成果を出す社内システムの共通点──鍵は“継続改善”の設計にあり
長期的な成果を生む、改善前提のシステム設計とは
2025-05-30

DXの一環としてシステム導入を進める企業は増加していますが、「つくって終わり」の姿勢では、期待した成果にはなかなかつながりません。特に、社内報やポータル、業務支援ツールなどの社内向けシステムは、導入後の“継続的な改善”こそがエンゲージメント向上や業務効率化のカギとなります。
本コラムでは、導入後も成長し続ける仕組みを実現するための設計思想と、運用視点から見たシステム開発の成功条件について解説します。
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目次
【記事要約】大阪ガス、DXで社内報を進化 従業員エンゲージメント向上へ
大阪ガスは、従業員の働きがい向上を目的に、社内報「がす燈」をDXの観点から大幅に刷新。SNS風の投稿機能「GASスタグラム」やハッシュタグ検索、記事ランキングなどを導入し、閲覧率を従来の「3割の壁」を超える約45.5%に向上させた。今後は閲覧データとエンゲージメントスコアの連携により、従業員の関心に即したコンテンツ配信を進め、次世代型社内報の実現を目指す。
出典:日本経済新聞「働きがい向上へ社内報進化 大ガス、閲覧率5割近くに」2025年5月13日付朝刊
ポイントをひとことで
システム開発は「納品して終わり」ではなく、導入後にどれだけ運用・改善を継続できるかが真価を問われます。本コラムが示すように、初期設計の段階で改善を見据えた構造を持たせることが、運用フェーズでの柔軟性と持続性を支えます。特に社内報やポータルのように利用者のニーズが変化しやすい領域では、データの可視化や段階的なアップデートが可能な設計が不可欠です。成功するシステムとは、変化を前提に“育てる”姿勢で構築されたものなのです。
システムは“完成”ではなく“スタート”からが勝負
多くのシステム開発プロジェクトでは、リリース直後がひとつのゴールのように扱われがちです。しかし、現場での利用が本格化するのは導入後であり、ユーザーの声や運用上の課題が見えてくるのもその段階です。つまり、開発の終了は“運用改善フェーズの始まり”であり、継続的な対応が成果の分かれ目となります。
特に社内報システムや業務支援ツールなどは、利用者の関心や業務ニーズの変化に応じて柔軟にアップデートできる設計が求められます。初期の完成度よりも、変化に応じて進化できる“持続力”のあるシステムこそ、価値を発揮するのです。
継続改善を可能にする“設計思想”とは?
持続的な改善を実現するには、初期段階から「改善ありき」で設計する必要があります。以下のような視点が欠かせません。
- ログデータや利用傾向を可視化する仕組み
どこが使われているか、どこで離脱が起きているかなどを分析できる構造にしておくことが、改善の第一歩です。 - 機能の追加や変更がしやすい構造設計
ハードコーディングされた画面や処理は変更に手間がかかります。拡張性やモジュール化を意識した設計が求められます。 - 利用部門との連携フローを設計段階で用意しておく
定期的なフィードバックを得るための仕組みをあらかじめ組み込み、改善を定常業務にできる環境づくりが重要です。 - 中長期的な運用ロードマップを持つ
短期的な効果に偏らず、段階的に改善していく前提で運用計画を立てることが必要です。
これらの設計要素が組み込まれていれば、リリース後の現場ニーズに応じて、柔軟に機能強化やUI改善を進めることができます。
“育てていく”ための体制構築と意識改革
もうひとつ重要なのが、システムを“完成品”ではなく“育てていく資産”ととらえる意識です。開発サイドだけでなく、運用部門や現場ユーザーを巻き込んで改善サイクルを回していく体制を整えることが、長期的な成果を生み出します。
また、初期段階で完璧を目指すのではなく、「段階的に改善していく」「仮説と検証を繰り返す」ことを前提とした柔軟な開発姿勢が求められます。こうした視点は、システム開発会社にも共有しておくべき重要なポイントです。
まとめ
システム開発は“つくって終わり”ではなく、“つくった後にどう活かすか”が成果を左右します。社内報やポータルのように利用頻度が高く、組織と人に密接に関わるツールこそ、継続的な改善を前提に設計されるべきです。初期構築だけでなく、運用・改善までを見据えたシステム設計と体制づくりが、真の業務支援とエンゲージメント向上を実現する鍵となるでしょう。
こうした継続的な改善を前提としたシステム運用を実現するためには、初期設計の柔軟性と将来の拡張性が不可欠です。フレシット株式会社では、一社一社の業務や運用体制に合わせて設計・開発を行うフルスクラッチのアプローチにより、導入後も進化し続けるシステムの実現を支援しています。リリース後の変化や成長を見据えたシステム構築をお考えの方は、ぜひご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。