パナソニックのVGA端子廃止に学ぶ、“とりあえず残す”が招くシステムの複雑化──決断の先送りが柔軟性を奪う
複雑化の本質は“判断の先送り”──柔軟な業務システム構築の考え方
2025-05-29

パナソニックがノートパソコンからVGA端子を廃止したというニュースは、単なる仕様変更にとどまらず、長年続けてきた「念のため残しておく」という判断にようやく終止符を打った事例として注目されています。
旧来の仕様を温存することで変化の足かせとなってしまう構造は、業務システムの世界でも数多く見られます。本コラムでは、「とりあえず残す」がもたらす業務システムの複雑化と、それを解消するための考え方について掘り下げていきます。
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目次
【記事要約】VGA端子廃止の遅れに見る日本メーカーの変化対応力
パナソニックがノートPCからVGA端子を廃止した背景には、世界的なHDMIへの移行と、薄型化や音声出力対応といった設計上の要請がある。アップルが早期に対応した中で、日本勢の出遅れは「備えておくべき」とする発想に起因すると指摘される。これは、変化に即応できない日本メーカーの体質を象徴する出来事といえる。
出典:日本経済新聞「パナソニック、ノートパソコンのVGA端子廃止」2025年5月28日付朝刊
【VGA端子とは】
VGA端子は、パソコンと外部モニターやプロジェクターを接続し、映像を出力するためのインターフェースです。正式には「Video Graphics Array」と呼ばれ、1980年代にIBMが採用したことで広く普及しました。長らく映像出力の標準規格として使われてきましたが、近年はHDMIなど、音声も一緒に転送できるより高性能な規格に置き換えられ、徐々に姿を消しつつあります。
ポイントをひとことで
「とりあえず残す」という判断が、結果的にシステムの柔軟性を奪い、将来的な足かせとなることは少なくありません。今回のパナソニックのVGA端子廃止は、技術的な進化に即応するための“選択と集中”の好例と言えます。業務システムでも同様に、使われなくなった機能や例外的な仕様を見直し、シンプルで変化に強い設計に舵を切ることが、競争力のあるIT基盤をつくる第一歩です。フルスクラッチ開発はその土台となり得ます。
「念のため残す」がもたらすシステムの複雑化
業務システムの開発や改善の場では、しばしば次のような判断が行われます。
- 「この機能、今は使っていないけど、念のため残しておこう」
- 「もしかしたら将来また使うかもしれない」
- 「前任者が設定していたから、消すのはちょっと怖い」
こうした“念のため”の積み重ねが、システムの複雑化を引き起こす大きな要因です。使われていない処理や分岐、不要なマスターデータが「見えない負債」として残り続けることで、保守性が低下し、ちょっとした修正にも大きな工数がかかるようになります。
複雑化が業務の変革を阻む構造
問題は単に運用保守の手間が増えるだけにとどまりません。“残された機能”の存在そのものが、業務変革のブレーキになっているケースも多くあります。
新しい施策を導入したくても、過去の仕様との整合性を優先して変更が難しくなり、業務部門の判断力や柔軟性が損なわれてしまうのです。
VGA端子廃止に見る「設計の意思決定」
パナソニックがVGA端子を廃止した背景にも、同様の構図があります。
海外メーカーが10年以上前に見切りをつけたVGA端子を、日本国内では「一部でまだ使われているかもしれない」という理由から長く残し続けてきました。その結果、製品設計の自由度が下がり、薄型化や軽量化といった進化の機会を逃すことになったのです。
この事例は、業務システムにおいても共通する課題を象徴しています。
「何を捨てるか」を見極める視点の重要性
すべての要望を抱え込むのではなく、「今の業務に必要かどうか」「今後も使われる前提があるか」を見極める力が求められます。
不要な仕様や処理を思い切ってそぎ落とすことで、シンプルで柔軟な設計が実現できるのです。設計の基盤に“変化を前提とする考え方”を据えることが、変化の早い市場環境に対応するためには不可欠です。
フルスクラッチ(オーダーメイド)開発という選択肢
こうした柔軟性を実現するための方法のひとつが、フルスクラッチ(オーダーメイド)開発です。
あらかじめ用意されたテンプレートやパッケージに依存せず、自社の業務に合わせて必要な機能をゼロから設計・構築することで、無駄を省いたシンプルなシステムが実現できます。
また、フルスクラッチ開発では「この業務は本当に必要か?」という問いが自然と生まれるため、業務プロセスそのものの見直しにもつながります。
まとめ
業務システムが複雑化する背景には、多くの場合、「とりあえず残す」という小さな判断の積み重ねがあります。そして、その決断の先送りこそが、変化への対応力を失わせる最大の要因です。
「過去との整合性」を守るのではなく、「未来への柔軟性」を重視した設計へ。今こそ、“何を残し、何を捨てるか”という視点をもって、システムの構造を見直すタイミングではないでしょうか。柔軟でシンプルなシステムは、確かな意思決定から生まれます。
システムに本当に必要なものを見極め、不要な複雑さを排除するためには、柔軟な発想と丁寧な設計が欠かせません。フレシット株式会社では、業務の本質に向き合いながら、ゼロベースで最適な仕組みを構築するフルスクラッチ(オーダーメイド)開発を強みとしています。既存の枠にとらわれず、将来の変化にも対応できる「しなやかなシステム」を共に描きたいとお考えの際は、ぜひご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。