“開発中の仕様変更”を味方に変える。合意形成が支える柔軟なシステム開発とは
変化を味方にする開発とは。仕様変更を前提にした合意形成の重要性
2025-06-09

ビジネス環境の変化が激しい今、システム開発の現場では「開発途中での仕様変更」は避けられない現実となっています。しかし、この仕様変更を適切に扱えない場合、プロジェクトは迷走し、結果として期待を大きく裏切ることにもつながります。
本コラムでは、仕様変更をリスクではなく“味方”として捉えるために必要な合意形成の進め方と、フルスクラッチ開発ならではの柔軟性・運用対応力について解説します。
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目次
【記事要約】クレジットHD解散の背景に見るシステム開発のリスク管理不足
クレジットHDは、大手金融機関との提携を機に開発規模が急拡大し、要件定義やリソース計画の甘さからプロジェクトが破綻。初期段階で開発の規模・品質に関する合意形成が不十分だったことや、ジョイントベンチャー化など費用分担の工夫を欠いた点が解散の要因となった。スタートアップにとって、システム開発の戦略設計と契約形態の選定は極めて重要である。
出典:日本経済新聞「有望フィンテック解散 大手との提携で暗雲、開発費膨張 スタートアップ 清算に学ぶ㊤」2024年11月11日付電子版
ポイントをひとことで
現代のシステム開発では、仕様変更は例外ではなく“前提”として受け入れるべきものです。重要なのは、変更そのものを恐れるのではなく、それをどう管理し、価値ある形で取り込むかという姿勢です。フルスクラッチ開発は、その柔軟性を活かせばビジネスの変化に即応できる強力な手段となります。ただし、その力を最大限に引き出すには、発注側と開発側の継続的な合意形成と、仕様変更に対応可能な体制構築が不可欠です。まさに運用設計力の差が問われる領域です。
なぜ仕様変更は起こるのか?
仕様変更は開発の失敗ではなく、むしろ成長中のビジネスにとって自然な現象です。
市場ニーズの変化、法制度の改正、ユーザーの声、競合の動向など、外部環境の変化に対応しなければ、せっかくのシステムが陳腐化してしまうリスクすらあります。
問題は“変更が起こること”ではなく、“変更にどう向き合うか”です。
合意形成のない仕様変更がもたらす弊害
仕様変更をその場の口頭確認だけで進めてしまうと、後から「そんな話は聞いていない」「どこまで対応すべきかわからない」といった認識のズレが発生します。
結果として、開発スケジュールやコストが膨らみ、信頼関係が損なわれる原因になります。
変更に際しては、背景や目的を共有し、優先順位や影響範囲を丁寧に擦り合わせることが重要です。
柔軟な開発体制が仕様変更を前提にできる理由
フルスクラッチ開発では、パッケージに縛られない分、仕様の調整がしやすいという利点があります。
ただし、それを活かすためには、開発会社側に“変化を前提とした設計と体制”があることが前提です。たとえば、スプリントごとのマイルストーン管理や、小規模リリースとフィードバックを繰り返す開発アプローチが有効です。
加えて、柔軟なコミュニケーション体制と、ドキュメントによる合意の積み重ねが欠かせません。
開発パートナーとの“仕様変更ポリシー”を設ける
仕様変更が起こる前提で動くなら、あらかじめ「仕様変更時のルール」を設けておくことがトラブル回避につながります。
具体的には、以下のような点を事前に取り決めておくと効果的です。
- 仕様変更の申請方法と承認フロー
- コストやスケジュールへの影響確認のプロセス
- 仕様変更の履歴管理と記録形式
- 緊急対応と通常対応の区別ルール
これにより、仕様変更がプロジェクトに与える影響を“見える化”し、透明性のある運用が可能になります。
運用フェーズこそ、柔軟性の価値が発揮される
システムはリリースして終わりではありません。実際に業務で使用する中で、新たな課題や改善点が見えてくることは珍しくありません。
そうした要望に素早く対応し、現場の声を反映できる開発体制が、長期的にシステムの価値を高めていきます。
フルスクラッチ開発で重要なのは、「つくる」だけでなく「育てる」視点です。継続的に伴走してくれるパートナーと開発を進めることで、変化に強いシステムが実現します。
まとめ
ビジネスの変化に合わせて仕様が変わるのは、決して例外ではなく、これからの開発では“前提”とすべき事象です。
その変化を味方にできるかどうかは、合意形成の丁寧さと、柔軟な対応力を持った開発パートナーとの関係構築にかかっています。
フルスクラッチ開発は、こうした変化を前提にしながら、長期的な価値を共創するうえで最適なアプローチだといえるでしょう。
フルスクラッチ開発に求められるのは、単なる柔軟性ではなく、変化を前向きに捉え、ビジネスの成長に確実につなげていく力です。フレシット株式会社では、仕様変更を想定した柔軟な設計・運用保守体制を整え、要件のすり合わせから運用保守フェーズまで一貫して伴走するスタイルを大切にしています。
変化の激しい市場環境の中でも、貴社にとって本当に価値あるシステムを一緒に育てていく──そんなパートナーをお探しであれば、ぜひ私たちにご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。