システム導入を成功させるためのコツとは?リスクや失敗事例も紹介します
2025-07-12

昨今、社会環境の急速な変革に伴うビジネス競争の激化に対応するため、業務上のあらゆるプロセスにおいてシステム導入を急ぐ企業が増えています。とはいえ、システム導入にはさまざまなリスクが存在するため、闇雲に進めても目的が達成できないばかりか、無用な現場の混乱を招くことにもなりかねません。
本コラムでは、システム導入を検討している方に向け、システム導入のメリットや想定されるリスク、システム導入のプロセス、システム導入を成功させるためのコツなどについて詳しく解説します。
システム導入でよくある失敗事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
システム導入とは?
システム導入とは、課題の解決や業務の効率化といったさまざまな目的の達成を目指し、新たな業務フローや仕組みを実現するためのシステムを導入することです。
広い意味では、業務マニュアルの整備や人事評価制度の構築といったアナログ的な対応まで含めることがありますが、多くの場合、デジタルデータを活用した新しいITツールや情報システムを導入することを指します。
システム導入の意味や目的
システム導入の主な目的は、次の通りです。これらを効果的に達成し、最終的に売上・利益の増加や顧客満足度の向上へと結び付けるところに大きな意味があります。
- 業務の自動化・効率化
- 課題の解決
- 生産性の向上
- コストの削減
- 情報セキュリティの強化
- データに基づく意思決定の実現
システム導入による自動化により、業務内で発生する多くの課題が解決し、効率性や生産性の向上が期待できます。また、システムを運用する中で蓄積されたさまざまなデータを活用することで、明確なエビデンスに基づく経営の意思決定が可能となるでしょう。アクセスの制限やデータの暗号化といったシステム的な対策を施すことで、情報セキュリティの強化にもつながります。
なお、システム導入の意味や目的についての理解を深めるためには、次章で解説するシステム導入のメリットも併せてご参照ください。
システム導入のメリット
システム導入にはいくつかのメリットがある一方で、多くのリスクも想定されます。それぞれについて具体的に解説していきましょう。
システム導入の主なメリットは、次の通りです。
- 業務効率が向上する
- 手軽なデータ活用が実現する
- コストの削減が図れる
- 柔軟な働き方に対応できる
以下、順に解説します。
業務効率が向上する
システム導入により、さまざまな業務プロセスが自動化されることで、円滑な業務フローの推進や作業時間の短縮といった業務効率化が実現します。手作業に頼っていた業務がシステム化されると、人為的ミスの削減も図れるでしょう。これらによって生み出された余剰時間を、より生産性の高いコア業務に充てることで、組織全体の大幅な効率アップも期待できます。
手軽なデータ活用が実現する
システム導入によって業務上発生するさまざまなデータが一元管理されることで、関係者間での共有が容易になるほか、リアルタイムな分析を通して経営の意思決定に効果的に活用することも容易に実現できます。さらに、AI(人工知能)を利用した高度なビッグデータ分析を行うことで、他社に先駆けて市場動向を予測し、競争力の強化を図ることなども可能です。
コストの削減が図れる
システム導入による業務の自動化・効率化は、人件費の低減や残業時間の短縮といったコスト削減につながります。また、システム上のデジタルデータで業務が完結すれば、ペーパーレス化による紙媒体の印刷コストや保管コストも圧縮できます。さらに、導入するシステムの内容によっては、無駄な在庫の最適化や効果的なアクションの実践へと結び付き、コスト削減とともに収益増加も図れます。
柔軟な働き方に対応できる
政府主導の働き方改革に伴い、昨今は在宅勤務やリモートワークが一般的なものとなりました。ただし、これらの実現には、外部から社内にアクセスするためのシステムや、情報漏洩などのリスクを回避する高度なセキュリティ環境が必要です。つまり、主要な業務においてシステムを導入することは、柔軟な働き方に対応するための第一歩といえます。
システム導入で想定されるリスク
システム導入で想定される主なリスクは、次の通りです。導入をスムーズに完了し、システムを有効活用するには、それぞれの内容を把握した上、適切な対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑える必要があります。
- 金銭的リスク
- 納期リスク
- 品質リスク
- 技術的リスク
- セキュリティリスク
- 人的リスク
- その他のリスク
以下、順に解説します。
金銭的リスク
金銭的リスクとは、導入費用が想定よりも高額となり、予算を超過してしまうリスクです。
システム導入前に要件を入念に検討の上、見積金額の精度を向上させるほか、トラブルなどの予期せぬ事態を見込んだ余裕のある予算を確保しておくことで回避できます。
納期リスク
納期リスクとは、導入に想定以上の時間を要し、予定されている納期に間に合わなくなるリスクです。
金銭的リスクと同様、要件を入念に検討の上で適切な計画を立てるほか、予期せぬ事態により進捗が遅延する事態も想定しながら、ある程度のバッファを持ったスケジュールを設定しておくことが重要です。
品質リスク
品質リスクとは、導入したシステムが要件を満たせなかったり、期待した性能を発揮できなかったりするリスクです。
コミュニケーション不足により要件が適切に詰められておらず、関係者間での認識に齟齬がある場合にこのリスクが大きくなります。システム導入中に十分な品質が実現できない懸念が発覚すると、上述した金銭的リスクや納期リスクを招くことにもつながります。
技術的リスク
技術的リスクとは、技術的な問題によってシステムの導入が困難になったり、新しい技術の採用によって予期せぬ問題が発生したりするリスクです。
あまりに複雑で難解な要件は、技術的リスクを高める要因となることが少なくありません。また、その解決のために新しい技術を採用したものの、関係者のスキル不足により、結果として導入に至らないケースもあります。
セキュリティリスク
導入したシステムの環境が十分なセキュリティ要件を満たしておらず、サイバー攻撃や不正アクセス、情報漏洩などを引き起こす恐れのある状態がセキュリティリスクです。
現時点では高いセキュリティレベルを実現し、堅牢なシステム環境になっていたとしても安心はできません。攻撃手段やアクセス手法が進化し続ける昨今においては、セキュリティ対策も更新を重ねなければなりません。
人的リスク
ITリテラシーの不足によって導入したシステムを適切に使いこなせなかったり、誤った利用方法によって満足のいく効果が発揮できなかったりするのが人的リスクです。
システム導入の際には、ユーザーとなる関係者への教育をしっかりと実施し、目的や仕様について十分に理解してもらう必要があります。
その他のリスク
上述したリスク以外にも、運用やメンテナンスに想定以上の手間がかかってしまう運用リスク、導入したシステムが組織の文化や現場の業務に馴染めない組織リスク、システムが法規制に違反していたり新たな法律に対応できなかったりする法規制リスクなどがあります。
システム導入のプロセス
システム導入は、基本的に次のようなプロセスを踏むことで実現されます。
- 課題・目的の整理と要件定義
- 導入体制の構築
- プロジェクト推進
- テスト・リリース
- 運用・改善
以下、順に解説します。
01 課題・目的の整理と要件定義
まず、現状の課題を洗い出し、システム導入の目的を明確化することが重要です。
さらに、その内容を基に、システムに必要となる機能や性能などを決定する要件定義を行います。明確な目的設定や適切な要件定義は、以後に続くシステム導入のプロセスをスムーズに進め、導入後の運用効果を最大化するために不可欠なものです。時間をかけて慎重に行うことをおすすめします。
02 導入体制の構築
課題・目的が明確になり、要件定義が完了したら、次にシステム導入に関わるメンバーを集め、プロジェクトチームを構築します。
システム部門を中心に社内で体制を構築するケースのほか、外部の専門会社に委託することも多いでしょう。外部に委託する場合でも決して丸投げすることなく、密なコミュニケーションを図りながら一緒に推進できる協力体制を社内に整えておくことが大切です。
03 プロジェクト推進
次に、プロジェクトを推進し、実際にシステム導入を行います。ここで重要となるのは進捗とリスクのコントロールです。ガントチャートやWBS(Work Breakdown Structure)などのツールを活用することで、効率的な管理が実現できます。
また、外部の専門会社に委託する場合は特に、意識して密なコミュニケーションを図ることが重要です。関係者間でのリアルタイムな情報共有により、問題発生の際にも迅速に対応できるなど、スムーズなプロジェクト進行が可能になります。
04 テスト・リリース
システム導入が完了した後は、実際に使い始める前に入念なテストを行わなければなりません。導入作業を外部の専門業者に委託している場合も、UAT(User Acceptance Test:受け入れテスト)は必ず行いましょう。
テストによって、要件を満たしているか、目的達成を実現できるものになっているかなどをしっかりと確認します。問題ないと判断されたら、いよいよリリースです。なお、リリース直後はトラブルが発生しやすいため、しばらくは利用状況を注視することをおすすめします。
05 運用・改善
リリース後は、運用フェーズとなります。実際に使用する現場従業員のサポートをしっかりと行いましょう。また、システムを導入したことによる効果を測定し、課題の解決や業務の効率化といった目的が達成できているかを確認することも重要です。効果が芳しくなければ、その結果をフィードバックしながら改善施策を打つ必要があります。
システム導入でよくある失敗事例
システム導入でよくある失敗は、上述したさまざまなリスクのいずれかが表面化したことで発生するケースがほとんどです。いくつかのリスクが複合的に重なっていることもあります。
A社では、しっかりと時間をかけながら緻密な要件定義を行い、それに見合った見積もりを基に予算とスケジュールを立案しました。しかしながら予期せぬ事態などを想定したバッファを設けていなかったため、導入中にさまざまなトラブルが発生し予算を超過。納期にも間に合わない事態となりました。これは、金銭的リスクおよび納期リスクに対する考慮が不足していた結果といえます。
B社では、システム導入の目的や、導入後にあるべき姿を明確にしていなかった上、実際に導入したシステムが多機能かつ複雑だったため、うまく使いこなせない現場の従業員から不満の声が噴出しました。これは、人的リスクを的確に考慮しなかった結果と考えられます。
システム導入を成功させるためのコツ
システム導入を成功させるには、次のようなポイントを意識しながら、上述した基本プロセスに沿って丁寧に進めることが重要です。
- 課題・目的の明確化と優先順位の設定
- 信頼できる体制の構築
- 導入後の運用にも注力
それぞれについて、以下で解説します。
課題・目的の明確化と優先順位の設定
システム導入は、まず現状の課題を洗い出し、目的を明確化することからスタートしますが、すべての課題を一気に解決したり、さまざまな目的を同時に達成したりするのは難しいケースもあります。そのため、課題解決や目的達成に必要となる要件を整理し、それぞれに優先順位を設定することが大切です。導入プロジェクトの推進中、判断に迷うことがあったら、ここで設定した優先順位に立ち返って検討することが、成功への最短距離となるでしょう。
信頼できる体制の構築
実際にシステムを導入するメンバーの意識が低かったり、スキルが不足していたりすると、プロジェクトは成功せず、どれだけ崇高な目的を掲げていても絵に描いた餅と化してしまいます。信頼できる体制を構築し、メンバー一人ひとりがしっかりと目的を理解しながらプロジェクトを進めることが、成功のためのポイントの1つです。
導入後の運用にも注力
システムを導入すること自体が目的になってしまうと、導入後の配慮がおろそかになり、現場に定着しないなどの問題が発生することがあります。システム導入はあくまでも目的達成に向けた手段であることを理解し、現場従業員のサポートや効果測定・改善などの運用にもしっかりと注力することが重要です。
スクラッチ開発や既存システム拡張も第2の手段として有効
ゼロから独自のシステムを構築するスクラッチ開発や、既成システムの拡張も、単なるシステム導入に代わる第2の手段として有効です。特に、複雑な要件や高度な技術が不可欠となるシステムが求められる場合、スクラッチでの開発や既成システムの拡張を検討する余地があります。
それぞれの可能性を慎重に検討し、実現できるパフォーマンスやトータルでのコスト、将来に向けた拡張性などを総合的に考慮して選択することが重要です。プロフェッショナルである外部のシステム開発会社に相談し、専門家の立場からアドバイスをもらうのも良いでしょう。
まとめ
業務の効率化、課題の解決、コストの削減など、システム導入はさまざまな目的を達成するための有効な手段です。ただし、多くのメリットがある一方でリスクも存在するため、ポイントを押さえながら慎重に進めなければ、思わぬトラブルに発展することもあります。
また、単なるシステム導入に加え、スクラッチでの開発や既成システムの拡張を併せて検討することも重要です。中・長期的な観点から慎重に検討し、自社にマッチした手段を選択しましょう。
本コラムで紹介した失敗事例なども参考にした上、基本プロセスに従いながら慎重にシステム導入を進め、ぜひ目的の達成とビジネスの発展を実現させてください。
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フレシット株式会社では、貴社の抱えている課題や業務の実態、目指すべき将来像などを丁寧にお伺いした上で、理想的なシステム導入を実現します。豊富な経験を活かし、リスクを限りなく抑えながら、システムのメリットを最大化させるスムーズなプロジェクト推進が可能です。
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監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。
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