“思っていたのと違う”を防ぐために。システム開発の期待値ギャップをなくす方法
業務にフィットするシステムは、対話から生まれる
2025-05-22

「仕様通りに作ったのに、なぜ不満が出るのか」。システム開発の現場でよく聞かれるこの疑問には、発注側と開発側の“期待値のズレ”という構造的な課題が潜んでいます。特にフルスクラッチ開発では、柔軟性がある反面、イメージのすれ違いが起きやすく、想定外の手戻りや不満につながるケースも少なくありません。
本コラムでは、開発後に「こんなはずじゃなかった」とならないために、ヒアリング・要件定義・中間レビューの重要性と、それらを活用した期待値ギャップの防止策について解説します。
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目次
【記事要約】クレジットHD解散の背景に見るシステム開発のリスク管理不足
クレジットHDは、大手金融機関との提携を機に開発規模が急拡大し、要件定義やリソース計画の甘さからプロジェクトが破綻。初期段階で開発の規模・品質に関する合意形成が不十分だったことや、ジョイントベンチャー化など費用分担の工夫を欠いた点が解散の要因となった。スタートアップにとって、システム開発の戦略設計と契約形態の選定は極めて重要である。
出典:日本経済新聞「有望フィンテック解散 大手との提携で暗雲、開発費膨張 スタートアップ 清算に学ぶ㊤」2024年11月11日付電子版
ポイントをひとことで
システム開発における「思っていたのと違う」というズレは、機能の過不足ではなく、発注側と開発側の期待値の非対称性に起因します。特にフルスクラッチ開発では、要件定義やレビューの密度がそのまま開発成果の精度に直結します。ヒアリングで業務の本質を捉え、ドキュメントで認識を可視化し、中間レビューで調整する──この一連のプロセスが、開発後の満足度と信頼構築のカギとなります。技術以前に「合意形成の質」が問われる領域です。
なぜ“思っていたのと違う”は起きるのか?
期待値のズレは、必ずしも双方の責任ではありません。問題は「共通のイメージが形成されていないこと」にあります。
発注側は業務課題を背景に「こうあってほしい」という要望を持ちますが、開発側は要望を“技術的に実現可能な仕様”に落とし込む必要があります。ここで翻訳のズレが起きると、「確かに動くけれど、業務にフィットしない」という状況が生まれます。
ヒアリングは“課題”を引き出す場である
多くの発注者は「こういう機能が欲しい」と語りますが、その裏には「なぜその機能が必要か」があります。開発側はその背景にある業務課題や理想の業務フローを聞き出し、単なる“要望の収集”から“課題の発掘”へと視点を転換することが求められます。
業務プロセスやユーザーの使い方に踏み込んだヒアリングは、将来的なズレを回避するための第一歩です。
要件定義書は“合意の土台”になる
要件定義書は「機能の一覧表」ではなく、「共通理解の成果物」であるべきです。
業務フロー、画面構成、入力例など、できるだけ具体的なイメージを盛り込むことで、イメージのずれを防ぐ効果があります。また、発注側にとっても「自分たちの要望がどう解釈されているか」を確認できる重要なツールになります。
双方が納得できるドキュメントをつくることは、後戻りの少ない開発体制を築くために不可欠です。
中間レビューは“期待値の再調整”のチャンス
開発が進むにつれて、発注者のイメージも変化することがあります。そのため、中間レビューの実施は非常に重要です。
画面モックアップや機能の一部を共有しながら、認識をすり合わせることで、仕様の微調整や優先順位の変更も可能になります。
レビューを単なる“報告の場”ではなく、“合意の場”と位置づけることが成功のカギです。
まとめ
“思っていたのと違う”という不満の多くは、コミュニケーションの不足ではなく、期待値の見える化と合意形成の不足から生じます。ヒアリングで課題の本質を掘り起こし、要件定義で期待を言語化し、中間レビューでズレを微調整する──これらのプロセスが揃って初めて、システム開発は本当に“使える”ものになります。フルスクラッチ開発を成功させるためには、期待値のギャップをコントロールする視点が欠かせません。
こうした期待値のギャップを防ぐには、発注者の意図や業務の背景を深く理解したうえで、丁寧に言語化・可視化していくプロセスが欠かせません。フレシット株式会社では、ヒアリングから要件定義、中間レビューに至るまで、すべての工程において「ズレを生まないための設計力」と「共創する姿勢」を大切にしています。
貴社の想いを正しく汲み取り、理想の業務フローをかたちにするフルスクラッチ開発をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。