完成してからでは遅い。“紙芝居”ではない、プロトタイプの本当の活かし方
認識のズレを防ぐ、実務視点のプロトタイピング手法
2025-07-29

楽天証券の資産形成アプリ「iGrow」が、若年層に高く評価された理由のひとつは、開発初期から若手チームがユーザー目線で細部を設計し、仮説検証を繰り返した点にあります。このように“実際に触って使う体験”を事前にデザインに落とし込むことは、業務システム開発においても極めて有効です。
本コラムでは、プロトタイプを単なるUIのイメージにとどめず、業務と連動した“仮運用の場”として活かす方法と、その実用的なプロセスがフルスクラッチ開発と相性が良い理由を解説します。
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目次
【記事要約】若者向け金融アプリのDX、SNS化とデザインで新規層を獲得
楽天証券などが展開する若年層向け金融アプリが、SNS風のデザインや操作性を重視することで注目を集めている。ネット通販のUIを参考にした導線や、パーソナライズされた情報提供で「使いやすさ」を追求。価格競争が限界を迎える中、金融サービスのDXは“見た目と体験”での差別化が鍵となりつつある。DXによって金融の敷居を下げ、新たなユーザー層の獲得が進んでいる。
出典:日本経済新聞「(YOUTH FINANCE)金融アプリもSNS風に 見た目・使い勝手、若者に刺さる」2025年6月19日付朝刊
ポイントをひとことで
業務システム開発における失敗の多くは、要件の“思い込み”や“認識のズレ”に起因しています。プロトタイプはそれを解消する有効な手段ですが、単なる画面イメージにとどまる「紙芝居」では意味がありません。操作の流れや業務との整合性を実際に“体感”できるレベルで検証することで、初期段階から実用性の高い設計が可能になります。とくにフルスクラッチ開発では、こうしたフィードバックを柔軟に設計へ反映できる点が大きな強みとなります。
“なんとなくの要件定義”が失敗を招く
業務システム開発では、「こんな感じで動くはず」「たぶん使いやすいだろう」という曖昧な認識で進めてしまうと、完成後に「現場で使いにくい」「想定と違う」といった不満が噴出しがちです。これは設計段階で関係者の認識をすり合わせる“仮体験”が不足しているためです。
プロトタイプは、この“仮体験”を実現する有効な手段です。ただし、「画面が見えるだけの紙芝居」ではなく、実際に触れて、クリックして、業務フローを追体験できるレベルで設計されていることが前提です。
UIだけでなく、導線と機能の検証ができる価値
プロトタイプの最大の価値は、ユーザーの操作感や導線の動き、処理の流れを事前に確認できる点にあります。ボタンの位置や画面遷移がスムーズか、想定した業務プロセスに無理がないか、利用者の声を反映しながら検証できます。
たとえば、複雑な承認フローや複数部署にまたがる処理を伴う業務では、頭の中のイメージと実際の操作感にギャップが生まれやすいため、プロトタイプの段階で早期に発見できることが重要です。
現場の声を反映しやすい“変更可能な設計段階”
プロトタイプを活用することで、「もっとこの画面に情報を表示したい」「この導線では現場が混乱する」といった意見を、設計段階で吸い上げることができます。これにより、後戻りコストの高い開発フェーズでの手戻りを防ぎ、品質と納期の両立を図れます。
現場を巻き込みながら、仮運用を通して検証と修正を重ねていく開発スタイルは、業務にフィットするシステムを目指すうえで欠かせないアプローチです。
フルスクラッチ開発との相性の良さ
パッケージ型の開発では、仕様の自由度が限られており、プロトタイプでの気づきを反映できないこともあります。一方で、フルスクラッチ開発であれば、プロトタイプで得られた細かな改善点を設計にそのまま反映することが可能です。
業務特有のルールやフローに沿った設計、利用者の習慣に合わせた導線など、プロトタイプを起点とした柔軟な開発プロセスは、フルスクラッチならではの大きな強みです。
まとめ
業務システム開発で後悔しないためには、「完成してから直す」ではなく、「作る前に確かめる」ことが重要です。プロトタイプを“紙芝居”にとどめず、実際の業務を想定した“仮運用の場”として活用することで、認識のズレや現場とのギャップを埋めることができます。特にフルスクラッチ開発では、こうしたプロトタイピングの柔軟な活かし方が、成果につながるシステムを生む基盤となります。
こうしたプロトタイピングを起点とした開発プロセスを、柔軟かつ実用的に取り入れられるのが、フルスクラッチ開発の強みです。フレシット株式会社では、開発の初期段階から操作性や業務フローを可視化し、現場の納得感を得たうえでシステム設計を進めていきます。要件の“理解されたつもり”を防ぎ、本当に現場にフィットするシステムを形にしたいとお考えであれば、ぜひ一度ご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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