なくありません。
“つぎはぎ地獄”から抜け出すための再構築ロードマップ
このような状況を打開するには、以下の3ステップでの再構築が現実的かつ有効です。
1.現状の可視化と課題抽出
既存システムの構成、データフロー、改修履歴などを整理・図解化し、どの部分がボトルネック・リスク要因となっているのかを明らかにします。
2.段階的なモジュール再設計
一気に刷新するのではなく、機能単位で独立性を高めながら順次再構築していくことで、業務への影響を最小限に抑えつつ刷新を進めることが可能です。
3.将来を見据えた設計思想の導入
再構築時には、将来的な機能追加・外部連携・クラウド活用などを前提としたアーキテクチャを設計し、“育てられるシステム”へと転換していきます。
このような再構築は、フルスクラッチ開発の得意なシステム開発会社との連携により、初期からビジネス要件を深く理解しながら進めることが成功の鍵となります。
まとめ
継ぎ接ぎだらけの基幹システムは、いつか「動いているように見えるが実は限界を超えている」状態に陥ります。改修に限界を感じている今こそ、全体最適と持続可能性を見据えた再構築に踏み切るタイミングです。
“つぎはぎ地獄”から抜け出すことは、単なる技術的な更新ではなく、事業の未来を支えるための戦略的な投資です。これからの成長と変化に対応できる、柔軟で安全なIT基盤を構築するために、一度立ち止まり、構造そのものを見直す決断が求められています。
このように、持続可能なIT基盤への再構築は、事業の柔軟性と競争力を高めるための重要な一手です。
フルスクラッチ開発を専門とするフレシット株式会社では、現状システムの可視化から課題整理、段階的な再設計、将来を見据えたアーキテクチャ構築まで、企業に寄り添いながら一貫してご支援しています。継ぎ接ぎ構造に限界を感じているご担当者さまは、ぜひ一度ご相談ください。
貴社の業務と成長戦略にフィットした“育てていけるシステム”を、ゼロから共に創り上げてまいります。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。