富士フイルムの収益改善策に学ぶ──データ統合はコスト削減の鍵、間接業務を可視化し効率化を徹底する
全社データの一元管理がもたらす業務効率化と持続的成長
2025-09-14

企業経営におけるコスト削減というと、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは仕入れ価格の見直しや人件費の抑制でしょう。しかし実際には、日々の業務の中に埋もれた「間接コスト」が、想像以上に大きな割合を占めています。営業部門と経理部門の照合作業、在庫と受注の突き合わせ、部門間で異なるフォーマットを使った報告書の再作成──これらは直接的な利益を生み出さないにもかかわらず、膨大な時間と人員を消費しています。
この「見えないコスト」を根本的に削減する手段のひとつが、統合基幹業務システム(ERP)を活用した全社データの統合です。本コラムでは、なぜデータ統合がコスト削減につながるのか、そのメカニズムと実務的な効果を具体的に解説します。
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目次
【記事要約】富士フイルム、ERPで全社データ統合し業務効率化を加速
富士フイルムホールディングスは、ヘルスケア事業の収益改善を柱に2031年3月期までにROICを10%に引き上げる方針を示した。バイオ医薬品の大型受注や生産拠点の拡充に加え、固定費削減や人員再配置など構造改革を進めている。さらに、オフィス機器を扱うビジネスイノベーション事業では低収益機種を削減し、全社横断で統合基幹業務システム(ERP)のデータを統合。業務効率化の徹底により、収益性と資本効率の改善を狙う。
出典:日本経済新聞「富士フイルム、ヘルスケア収益改善急ぐ ROIC10%目標バイオ大型受注原動力に」2025年9月10日付朝刊
ポイントをひとことで
データを全社で統合することは、単なる業務効率化にとどまらず、企業経営の在り方を変える戦略的な一手です。部門ごとに分断された情報は重複入力や照合作業を生み、隠れた間接コストを増大させます。ERPによる統合はこれを解消し、業務を標準化しながらリアルタイムで全社をつなぎます。その結果、意思決定が加速し、人的リソースを付加価値の高い活動に振り向けられるようになります。効率化は成長への投資余力を生むのです。
部門間の「サイロ化」が招く非効率の実態
多くの企業では、部門ごとに最適化されたシステムが導入されています。営業は顧客管理、経理は会計、物流は在庫、製造は生産管理──それぞれの部門が「自分たちの業務を効率化する」ために個別システムを導入してきた結果、データが分断され、全社的にはむしろ非効率が生まれてしまうのです。
たとえば、営業が受注データをシステムに入力し、その内容を経理が再度手入力して請求書を発行するケース。物流部門は在庫システムに同じ内容を登録し、出荷準備を進めます。この一連の流れで、同じ情報が何度も入力され、確認のための照合作業が繰り返されます。ミスがあれば修正が必要となり、さらに手戻りが発生。現場では「これが当たり前」となっていても、実際には莫大な間接コストを生んでいるのです。
Excel管理がもたらす「見えない負担」
システムが分断されていると、どうしてもExcelによる補完が増えます。月次決算のために各部門の数値をExcelで集約し、経理が突き合わせを行う。営業は顧客ごとの売上をExcelにまとめ、経営会議用に再構成する。こうした作業は一見すると小さな業務に見えますが、毎月繰り返され、しかも担当者のスキルや経験に依存するため、標準化が難しいのが実情です。
さらに問題なのは、Excelによる管理が属人化を助長する点です。ファイルが担当者のPCに閉じてしまえば、引き継ぎや情報共有が困難になり、担当者が不在の際に業務が滞るリスクが高まります。これらは企業の成長に直結しないどころか、リスクを増やす要因となります。
ERPによる全社データ統合がもたらす革新
こうした非効率を解消するのがERPによる全社データ統合です。ERPでは営業、経理、物流、生産といった部門のデータを一元管理し、入力された情報が自動的に各機能へ連携されます。受注データを営業部が入力すれば、そのまま経理の請求処理や物流の出荷準備に反映され、二重入力や照合作業が不要になります。
また、情報がリアルタイムに更新されるため、経営層は常に最新の数値を把握できます。従来は集計に数日から数週間を要していた決算作業も、大幅に短縮可能です。結果として、経営判断のスピードが上がり、現場の意思決定も迅速になります。
隠れた間接コストを「見える化」し削減する仕組み
ERPの導入効果を理解するためには、「削減されるコストの種類」を整理することが有効です。大きく分けて以下の3つがあります。
- 重複作業の削減
二重入力や照合作業が不要になることで、単純作業に費やされていた時間を大幅に削減できます。 - ミスや手戻りの防止
データが一元管理されることで、入力ミスや情報の齟齬が減少。修正にかかる手間やコストを抑えられます。 - 教育・引き継ぎコストの軽減
属人化が減り、システム上で標準化されたフローに沿って業務が進むため、新任者でも短期間で業務を習得できます。
これらは「目に見えにくいが確実に存在するコスト」であり、長期的に見ると大きな経営効果をもたらします。
経営改革の第一歩としてのデータ統合
データの全社統合は単なるITプロジェクトではなく、企業の業務プロセスを根本から見直す契機となります。たとえば、ERPの導入を通じて「なぜこの作業が必要なのか」「この承認フローは最適なのか」といった議論が自然と生まれます。その結果、単なるシステム置き換えにとどまらず、業務プロセス自体が効率化され、組織全体の体質改善につながります。
さらに、統合されたデータは将来的なデジタル活用にも直結します。BIツールによる高度な分析や、AIを用いた需要予測など、経営の高度化を支える土台となるのです。データ統合は効率化のための手段であると同時に、企業の持続的成長を支える基盤でもあります。
まとめ
企業の成長を阻む「隠れた間接コスト」は、部門ごとのシステム分断やExcel管理に潜んでいます。こうした非効率は日々の業務に埋もれて見えにくいものの、長期的には大きな損失となります。ERPによる全社的なデータ統合は、これらの無駄を削減し、効率的で柔軟な経営を可能にします。重複作業の削減、ミスの防止、属人化の解消。そして迅速な意思決定。これらの効果を同時に得られる仕組みこそが、企業に持続的な成長と競争力をもたらすのです。
本コラムで述べたように、全社データ統合は単なるシステム導入にとどまらず、業務そのものの在り方を見直すきっかけとなります。フレシット株式会社では、既存のパッケージに縛られないフルスクラッチ(オーダーメイド)開発を強みとしており、各企業の独自の業務フローやデータ構造に最適化したシステムをゼロから設計できます。部署間の連携を阻むサイロ化を解消し、隠れた間接コストを削減する仕組みづくりをお考えのご担当者さまにとって、フレシットは最適なパートナーとなります。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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