なぜシステム更改は失敗するのか?後悔しない発注先の選び方を徹底解説
2025-07-22

システム更改は、単にシステムを新しくする作業ではなく、企業の業務全体に影響を及ぼす大きなプロジェクトです。そのため、発注先の選定をはじめとする初期の判断が、プロジェクト全体の成否を左右するといっても過言ではありません。
しかしながら、「どのように進めれば良いかわからない」「どこに発注すべきか判断できない」といった状態でお悩みの担当者さまも多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、システム更改が失敗する理由や発注前にチェックするべき3つのポイントについて解説します。自社のシステム更改を成功に導くためにも、ぜひ参考になさってください。
目次
システム更改とは
システム更改とは古くなったシステムを新しいものに刷新する取り組みのことを指します。総合的な概念であり、リプレイスやマイグレーションもシステム更改に含まれます。
システム更改を行う理由には、老朽化したシステムの更新やセキュリティ強化、業務効率の向上、新しいサービス対応などがあります。適切に実施すれば、企業の競争力向上や業務改善につながりますが、計画や準備が不十分の場合、業務停止やコストの増大といったリスクが伴います。
名称 | 説明 | 例 | 費用目安 | 期間目安 |
---|---|---|---|---|
システムリプレイス | 古いシステムを全面的に新しい技術や造りに置き換える方式。業務プロセスや使い勝手も刷新されることが多い。 | ・独自システム→パッケージ導入 ・VBシステム→Web化 | 数千万~数億円 | 8か月~2年程度 |
システムマイグレーション | 既存資産を活かしながら、移行する方式。見た目や処理は極力維持。 | ・古いプログラミング言語(COBOLなど)→新しいプログラミング言語(Javaなど) ・古いOS→新しいOS ・オンプレ→IaaS移行 | 数百万~数千万円 | 3か月~1年程度 |
システムモダナイゼーション | レガシーシステムを現代的な技術に最適化する再構築手法。DXの文脈で多用される。 | ・マイクロサービス化 ・業務API化+UI刷新 | 数千万~数億円 | 1~2年超 |
システムリプレイスとは
システムリプレイスとは、古いシステムを全面的に新しい技術に置き換える方式で、システム更改とほぼ同義の言葉として使われることもあります。
業務プロセスや使い勝手も刷新されることが多く、特に大企業の基幹システムなどのリプレイスでは費用が数千万円以上にのぼることも珍しくありません。期間も数か月~数年を要します。
システムマイグレーションとは
システムマイグレーションとは、既存資産(データや機能)を活かしながら移行する方式で、システムの見た目や業務の流れは極力維持するのが特徴です。
なお、主な目的としてはシステムのメンテナンス性向上や、セキュリティ強化などが挙げられますが、比較的容易に移行できるため、リプレイスやモダナイゼーションに比べて費用が抑えられる傾向にあります。
>システムマイグレーション(システム移行)についての詳細はこちら
システムモダナイゼーションとは
システムモダナイゼーションとは、特にレガシーシステムと呼ばれる古いシステムを、現代的な技術に最適化して再構築する方式で、主にDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で使われます。リプレイスとマイグレーションの2つの要素を併せ持つため、費用は高くなる傾向にあります。
システム更改の 4つの移行方式
システム更改には大きく分けて4つの移行方式があります。
それぞれの特徴をまとめたものが下の表ですのでご確認ください。
名称 | 説明 | 費用目安 | 期間目安 | 向いているシステム更改のタイプ |
---|---|---|---|---|
一括移行 | 旧システムを一気に停止し、新システムに全面切替 | 比較的低コスト | 6〜12か月程度 | ・リプレイス |
段階移行 | 機能や業務単位で徐々に新システムへ移行 | 工数増でやや高め | 1〜2年超 | ・リプレイス ・マイグレーション ・モダナイゼーション |
並行移行 | 旧・新システムを同時に稼働しつつ検証 | 新・旧環境並行稼働のため高コスト | 1〜1年半程度 | 官公庁、金融、医療などのミスが許されない場合に推奨 |
パイロット移行 | 特定部署や小規模範囲で先行導入し、本番前に効果検証 | パターンにより柔軟に対応 | 試行3〜6か月+本番導入 | ・マイグレーション ・モダナイゼーション |
システム更改の必要性
システム更改の根源的な役割は古いシステム環境から新しいシステム環境に移行することにあります。古いシステムを「まだ使えるから」という理由で使い続けることは、セキュリティ面やシステム保守の観点からリスクを伴います。
国税庁が定める自社利用目的のソフトウエアの耐用年数(減価償却)は5年とされていますので、この5年を目安に企業はシステム更改を検討する必要があるでしょう。
また、システム更改を行うのであれば、同時に「業務効率化」や「生産性向上」を目指そうというのが昨今の傾向です。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)がまとめた『企業IT動向調査報告書2025』によると、企業のIT予算が増加している理由として、基幹システムの刷新や業務のデジタル化対応が挙げられています。こうした結果からも、システム更改の需要が高いことがわかります。

なぜシステム更改は失敗するのか
システム更改は、どのような企業でも必ず検討しなければならない事項ですが、成功させるのが難しいプロジェクトでもあります。ここでは、システム更改の失敗原因を解説します。
課題や目的が曖昧なまま進めてしまう
システム更改は、単にシステムを新しく入れ替えればいいというものではありません。例え、旧システムが導入当時は業務要件に合致していたとしても、現在の業務にはそぐわなくなっているケースが多くあるからです。
そのため、「システムが抱えている課題は何か」「システム更改によってどのような効果を期待しているのか」を整理した上でプロジェクトに着手しましょう。
なお、課題の洗い出しには、業務フロー全体の見直しが必須です。
「手作業になっている業務をシステム化できないか」「属人化している業務はないか」といった視点を持つと良いでしょう。課題を明確にしないままプロジェクトを進めると、システムを入れ替えることだけが目的となってしまうため、注意してください。
発注前にプロジェクト体制が固まっていない
発注企業が陥りがちなミスとして、プロジェクト体制が固まっていないことも挙げられます。
システム更改は、業務全体に影響のあるプロジェクトですので、企業全体としての経営判断が必要となります。プロジェクトの担当者はもちろん、意思決定者を予め決めておくことが重要です。
また、対象システムを利用する業務部門の協力も不可欠となります。システム担当だけでなく、業務担当者も体制に組み込んでおくことで、全社的なプロジェクト運営ができるでしょう。
体制が整わないままプロジェクトを進めてしまうと、社内外問わずコミュニケーションがうまくとれず、スケジュール遅延につながることもあります。
予算オーバーとスケジュール遅延
システム更改をはじめとするシステム開発において、予算とスケジュールを守ることもプロジェクトの成功可否を決めるポイントです。
JUASがまとめた『企業IT動向調査報告書2025』によると、プロジェクトの予算、スケジュールが守れなかった主な原因は、計画時の考慮不足や仕様変更の多発、想定以上の現行業務・システムの複雑さなどが挙げられます。
このように、多くの企業で前段階の見積りや調査の甘さがプロジェクトの失敗原因として考えられているのです。


発注前に確認したい3つのポイント
システム更改において、プロジェクトの初期段階が重要なポイントとなります。特に発注先の選定がプロジェクトの成否を決めるといっても過言ではありません。
ここでは、よりよい発注先を選ぶために発注前に確認したい3つのチェックポイントを解説します。
課題整理から相談に乗ってくれるか
システム開発会社のプロジェクトへの関わり方は、要件定義から参入したり、要件定義後の開発から担当したりとさまざまです。当社は要件定義前の課題整理からシステム開発会社が相談に乗ることが重要だと考えています。
システム更改の失敗原因の多くは、プロジェクト初期の要件定義の甘さによるものです。当事者だけでは業務の全体像が見えなくなり、当たり前だと思っていた業務が課題であるということを認識できないことが多いのです。
こうしたリスクを回避するためにも、システム更改のプロであるシステム開発会社を課題整理や要件定義の段階から巻き込むことが重要なのです。
システム開発会社には要件定義前の課題整理から相談に乗ってくれるか、予め確認しておきましょう。
担当者との相性が良いか
システム開発会社の担当者と企業側の担当者の相性が合わなければ、コミュニケーションは円滑に進みません。
システム更改は長期戦のため、「ちょっとした違和感」が、後になって大きなトラブルの原因となることも多いです。「連絡が遅い」「話が噛み合わない」「説明が曖昧」など、少しでも違和感がある場合は、契約をするべきではないでしょう。
見積り内容に納得できるか
システム開発会社が提示した見積りに疑問や不満が残ったまま契約を進めるのは危険です。金額だけでなく「なぜこの費用になるのか」という妥当性を確認するようにしましょう。また、質問に対してどれほど丁寧に対応してくれるかも重要なポイントとなります。
また、追加費用のリスクについても、この段階で確認しておくべきでしょう。「何が変わったら、どのくらい追加になるのか」まで予め明示できるシステム開発会社でなければ契約後にトラブルが起こる可能性が高いです。見積り段階である程度を把握しておくことで、想定外のコストが発生するリスクを抑えることができ、予算オーバーを防ぐことにもつながります。
システム更改の成否は発注先の選定で変わる
システム更改は規模が大きいものが多く、成功させるのが難しいプロジェクトです。だからこそ、自社の課題や目的に深く寄り添い、最適な形で伴走してくれるパートナーの存在が不可欠となります。いざ契約してから「やっぱり違った」と感じても、プロジェクトは止まりません。だからこそ、見積り前、相談の段階から信頼できる発注先を選ぶべきです。
フレシット株式会社では、要件定義前の課題整理から一貫してサポートし、企業ごとの業務プロセスに合わせたシステム更改をご提案します。
システム更改でお困りの際は、ぜひ一度フレシット株式会社にご相談ください。御社にとって最適なシステム更改を実現します。
監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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