なぜ発注側と開発側でズレるのか?“期待値調整”の失敗が招くプロジェクト崩壊
期待を超える前に、期待をそろえる
2025-05-14

スタートアップ企業が大手企業との協業を機に解散に追い込まれた――このようなニュースが注目を集めました。背景には、システム開発における「期待値のズレ」が大きな要因として存在します。
本コラムでは、発注側とシステム開発会社との間で起こりがちな期待値のすれ違いと、その典型パターン、そしてプロジェクト崩壊を防ぐために必要な「共通言語」の重要性について実例を交えて解説します。
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目次
【記事要約】クレジットHD解散の背景に見るシステム開発のリスク管理不足
クレジットHDは、大手金融機関との提携を機に開発規模が急拡大し、要件定義やリソース計画の甘さからプロジェクトが破綻。初期段階で開発の規模・品質に関する合意形成が不十分だったことや、ジョイントベンチャー化など費用分担の工夫を欠いた点が解散の要因となった。スタートアップにとって、システム開発の戦略設計と契約形態の選定は極めて重要である。
出典:日本経済新聞「有望フィンテック解散 大手との提携で暗雲、開発費膨張 スタートアップ 清算に学ぶ㊤」2024年11月11日付電子版
ポイントをひとことで
システム開発における“期待値のズレ”は、技術力や工数の問題以前に、認識のすれ違いが原因で起こることが多くあります。特にフルスクラッチ開発では、発注側のビジネス要件と開発側の技術的な視点を丁寧に接続し、共通言語を築くことがプロジェクト成功の鍵です。要件定義やレビュー体制を形式的に終わらせず、常に“意図”まで共有できているかを見直す姿勢が重要です。この視点を持つだけで、プロジェクトの質と成功確度は大きく変わります。
言葉は通じても、意図は通じない
システム開発の現場では、発注側と開発側が同じ言葉を使っていても、その意味するところが大きく異なるケースが少なくありません。
たとえば「使いやすい管理画面」と一言で言っても、発注側が「非IT人材でも操作できる直感的なUI」を想定していた一方で、開発側は「項目数が多く機能にアクセスしやすい構成」と理解してしまう、といった具合です。
このような“言葉の認識のズレ”は、初期の要件定義段階で顕在化せず、開発が進んだ後になって「想像と違う」といった不満につながります。特にフルスクラッチでゼロから構築する場合、初期の認識違いは致命的な手戻りやコスト増に直結します。
典型的な“期待値のズレ”パターン
以下のようなパターンは、多くのシステム開発プロジェクトで繰り返されています。
- 仕様のあいまいさによる機能漏れ
要件を抽象的に伝えたことで、開発側の想定で補完され、結果的に意図と異なる仕上がりに。 - スコープ(開発範囲)の認識違い
「それも含まれていると思っていた」という思い込みによるトラブル。 - スケジュール・工数の見積もりズレ
開発に必要な時間・人数の想定が甘く、納期や費用が現実と乖離していく。 - UI/UXの期待と実装のギャップ
画面設計に対する認識の違いが、ユーザー評価を左右する要因になることも。
“共通言語”をつくる中長期的な仕組みが必要
こうした期待値のズレを防ぐには、単なる文書や打ち合わせの積み重ねではなく、お互いが共通のイメージを持つための「共通言語」の構築が不可欠です。
そのためには以下のような取り組みが有効です。
- モックアップや画面イメージの早期提示
言葉よりも具体的な画面で認識を合わせることで、初期段階からの齟齬を防ぎます。 - レビュー機会の定期的な設定
スプリントごとにレビューとフィードバックを行い、ズレが広がる前に調整します。 - プロジェクト進行の可視化と透明性確保
チケット管理ツールやガントチャートの共有により、開発の進捗と背景を発注側も理解できます。 - “開発側任せ”にしないコミュニケーション設計
発注側の積極的な関与と意思決定の明文化が、認識のすれ違いを最小化します。
まとめ
システム開発プロジェクトが途中で頓挫する原因の多くは、「期待値のズレ」に起因します。特に、フルスクラッチでの開発では、明確な合意形成と共通認識の醸成が成功のカギを握ります。
フルスクラッチ開発において重要なのは、単にシステムを“つくる”ことではなく、パートナーとともに“創り上げていく”姿勢です。フレシット株式会社では、初期の要件整理から認識のすり合わせ、開発途中の柔軟な対応に至るまで、徹底したコミュニケーションと透明性のあるプロセスを重視しています。
貴社が思い描く理想のシステムを、期待通りではなく“期待以上”に具現化するために──。ぜひ一度、フルスクラッチ開発のパートナーとして、私たちフレシットにご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。