SBI新生銀行の共通システム構想に学ぶ──フルスクラッチで実現する共同利用型基盤の設計ポイント
協業を前提としたシステム設計がもたらす持続的価値
2025-08-10

複数企業が同じシステムを共同利用する「共通システム」は、単なるコスト削減施策ではなく、企業間の連携を深め、新しいビジネス機会を創出する戦略的な基盤です。SBI新生銀行が地銀と構築を進めるクラウド型共通システムは、その好例といえます。
本コラムでは、この取り組みを参考に、フルスクラッチ開発による共同利用型システムの設計手法と、柔軟性・拡張性がもたらす長期的なビジネス効果について掘り下げます。
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目次
【記事要約】SBI新生銀行、公的資金完済後に地銀結合の中核へ──共通システムで再編を加速
SBI新生銀行は公的資金を完済し、次の成長戦略として全国の地銀を結び付ける構想を推進する。親会社SBIホールディングスが開発したAWS上のクラウド型勘定系システムを共通基盤として提供し、大手ベンダー依存の固定費を変動費化。既に福島銀行や島根銀行が導入し、運用コスト削減や機能追加の柔軟性を実証している。SBI新生は地銀の「中央金融機関」を目指し、融資やBaaSなど法人向けサービスで連携を拡大。地域経済活性化と地銀再編の受け皿としての役割が期待される。
出典:日本経済新聞「SBI新生 完済の先(上)システム軸に地銀結ぶ 地域成長へ再編の受け皿に」2025年8月5日付朝刊
ポイントをひとことで
共通システムは、単に複数企業が同じ仕組みを使うだけでは真価を発揮しません。重要なのは、各社の業務特性を損なわずに共通化できるアーキテクチャ設計と、将来の変化に柔軟に対応できる拡張性です。パッケージ型では対応困難な要件も、フルスクラッチ開発なら初期段階から意図的に組み込めます。特に共同利用型の場合は、セキュリティや権限管理の緻密さが信頼性を左右します。長期的な競争力を支えるためには、単なるIT導入ではなく「持続可能な共通基盤」の構築が不可欠です。
共通システムがもたらす企業間連携のメリット
共通システムの最大の利点は、複数企業が同一基盤を利用することで得られる効率化効果です。開発や運用保守のコストを各社で分担できるほか、システム仕様の統一によりデータ連携や業務フローの整合性が高まります。これにより、企業間での情報共有がリアルタイム化し、スピーディーな意思決定が可能になります。さらに、基盤を共有することで新たなサービスを共同開発し、相互に顧客基盤を活用できるなど、単独では得られない規模のシナジーが生まれます。
フルスクラッチ開発が適する理由
パッケージソフトは導入の即効性がある一方で、業界や企業ごとの細かな要件を満たすには限界があります。特に複数企業が利用する場合、機能の追加や変更が制約されやすく、全体の利便性や将来性が損なわれることがあります。
フルスクラッチ開発であれば、最初から複数社利用を前提に設計できるため、柔軟な権限管理や多様な業務フローへの適合、企業ごとのカスタマイズにも対応可能です。また、クラウド基盤と組み合わせることで、物理的なインフラ負担を減らしつつ、迅速な機能追加や拡張が実現できます。
設計時に押さえるべき実践ポイント
共同利用型システムの成功には、初期設計の段階で以下のようなポイントを押さえることが欠かせません。
- 共通要件と個別要件の切り分け:核となる機能は共通化しつつ、企業ごとの特色や独自業務を反映できる拡張領域を設ける
- セキュリティと権限管理の多層化:企業間でのデータ境界を厳密に管理しつつ、必要な範囲で安全に共有できる仕組みを構築
- 将来の変更を見据えたモジュール設計:機能単位で改修・追加ができる構造にして、全体への影響を最小限に抑える
- 運用自動化の仕組み:メンテナンスやデータ更新を自動化し、各社の運用負担を軽減する
これらを早期に設計へ組み込むことで、導入後の柔軟な拡張や安定稼働が可能になります。
ビジネス効果と将来展望
共通システムはITインフラとしての役割にとどまらず、参加企業同士のビジネスモデルを変革する力を持ちます。共通基盤があれば、共同で新規市場に参入したり、顧客データを活用してパーソナライズされたサービスを展開したりと、これまでにない取り組みが可能です。さらに、参加企業全体で統一されたデータ構造を持つことで、外部サービスや異業種との連携もスムーズになります。結果として、市場環境の変化や技術革新にも迅速に対応できる体制を築けます。
まとめ
共通システムは、複数企業が力を合わせて競争力を高めるための有効な手段です。フルスクラッチ開発による設計は、制約のない柔軟性と長期的な拡張性を備え、変化に強い共同利用型基盤を実現します。企業間連携を軸に新たな価値を創造するためには、初期段階から将来を見据えたアーキテクチャ設計が重要です。
フレシット株式会社は、企業ごとの独自要件や将来の成長戦略を踏まえたフルスクラッチ開発を得意としています。既製パッケージでは実現が難しい複数社連携や共同利用型システムも、要件定義から設計・開発・運用保守まで一貫して伴走し、柔軟かつ拡張性の高い基盤を構築します。複雑な業務フローや高いセキュリティ要件にも対応できる技術力と、長期運用を見据えた設計思想で、お客様のビジネスの可能性を最大限に引き出します。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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