【東京アプリが示す行政DXの進化】申請・審査・給付を分断なくつなぐシステム全体設計の考え方
全部つながれば、全部早くなる──一気通貫の仕組み化とは?
2025-06-13

東京都が開発・運用する「東京アプリ」において、申請から審査・給付までを一元化する仕組みが注目されています。マイナンバーカードとの連携や申請情報のデジタル化により、従来20日程度かかっていた給付までのプロセスが10日以下に短縮できると見込まれています。
本コラムでは、行政DXの事例から学べる、業務の“分断”をなくすシステム全体設計の視点について解説します。
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目次
【記事要約】東京都、「東京アプリ」に生成AI導入を検討 行政手続きを効率化し利用促進へ
東京都はスマートフォン向け公式アプリ「東京アプリ」に生成AIを搭載し、補助金申請などの手続きを円滑化する方針を検討中。マイナンバーカードとの連携により、申請の利便性向上と人件費の削減を図る。アプリ導入で申請から給付までの期間を約半分に短縮可能と試算。さらに、生成AIにより事業者に適切な支援策を提示するなどの機能拡張も目指す。今後はAIの活用範囲と人による確認の線引きを国と連携しながら整備していく。
出典:日本経済新聞「東京アプリに生成AI 都、利用拡大へ検討 補助金申請円滑に」2025年6月6日付朝刊
ポイントをひとことで
申請・審査・給付といった一連の業務が分断されていることは、多くの組織で見落とされがちな非効率の温床です。このコラムが示すように、「東京アプリ」のような全体最適を意識したシステム設計は、業務スピードの向上だけでなく、ユーザー体験の質にも直結します。重要なのは、単にツールを導入するのではなく、業務フローの構造そのものを再設計する視点です。フルスクラッチだからこそ可能な柔軟な統合が、組織の本質的なDXを支える鍵となります。
業務が「つながらない」原因とは
企業でも行政機関でも、申請から給付に至る業務が分断される背景には、情報の受け渡しが紙やメールといった属人的な手段に依存している点があります。特に、申請の受付、審査、承認、給付といった工程が別部門で個別に運用されている場合、確認・転送・入力といった作業が重複し、時間とコストのロスにつながります。
これらの分断は、単なる業務の非効率にとどまらず、ユーザー側の不信感や混乱を生む要因にもなりかねません。
一気通貫のシステム設計に必要な視点
東京都の「東京アプリ」では、マイナンバーカードとの連携によって申請者の本人確認をシステム上で完結させ、同一のIDで複数の自治体サービスにアクセスできるようにしています。このような一元管理の仕組みは、情報の受け渡しのミスや手間を減らし、審査や給付のスピードアップにも貢献します。
企業がこうした設計を取り入れるためには、以下のような視点が求められます。
- 情報の起点と終点を明確にすること
- ワークフロー全体を俯瞰して設計すること
- 関連部門・ステークホルダー間で共通言語を持つこと
これらの視点を踏まえた上で、業務フローに沿った画面設計やデータ連携をフルスクラッチで柔軟に実現することが、分断のない運用には不可欠です。
ユーザー体験と業務効率の両立を目指して
時間短縮は業務側の利点であると同時に、ユーザーにとっての“安心”や“使いやすさ”にも直結します。東京都の保育所申請では、平均31時間かかっていた情報収集の作業を、アプリによって10時間以下に削減できるとされています。
こうした“利用者の時間を奪わない仕組み”は、サービスの信頼性向上にもつながります。申請内容の記録、進捗の可視化、問い合わせへの迅速な対応など、ユーザーとの接点を意識した設計こそが、業務と体験の両立に寄与するのです。
まとめ
申請から給付までを一気通貫で設計するには、個々の工程をデジタル化するだけでなく、全体の流れを見通した「構造の設計」が重要になります。東京都の「東京アプリ」に見られるように、ID連携や申請情報の集約、データの一元管理は、分断を防ぎ、業務のスピードと正確性を高める有効な手段です。こうした全体設計の思想は、行政に限らず、民間企業にも応用可能な視点といえるでしょう。
こうした全体設計の思想を、実際の業務に落とし込むには、業務フローや組織構造に応じた柔軟な対応力が欠かせません。フレシット株式会社では、業務の実態を丁寧にヒアリングした上で、申請から審査・給付といった一連の流れを分断なくつなぐ、フルスクラッチ(オーダーメイド)開発を行っています。パッケージに依存せず、貴社の業務に本当にフィットする“仕組み”をゼロから構築したいとお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。