政府統計の形式統一から考える、“バラバラなデータ”が足かせになる理由とその対処法
システム連携を阻む3つの落とし穴とその解決策
2025-07-08

政府が統計データの形式統一に向けて動いている背景には、フォーマットの不統一や連携の難しさといった構造的な課題があります。これは官公庁に限らず、多くの民間企業にも共通する問題です。
本コラムでは、業務システムにおける“バラバラなデータ”が引き起こす弊害と、システム設計でどう解決すべきかを解説します。
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目次
【記事要約】政府、700統計の形式統一へ──データ利活用を促進する「ジャパンダッシュボード」公開へ
政府は教育や社会保障など約700の統計を統一形式で扱うデータベース「ジャパンダッシュボード」を月内に公開する。相関係数の自動算出や地図・グラフ表示といった分析機能も備え、都道府県別の数値比較も容易になる。操作性にも配慮し、省庁横断での政策立案や民間での利活用を促進。これまでのPDFや統一されていない形式により活用しづらかった課題に対応する。
出典:日本経済新聞「政府700統計、形式を統一 近く公開 教育や社会保障、データ比較・分析しやすく」2025年7月6日付朝刊
【記事要約】政府統計の利活用、形式統一と法整備で加速へ──「ジャパンダッシュボード」に期待
政府統計は国勢調査やGDPなど幅広いが、形式の不統一やPDF主体の公開が妨げとなり、利活用は進んでいなかった。こうした現状を踏まえ、政府は「ジャパンダッシュボード」を通じて統一的なデータ提供を開始し、分析や政策立案の効率化を図る。加えて、2026年通常国会での法改正を見据え、官民のデータ連携を支える制度整備も進める方針だ。
出典:日本経済新聞「政府統計 データ利活用は途上」2025年7月6日付朝刊
ポイントをひとことで
データの利活用が注目される一方で、形式や名称の不統一は現場で深刻なボトルネックとなっています。業務部門が個別に最適化した結果、部門間連携や外部システムとの統合が困難になり、手作業が常態化するケースも珍しくありません。こうした問題は、システム導入時の要件定義や設計段階での視点の不足が根本原因です。業務全体を俯瞰し、「将来的にどうつなげるか」までを見据えたデータ設計こそが、持続可能なシステム運用の鍵になります。
1.フォーマットの違いが引き起こす非効率
業務データがCSVやExcel、PDF、紙帳票など多様な形式で存在していると、データの収集・統合に多大な労力がかかります。たとえば、一部は日付表記が「2025/07/01」で、別のデータでは「令和7年7月1日」のように異なる形式で入力されていると、それだけで自動処理が難しくなります。
こうしたフォーマットの違いは、データベース設計やシステム連携時にしばしば問題となり、業務の自動化や一元管理を阻害する要因になります。
2.項目名の揺れによる“見えないズレ”
「顧客名」と「氏名」、「売上」と「金額」など、同じ内容を示していても項目名が異なるケースはよく見られます。この“名称の揺れ”があると、異なるシステム間での連携時に誤認識やデータ欠落が発生しやすくなります。
項目名の統一は一見些細な問題に見えるかもしれませんが、情報の信頼性や意思決定のスピードに大きな影響を与える要素です。
3.システム連携を前提としない設計の限界
部門ごとに個別最適されたシステムは、導入当初こそ業務に合致していても、いざ他部門や外部システムと連携しようとした際に、想定外の障壁となることがあります。
たとえば、営業部門で使われているデータベースと、経理部門の帳票出力機能がまったく連動していないと、手作業での集計や転記が必要になり、エラーや手間が増大します。
システムは“つながること”を前提に設計してはじめて、全体最適の力を発揮します。
まとめ
データ形式の不統一、項目名の揺れ、連携を想定していないシステム構造──これら3つの要因が、業務の効率化やデータ利活用の大きな障壁となっています。こうした課題は、システム開発会社との対話の中で、初期設計から丁寧に向き合うことで回避することが可能です。業務に根ざした“正しいデータ設計”こそが、システム活用の土台になるといえるでしょう。
こうした複雑なデータ課題に対して、業務や組織構造に応じた柔軟な設計が求められます。フレシット株式会社では、業務フローや運用現場の実情に深く入り込み、データの構造設計からUI、システム連携まで一貫して対応するフルスクラッチ開発を行っています。既存のツールでは対応しきれない細かな要件や、将来的な拡張性まで見据えた設計をご希望の方は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。