なぜその判断をしたのか?を言語化できれば、システム化は可能です
判断フローを整えることで実現する業務の再現性
2025-06-21

生成AIの活用が広がる中で、すべての業務にAIを導入することが最適解だと考えてしまうケースも増えています。しかし、業務の再現性や安定性を担保するためには、まず「人間の判断」を構造化し、明文化されたルールとして設計することが欠かせません。
本コラムでは、日立製作所の取り組みをヒントに、AIに頼らずとも業務を最適化できる“業務設計の本質”について解説します。
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目次
【記事要約】日立、生成AIで現場の暗黙知をDX化し、保守対応を効率化
日立製作所は、熟練技術者の暗黙知を生成AIで再現し、保守対応を支援する「保守問い合わせAIエージェント」を開発・導入。マニュアルや履歴データの学習に加え、エスノグラフィー手法を用いた業務観察でプロセスを構造化し、若手でも対応可能な仕組みを実現した。対応時間を3割短縮するなどDXによる知識継承と人手不足対策のモデルとなっている。
出典:日本経済新聞「〈WithTech〉日立、熟練のコツAI再現暗黙知を構造化、対応策打ち出し」2025年6月4日付朝刊
ポイントをひとことで
業務の最適化を考えるうえで重要なのは、話題性のあるツールに飛びつくことではなく、まず自社の業務をどこまで“構造化”できているかを見直すことです。このコラムが示すように、生成AIのような先端技術に頼らずとも、業務判断をルールとして定義し、フローを整理するだけで属人化の解消や判断の標準化は十分に可能です。再現性と継続性のある業務設計こそが、システム化の土台であり、安定した運用への最短ルートです。
人間の判断には必ず“ロジック”がある
多くの業務には、一見「感覚的」に見える判断が含まれています。
たとえば、問い合わせ内容に応じて対応を判断する、異常なデータを見つける、最適な処理手順を選択する──いずれもベテラン社員の経験に頼っている場面が少なくありません。
しかし、それらの判断には、多かれ少なかれ共通の条件や基準が存在しています。
つまり、無意識に使われている“ルール”を顕在化させることができれば、それは誰にでも適用できる業務フローへと変換できるのです。
生成AIよりも先にやるべきこと──判断フローの整理
日立製作所では、発電施設や鉄道といった社会インフラの保守対応において、熟練者の暗黙知をAIに取り込む試みを進めています。
生成AIによって自然言語のまま文書を学習させることに注目が集まりましたが、実際に業務の再現性を高めたのは、業務プロセスの観察と分解による構造化です。
たとえば、製品のID確認、過去の対応履歴の照会、在庫の確認、対処方法の提示といった一連の流れは、ルールベースのシステムでも十分に再現可能です。
AIを使わなくても、条件分岐や入力項目に基づいてフローを構築することで、同様の業務最適化が実現できます。
ルール設計と業務フローの可視化がもたらす効果
属人化された判断を明文化し、ルールとして定義することで、以下のような効果が期待できます。
- 業務品質の安定
- 担当者ごとのばらつきの削減
- 教育・引継ぎの効率化
- 判断スピードの向上
これらは、AIを導入しなくとも「業務ルールの整備」と「システム化」で達成可能な成果です。
むしろ、業務が明確に整理されていない段階でAIを導入しても、期待する成果を得ることは困難でしょう。
最適化の第一歩は“仕組み化できる業務設計”から
重要なのは、業務を構造的に捉え、再現可能な手順として設計する視点です。
「ベテランでなければ判断できない」ではなく、「判断の根拠や条件を整理し、誰でも使えるルールにする」ことが求められます。
生成AIという言葉が先行する時代だからこそ、まずは業務自体をシンプルに、そして論理的に設計できる力が、長期的なシステム運用の安定につながるのです。
まとめ
生成AIは強力なツールですが、すべての業務に対する万能な解決策ではありません。
業務の最適化においては、「人の判断を構造化し、ルールとして落とし込む」という基本を丁寧に実行することが、最も堅実で信頼性のある方法です。
AIに頼る前に、まずは業務フローそのものを見直し、整理・設計することが最初の一歩となります。
こうした業務のロジック化やルール設計を成功させるためには、実際の業務内容や判断基準に深く踏み込み、それを柔軟に反映できるシステムが求められます。フレシット株式会社では、テンプレートに頼らないフルスクラッチ開発を通じて、貴社独自の業務フローや判断基準を精緻に再現し、属人化の解消や業務効率の向上を実現します。定型化しにくい業務や複雑な判断を含むシーンでも、本質に立ち返ったシステム設計で、確かな成果をご提供します。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。