「日本郵便が7桁コード導入」から考える、バラバラなID管理がもたらす非効率とその処方箋
情報の分断をなくす──ID体系統一による業務効率化のすすめ
2025-06-03

日本郵便が導入した「デジタルアドレス」は、ユーザー単位に7桁のコードを発行し、住所表記の揺れや入力ミスを防ぐ仕組みとして注目を集めています。この取り組みは、日々の業務の中で「IDがバラバラなせいで二重登録や照合ミスが発生している」と感じている企業にも大きな示唆を与えます。
本コラムでは、業務や部門ごとに分断されたID体系を見直し、全体最適を実現するためのシステム設計の考え方をご紹介します。
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目次
【記事要約】日本郵便、DXで住所表記を刷新し配送効率を向上
日本郵便は、住所を7桁の英数字コードで表す新サービス「デジタルアドレス」を開始した。従来の住所表記の揺れや誤記を解消し、API連携によって企業のECサイトでも利用可能にすることで、配送のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。個人ごとに固有コードを付与し、転居後もコードを維持できる仕組みにより、再配達や誤配のリスクを減らし、業務効率化と人手不足対策を図る。
出典:日本経済新聞「7桁英数字で配送可能に 日本郵便が新コード 楽天Gなど導入検討」2025年5月26日付朝刊
【記事要約】日本郵便、DXで「デジタルアドレス」導入 住所入力と配送を革新
日本郵便は、住所全体を7桁の英数字で識別する「デジタルアドレス」の提供を開始。従来の郵便番号では補えなかった地番や建物名も含むことで、ネット入力の簡便化と配送の効率化を目指すDX施策だ。APIを通じた企業導入も進め、将来的にはタクシーやドローン配送への応用も想定。プライバシー保護や不正対策も設計に組み込み、広範な普及を見据える。
出典:日本経済新聞「日本郵便、ネットで住所入力簡便に 7桁の英数字で識別 企業へのコード発行も検討」2025年5月27日付朝刊
ポイントをひとことで
部門ごとに異なるID体系で業務を運用していると、情報の突き合わせや重複登録、整合性確認といった“見えにくい非効率”が日常業務に積み重なります。これは単なる入力作業の問題ではなく、組織全体の生産性や判断の精度にも影響を及ぼします。全体最適の視点でIDを統一し、業務プロセスに即した設計を行うことは、DX推進の土台づくりともいえます。フルスクラッチ開発による柔軟なID設計は、その実現において非常に有効なアプローチです。
バラバラなID管理が引き起こす非効率
企業において、顧客や商品、契約情報などが部門ごとに異なるIDで管理されているケースは少なくありません。営業部では「顧客A」をA123というIDで管理し、サポート部では同じ顧客に別のIDを振っている、といった状況は決して珍しくないのです。
その結果、情報の照合や突き合わせに手間がかかり、重複登録や人的ミスが日常的に発生します。こうした事態は業務の効率を大きく損ねるだけでなく、情報の整合性を欠いた運用により、組織全体に見えない負担を生み出しています。
統一IDが実現する“全体最適”の業務環境
こうした課題を解決する鍵が、IDの「統一」です。部門を横断して一貫性のある識別子を導入することで、全社的な情報の一元管理が可能になります。顧客・契約・拠点などの情報を共通のIDで扱えば、どの部門からでも同じ情報にアクセスでき、照合作業やミスの削減につながります。
統一IDは、情報を“資産”として扱うためのインフラであり、部門最適にとどまらず、全体最適を支える根幹となるのです。
ID体系は業務に応じて柔軟に設計する
ただし、IDを一律にまとめるだけでは本質的な改善にはなりません。業務ごとの粒度や運用の流れを理解したうえで、どの単位でIDを発行するのか、どのような関連性をもたせるのかを丁寧に設計する必要があります。
たとえば、部署と拠点を別のIDで管理するのか、契約と請求を同じ単位で識別するのか、といった判断は、業務フローや将来的な拡張性を見据えて行うべきです。ID体系の設計には、単なる技術的な視点だけでなく、業務への深い理解が欠かせません。
フルスクラッチ開発で実現する理想的なID設計
こうした柔軟で実務に即したID設計を実現するには、フルスクラッチによるシステム開発が有効です。既製のパッケージソフトでは、IDの構造が固定されていたり、自社の業務に合わない仕様を無理に使わざるを得ないことが少なくありません。
フルスクラッチ開発であれば、業務内容や情報の流れに応じて自由にID体系を設計でき、他システムとの整合性や将来的な拡張にも柔軟に対応できます。業務を深く理解し、そこに最適な設計を落とし込むことこそが、全体最適なシステム構築の本質です。
まとめ
部門やシステムごとに異なるIDで情報を管理していると、業務効率の低下やミスの温床となるリスクが高まります。顧客・契約・製品などに対するID体系を統一し、全社で一貫した視点で情報を扱うことは、DX時代における業務改善の重要な一歩です。業務フローに即したID設計と柔軟なシステム構築により、業務全体の整合性と生産性向上を実現していくことが求められています。
このように、全社的な視点でID体系を設計し直すには、現場業務への深い理解と柔軟な構築力が欠かせません。フレシット株式会社では、業務プロセスに応じて一から設計するフルスクラッチ開発に強みを持ち、情報の整合性や拡張性を考慮したID体系の設計にも多数の実績があります。部門間の分断を超え、全体最適を実現する業務システムを構築したい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。