導入で終わらせない──“進化を前提とした設計”がシステム活用の成否を分ける
リリース後こそ本番!進化し続けるシステムの条件
2025-05-15

DX推進の一環として社内報や業務支援ツールを導入する企業が増える中、リリース後の運用フェーズで成果に差が出るケースが目立っています。多くの企業が直面するのは、「改善したくても柔軟に対応できない」「機能追加にコストと時間がかかる」といった“運用負荷”の問題です。
本コラムでは、リリース後も柔軟にアップデートできるシステムを実現するために、設計段階で意識すべき視点や構造の考え方について解説します。
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目次
【記事要約】大阪ガス、DXで社内報を進化 従業員エンゲージメント向上へ
大阪ガスは、従業員の働きがい向上を目的に、社内報「がす燈」をDXの観点から大幅に刷新。SNS風の投稿機能「GASスタグラム」やハッシュタグ検索、記事ランキングなどを導入し、閲覧率を従来の「3割の壁」を超える約45.5%に向上させた。今後は閲覧データとエンゲージメントスコアの連携により、従業員の関心に即したコンテンツ配信を進め、次世代型社内報の実現を目指す。
出典:日本経済新聞「働きがい向上へ社内報進化 大ガス、閲覧率5割近くに」2025年5月13日付朝刊
ポイントをひとことで
システム導入の本質は「運用して初めて価値が生まれる」点にあります。本コラムは、導入時の完成度よりも、変化に対応できる“柔軟性”を備えた設計こそが成果を左右することを明確に示しています。実際の業務では、改善や追加機能の要望が必ず生まれます。にもかかわらず、設計段階でその余地がないシステムは、やがて使われなくなるリスクをはらんでいます。成功するシステムは、運用とともに“育てる”設計思想が貫かれているのです。
システムは「使い始めてから」が本番
どれだけ丁寧に要件定義をしても、実際の業務現場で使い始めて初めて見えてくる課題は少なくありません。特に社内向けシステムは、ユーザーの利用状況や業務の変化に応じて「こうしたい」「ここを変えたい」といった改善ニーズが発生します。
このとき、初期設計に柔軟性が備わっていないと、ちょっとした変更でも大きな改修が必要になり、コストも時間もかかります。結果として改善が後回しになり、現場では使いづらいまま運用され続ける——こうした“システムの形骸化”が多くの現場で問題になっています。
設計段階で備えるべき柔軟性とは?
継続的な改善と運用を見据えた設計では、以下のような視点が重要です。
- 拡張性のある構造設計
あらかじめ機能追加や仕様変更を見越し、モジュールごとに切り離された構造にしておくことで、改修の影響範囲を最小限に抑えることができます。 - 設定変更可能な項目の明確化
頻繁に変更が想定される条件や文言、表示項目などは、コードを修正しなくても管理画面などから編集できる設計にしておくことで、現場主導の運用が可能になります。 - データ構造の柔軟性
後からデータ項目を追加したい、表示形式を変えたいといった要望に対応できるよう、データベースの設計に余白を持たせておくことも重要です。 - ログ・アクセス履歴の取得
ユーザーの行動データを蓄積できるようにしておくことで、改善ポイントの可視化や意思決定の根拠となる情報が得られます。
これらの柔軟性を設計段階で取り入れておくことで、リリース後のシステムは“育てられる仕組み”へと変わります。
運用設計と開発体制の両立がポイント
さらに、システム開発を「開発チームだけの仕事」にせず、運用を担う部門との連携体制を構築しておくことも重要です。運用フローの中で改善要望を吸い上げ、タイムリーに反映する仕組みを持つことで、システムは現場とともに進化していきます。
また、開発段階から「今後の追加・改善」を前提としたロードマップを描いておくことも、計画的な拡張に有効です。初期段階で“すべてを盛り込む”のではなく、“段階的に育てていく”という設計思想が、成果につながるシステムを支える土台となります。
まとめ
社内向けシステムは、導入した時点で完結するものではありません。現場の変化や気づきに応じて、継続的に改善・進化していく設計があってこそ、真に“使われる”ツールになります。そのためには、初期設計から運用改善までを見据えた柔軟な構造と体制が必要です。成果の出るシステムは、設計の時点でその後の未来を見据えているのです。
こうした継続的なアップデートを前提とした仕組みを実現するには、画一的なパッケージではなく、自社の業務や運用体制に即した柔軟な設計が求められます。フレシット株式会社では、フルスクラッチ(オーダーメイド)開発を通じて、リリース後の変化や成長に対応できる拡張性の高いシステムを一から設計・構築しています。将来を見据えた“育てられるシステム”を導入したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。