社食システムに学ぶ──クラウド時代の必須条件、複数拠点のデータを一元管理するオーダーメイド基盤の設計ポイント
データを資産化する一元管理とシステム連携の条件
2025-09-05

支社や工場を持つ企業にとって、最大の課題のひとつが「システム分断」です。拠点ごとに別々のシステムを導入した結果、データがバラバラに管理され、全社的な意思決定が滞る状況は少なくありません。現場の担当者は入力やレポート作成に追われ、経営層は正確な全体像を把握できない──。その結果、成長機会を逃すことにもつながります。
本コラムでは、複数拠点のデータを一元管理するオーダーメイド基盤の設計ポイントを、クラウド活用の視点から整理します。
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目次
【記事要約】エヌ・エス・システム、社食決済のクラウド化で拠点横断のデータ連携を実現
社食決済システムを手掛けるエヌ・エス・システムは、サービスのクラウド化により複数拠点のデータを一元管理し、他のシステムとの連携も可能にした。これにより大規模企業での利用が加速し、導入先はソニーやDNPなど約500社、管理拠点は1000カ所に及ぶ。クラウド基盤による効率的なデータ処理は、健康管理情報の表示やAIによる需要予測とも組み合わせやすく、フードロス削減や運営コスト低減につながる。同社は売上・利益を大幅に伸ばし、今後はIPOや海外展開も視野に入れている。
出典:日本経済新聞「〈小さくても勝てる〉エヌ・エス・システム 社食決済、50万食に拡大外部の社長希望者登用 成長へ人・モノ・資金」2025年8月26日付朝刊
ポイントをひとことで
複数拠点を持つ企業にとって「データの一元管理」は経営判断の精度とスピードを左右する重要な課題です。クラウド基盤を活用すればリアルタイムで全体像を把握できますが、単なる集約では十分ではありません。他システムとの連携やマスターデータ統合を前提とした設計が不可欠であり、その実現には既存業務の深い理解と将来の拡張を見据えたアーキテクチャ設計力が求められます。汎用サービスではなく、自社に最適化したオーダーメイド開発こそが持続的な競争力を支える要素となります。
拠点ごとのシステム分断が生むリスク
拠点単位で導入されたシステムは、当初は業務効率を改善するように見えても、長期的には大きな負担となることがあります。たとえば、
- 本社と支社でデータ形式が異なり、毎月の集計に時間を要する
- 二重入力やCSVでの手作業連携が常態化し、人的ミスが増える
- 部署や拠点ごとの“ローカルルール”が横行し、全社最適が見えない
といった問題が典型です。これらは単なる効率低下にとどまらず、意思決定の遅れや経営リスクの拡大につながります。
クラウド基盤で実現する全社横断の一元管理
クラウド化による基盤整備は、こうした分断を解消する有効な手段です。クラウド上で全拠点のデータを集約すれば、
- リアルタイムで全社データを把握できる
- 本社・工場・営業所など場所を問わず同じデータを参照できる
- 拠点の新設や統廃合にも柔軟に対応できる
といった利点が得られます。特に、経営層が即時に状況を把握できることは、環境変化が激しい時代において大きな競争力となります。
他システムとの連携がもたらす業務変革
データの一元化はゴールではなく、スタートです。他の業務システムと連携することで、初めて“経営資源としてのデータ”が活用可能になります。たとえば、
- 生産管理システムと販売管理をつなぎ、需要予測と調達計画を統合
- 勤怠管理と業務実績を結び、拠点ごとの労務コストを可視化
- 顧客データとサプライチェーン情報を連動させ、在庫最適化を実現
といった活用が可能です。クラウド基盤はAPI連携やマイクロサービス設計との相性も良く、将来の拡張に強いシステムを構築できます。
フルスクラッチ開発でしか実現できないこと
市販のパッケージやSaaSは導入のしやすさが魅力ですが、自社特有の業務フローや評価指標を完全に反映させるには限界があります。特に複数拠点を持つ企業では、「一部の拠点には合うが、他の拠点には適さない」といった状況が起こりやすいのです。フルスクラッチ開発なら、
- 自社業務に沿ったデータモデルをゼロから設計できる
- 既存システムとの連携を前提に構築できる
- 将来の事業展開に合わせた拡張性を担保できる
といった柔軟性が得られます。これは全社横断的なデータ活用を本気で目指す企業にとって、極めて重要な要素です。
実務での留意点
一元管理基盤を構築する際には、次の点に留意する必要があります。
- データガバナンスの整備:誰がどのデータを扱えるか、権限管理を明確にする
- マスターデータの統合:拠点ごとに異なる品目コードや顧客IDを統一する
- 移行計画の現実性:稼働中システムとの並行運用や段階的移行を前提にする
こうした設計と移行の工夫が、クラウド基盤を成功に導きます。
まとめ
複数拠点を持つ企業にとって、データの一元管理は避けて通れない課題です。クラウド化による基盤整備は、単なるコスト削減や効率化にとどまらず、全社の意思決定を迅速かつ的確に支える仕組みとなります。そして、自社業務に最適化したオーダーメイド基盤を構築することで、はじめて“全社横断で使える資産としてのデータ”が手に入ります。クラウド時代において、この一歩を踏み出すか否かが、将来の競争力を大きく左右するのです。
複数拠点のデータを統合し、全社横断で活用できる仕組みを実現するには、汎用サービスではなく自社に合わせた柔軟な基盤設計が欠かせません。フレシット株式会社は、フルスクラッチ(オーダーメイド)開発を専門とし、業務プロセスや既存システムとの連携を前提とした最適なシステム基盤を構築してきた実績があります。将来の拡張や新しい事業展開を見据えたシステムを一から設計することで、御社のデータを経営資源へと進化させるお手伝いが可能です。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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