スマホ完結型サービスの設計と開発の最適解
予約・受付システムに“待った”をかけろ
2025-07-06

業種を問わず、予約や受付などの手続きは、ユーザーとの最初の接点となる重要な業務です。近年は、検索・情報登録・予約・キャンセルといった一連の流れをスマホで完結させることが当たり前のように求められています。しかし、既製ツールでは対応しきれない要件や業務フローがあるのも事実です。
本コラムでは、産後ケア支援の現場での事例を踏まえ、スマホ完結型サービスに必要な設計と、フルスクラッチ開発による解決アプローチを解説します。
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目次
【記事要約】DXで産後ケアをもっと身近に──予約簡略化で利用促進へ
産後ケアの利用促進に向け、官民がDXを活用した取り組みを加速している。グッドバトンが提供するネット予約サービス「あずかるこちゃん」では、スマホから施設検索・予約が可能となり、従来の煩雑な手続きを簡略化。これにより自治体職員の業務負担も大幅に削減された。利便性向上を通じ、誰もが平等に受けられる“ユニバーサルサービス”としての定着が期待されている。
出典:日本経済新聞「『産後ケア』便利に、お気軽に 利用1割どまり、官民で活用後押し」2025年4月30日付朝刊
ポイントをひとことで
予約や受付といった業務は一見単純に見えても、実際には顧客体験と業務効率の両面に直結する重要な接点です。本コラムは、スマホ完結型の予約システムをテーマに、単なる“デジタル化”ではなく、“業務とユーザー体験の最適化”を目的としたシステム設計の必要性を示しています。特に注目すべきは、既製ツールでは対応しきれない業務要件を、フルスクラッチによってどう柔軟に実現していくかという視点です。DXを真に機能させるには、こうした設計思想が不可欠です。
スマホ完結型システムの需要と背景
スマートフォンの普及とともに、ユーザーはあらゆるサービスに対して「いつでも・どこでも・簡単に」アクセスできることを期待しています。特に予約や受付といった手続き業務では、操作性が悪いと利用離脱に直結します。企業側としても、受付対応や確認作業の負担を軽減し、人的リソースを本来の業務に集中させるために、効率的な予約・受付システムの構築が求められています。
こうした背景から、検索 → 情報登録 → 予約確定 → 変更・キャンセルまでの一連の操作を、すべてスマートフォン上で完結できる“シームレスな体験”を実現することが、サービス提供の質を左右する要素となってきています。
産後ケア事業に見る実用例と効果
産後ケア支援の分野で導入が進むネット予約システム「あずかるこちゃん」は、スマホ完結型の典型的な成功事例といえます。施設検索や予約、キャンセル手続きなどがすべてスマートフォンで可能なこの仕組みによって、利用者の利便性が大きく向上しました。
一方で、注目すべきは運営側の効果です。新潟県糸魚川市の事例では、予約対応にかかっていた市職員の作業時間が9割以上削減され、電話確認や紙による申請処理などの非効率な業務が大幅に軽減されたと報告されています。
このように、スマホ完結型のシステムは利用者満足度の向上だけでなく、運営効率の改善にも直結する実用性の高い取り組みといえます。
なぜ既製ツールでは対応しきれないのか
多くの企業が予約管理や受付システムの導入を検討する際、まずは既製の予約ツールやSaaSを候補に挙げます。しかし、導入後に「思ったように運用できない」「現場のフローに合わない」といった課題が浮き彫りになるケースは少なくありません。
その主な理由として、以下のような点が挙げられます。
- 顧客情報や予約項目のカスタマイズが制限されている
- サービス内容や利用者属性に応じた予約ロジックの設定が難しい
- 複数の施設・スタッフ・設備との連動ができない
- 管理画面が汎用的すぎて実務にそぐわない
このような課題に対しては、業務フローそのものを設計に反映できるフルスクラッチ開発が効果的です。
フルスクラッチ開発で実現する柔軟なシステム設計
フルスクラッチ開発の最大の利点は、業務にシステムを合わせられることです。以下のような柔軟な設計が可能になります。
- 利用者の行動に合わせた画面遷移やインターフェース設計
- 運営管理者ごとの業務分担を考慮した権限設定と管理画面構築
- 独自ルールに基づく予約制限や優先順位のロジック組み込み
- 既存の業務ツールや外部サービスとのAPI連携
さらに、システム導入後にユーザーの声をもとに機能を改善していくことができる点も、運用フェーズまでを見据えた“進化する仕組み”として評価されています。
まとめ
スマホ完結型の予約・受付システムは、単なるデジタル化ではなく、顧客体験と業務効率を同時に引き上げるDX施策の一つです。その効果を最大化するためには、業務とユーザー行動を的確に捉えた設計が欠かせません。既製ツールでは実現が難しい複雑な業務要件や柔軟な運用ニーズに対応するには、フルスクラッチ開発という選択肢が現実的かつ有効なアプローチといえるでしょう。システムは「合わせるもの」ではなく、「合わせて設計するもの」という発想が、これからのサービス設計に求められています。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。