「日本郵便が住所コードをAPI提供」から考える、業務の“つなぎ目”を変えるシステム設計とは
他システムとの連携を前提とした業務設計で、柔軟な運用を実現
2025-06-18

日本郵便が開始した「デジタルアドレス」では、住所を7桁の英数字コードに変換する新しい仕組みに加え、企業向けにAPIを無償提供することで、他社のECサイトや業務システムと柔軟に連携できる構造を実現しています。この取り組みは、単体で完結するシステムから「つながること」を前提とした設計への転換を象徴しており、今後の業務システム構築において見逃せないヒントを含んでいます。
本コラムでは、API連携による業務効率化の可能性と、拡張性を備えた設計の重要性について解説します。
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目次
【記事要約】日本郵便、DXで住所表記を刷新し配送効率を向上
日本郵便は、住所を7桁の英数字コードで表す新サービス「デジタルアドレス」を開始した。従来の住所表記の揺れや誤記を解消し、API連携によって企業のECサイトでも利用可能にすることで、配送のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。個人ごとに固有コードを付与し、転居後もコードを維持できる仕組みにより、再配達や誤配のリスクを減らし、業務効率化と人手不足対策を図る。
出典:日本経済新聞「7桁英数字で配送可能に 日本郵便が新コード 楽天Gなど導入検討」2025年5月26日付朝刊
【記事要約】日本郵便、DXで「デジタルアドレス」導入 住所入力と配送を革新
日本郵便は、住所全体を7桁の英数字で識別する「デジタルアドレス」の提供を開始。従来の郵便番号では補えなかった地番や建物名も含むことで、ネット入力の簡便化と配送の効率化を目指すDX施策だ。APIを通じた企業導入も進め、将来的にはタクシーやドローン配送への応用も想定。プライバシー保護や不正対策も設計に組み込み、広範な普及を見据える。
出典:日本経済新聞「日本郵便、ネットで住所入力簡便に 7桁の英数字で識別 企業へのコード発行も検討」2025年5月27日付朝刊
■ APIとは?システム同士を“つなぐ”ための仕組みです
API(エーピーアイ)とは、簡単に言えば「システムとシステムをつなぐための“受け渡し口”」のようなものです。
たとえば、ECサイトで「郵便番号を入力すると自動で住所が表示される」機能や、「外部の地図サービスを画面内で使える」ような仕組みは、裏側でAPIが働いています。
別々のサービスやデータを、わざわざ再入力したり、手作業で突き合わせたりしなくても、APIを使えば自動で連携・共有することが可能になります。
パッケージ型では制限がありますが、フルスクラッチ開発なら自社の業務に合わせて柔軟にAPIを組み込め、将来的な拡張にも対応しやすくなります。
ポイントをひとことで
日本郵便のAPI提供は、単なる機能拡張ではなく「設計思想の転換」を象徴しています。業務システムは、もはや自社内で完結するものではなく、外部サービスと常時連携することが前提となる時代です。こうした環境下では、将来の拡張や他システムとの接続を見越した柔軟な構造が不可欠です。フルスクラッチによる開発であれば、業務に即した設計とAPI連携の組み込みを両立でき、業務全体の最適化に大きく貢献します。
単体完結から「つながるシステム」へ
これまでの業務システムは、自社内で完結することを前提に設計されてきました。しかし、業務内容が複雑化し、社内外の連携が常態化している今、「他のサービスと“つながる”こと」がシステムに求められる前提条件へと変わりつつあります。顧客接点が多様化する中、業務の分断を防ぐためには、外部連携を考慮した構成が不可欠です。
郵便局アプリが示すAPI連携の利点
日本郵便の「デジタルアドレス」は、ユーザーごとの住所コードを自社サイト上で活用できるよう、企業に対してAPIを無償で提供しています。これにより、ユーザーがコードを入力するだけで、正確な住所が自動表示される仕組みが実現します。入力ミスの防止や、転居時のデータ更新の簡略化といった実務面での効果も大きく、業務効率化に直結します。
このようなAPIの活用は、郵便に限らず、在庫管理、本人確認、請求処理など、さまざまな業務領域に応用が可能です。重要なのは、こうした外部機能を「自社の業務にどうつなぐか」という設計の部分にあります。
APIを活かすための柔軟な設計思想
APIがどれほど有用であっても、それを組み込む側の業務システムが柔軟でなければ、その効果は限定的です。パッケージソフトでは、拡張性や外部連携の自由度に制限があることが多く、自社の業務プロセスや更新サイクルにフィットしない場合もあります。
一方、フルスクラッチであれば、業務の実態に即してAPIの接続ポイントを設計し、必要な仕様やセキュリティ条件にも合わせて構築が可能です。将来的に新たな外部サービスと連携する場合も、システム全体の構造を柔軟に保てるため、持続的な運用と拡張が可能になります。
業務の“つなぎ目”を変えるという視点
APIは単なる技術的な仕組みではなく、業務の接続点そのものを設計する考え方です。たとえば、手入力や手作業によって部門間を橋渡ししていた処理が、APIによって自動化されることで、人的ミスや遅延が大幅に削減されます。こうした変化は、単なるコスト削減にとどまらず、顧客体験や現場オペレーションの質向上にもつながります。
まとめ
日本郵便のAPI提供は、業務システムが単体で完結する時代から、外部と連携し続けることを前提とした時代への移行を象徴しています。API連携を活かすには、システム側の設計の自由度が不可欠です。業務に最適化されたフルスクラッチ型のシステムによって、外部連携を前提とした柔軟で拡張性のある業務基盤を構築していくことが、これからの企業に求められています。
こうしたAPI連携を前提とした設計を実現するには、業務内容や運用ルールに合わせて柔軟に構築できるシステム基盤が欠かせません。フレシット株式会社では、業務プロセスに最適化したフルスクラッチ開発を通じて、外部サービスとの連携を考慮した拡張性の高いシステム設計を数多く手がけています。つながることが前提となる時代において、自社仕様にしっかりと対応できる業務システムを検討される際は、ぜひご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。