経営の操縦席を自社で設計する経営コックピットがもたらす意思決定のスピード
迷わず舵を切るために──データが導く正確な判断
2025-09-27

市場環境の変化が激しい時代、経営層が求めるのは「全体を一目で把握し、瞬時に判断できる仕組み」です。飛行機の操縦席=コックピットがパイロットに必要な情報を集約し、迅速な判断を可能にするように、経営コックピットは企業経営の“操縦席”として機能します。ユニクロが導入した「経営コックピット」は、販売から在庫、生産、顧客の声までを統合し、意思決定を加速させる基盤を築きました。
本コラムでは、この仕組みの意義と、フルスクラッチで自社に最適化した形で構築する重要性を詳しく解説します。
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目次
【記事要約】ユニクロ、データ活用で需要を的確予測し在庫最適化
ファーストリテイリングは23年に「経営コックピット」を導入し、商品レビューや顧客の声3000万件超を収集。販売動向や在庫をリアルタイムで把握し、独自アルゴリズムで需要を予測、工場の生産計画と連動させた。結果として必要な商品を迅速に供給し、販売までの期間を短縮。売れ残りを防ぎつつ商品改良や新素材開発にも反映し、国内ユニクロの売上高はアパレル業界で初めて1兆円を突破した。
出典:日本経済新聞「ユニクロ売上高、国内1兆円超え 前期アパレル企業で初 データ使い需給的確予測」2025年9月14日付朝刊
ポイントをひとことで
経営コックピットは単なるダッシュボードではなく、企業にとっての「操縦席」として全体最適の意思決定を支える仕組みです。販売や在庫、生産、顧客データを一元化し、リアルタイムで可視化することで経営層は精度とスピードを両立した判断が可能になります。SaaSでは吸収しきれない自社固有の業務フローや指標を反映させるには、フルスクラッチによるオーダーメイドの設計が欠かせない点が重要です。
経営コックピットとは何か
経営コックピットとは、経営層が必要とする多様な情報を一元化し、リアルタイムに可視化する仕組みのことです。売上や在庫、顧客レビュー、問い合わせ、さらには工場の生産状況といったデータを集約し、経営判断に欠かせない「現在地」を瞬時に把握できるようにします。
これは単なるダッシュボードではなく、経営の操縦席にあたります。パイロットが高度・速度・燃料などを同時に確認して飛行を安全に保つように、経営層も複雑な市場環境を乗り切るために、多角的なデータを統合的に把握する必要があります。
意思決定に求められるスピード
かつては月次・週次での報告書に基づいて意思決定を行っても大きな問題はありませんでした。しかし、いまは消費者ニーズも競合の動きも、日単位・時間単位で変化しています。数週間前のデータに基づいて判断を下すことは、リスクを拡大させる要因になりかねません。
経営コックピットを導入すれば、販売データや在庫の変化を即座に把握し、過剰在庫や欠品のリスクを未然に防ぐことができます。また、顧客レビューや問い合わせの内容を即座に分析できれば、商品やサービスの改善をスピーディーに実行できます。意思決定のスピードは、競合に打ち勝つための最大の武器といえるでしょう。
ユニクロの「経営コックピット」事例
ユニクロは2023年に「経営コックピット」を導入しました。この仕組みでは、
- オンラインストアのレビューやカスタマーセンターの声(3,000万件以上)
- 国内外の店舗販売データ
- 倉庫と店舗の在庫状況
- 工場の生産計画
これらをリアルタイムで一元管理しました。さらに独自のアルゴリズムで需要予測を行い、生産計画と連動させることで「売れる商品を必要な分だけ迅速に生産する」仕組みを実現しました。結果として、販売までのリードタイム短縮や在庫リスク低減を可能にし、顧客満足度と収益性を両立させました。
この事例は、経営コックピットが単なるデータ統合ではなく、経営のスピードと精度を大きく変える基盤であることを示しています。
自社に最適化された仕組みの重要性
経営コックピットを構築するうえで重要なのは「自社の業務や経営課題に最適化されていること」です。市販のSaaSは便利ですが、汎用的であるがゆえに自社特有の指標やデータフローを反映できないことが多くあります。
例えば小売業では「店舗別の販売データとEC売上を統合し、在庫状況をリアルタイムで反映する」仕組みが必要ですが、標準ツールでは遅延が発生することも少なくありません。製造業では「部品調達状況や工場ラインの稼働データ」を取り込みたいニーズがありますが、パッケージでは柔軟に対応できない場合があります。
フルスクラッチで構築することで、自社独自の業務フローやKPIに沿った仕組みを反映でき、経営層が本当に必要な情報を即座に得られる環境を実現できます。
バリューチェーン全体をつなぐ視点
経営コックピットは、単なる経営ダッシュボードではなく「販売から生産までのバリューチェーン全体をつなぐ基盤」である点が特徴です。
- 店舗・EC:販売データをリアルタイムに集計
- 倉庫:在庫状況を即時に可視化
- 工場:生産計画や稼働データを連動
これらを一体的に結ぶことで、需要の変化を即座に反映した柔軟な供給体制を構築できます。ユニクロの事例では「売れ筋商品の供給を増やす」「需要が低い商品の生産を抑える」といった機動的な対応が可能になり、結果として在庫リスクの削減と利益率向上を実現しました。
経営コックピット設計のポイント
経営コックピットを構築する際には、以下の設計ポイントを押さえる必要があります。
- データの一元化:異なるシステムで管理されているデータを統合する
- リアルタイム性:数時間の遅延が意思決定に影響するため即時性を重視
- 拡張性:新しい事業領域やチャネルが増えても対応できる設計
- 現場との親和性:経営層だけでなく、現場担当者も使いやすいUI/UXを整備
これらを満たすことで、単なる「見える化」にとどまらず、経営判断を直接支える実用的な仕組みが完成します。
部門横断で活用する体制づくり
システムを導入しても、部門ごとにデータがサイロ化していては効果が限定的です。販売、商品開発、CS、物流、生産など部門を超えてデータを共有し、同じ経営コックピットを基盤に意思決定を行うことが重要です。
この体制が整えば、経営層はもちろん現場においても「共通言語としてのデータ」をもとに議論でき、組織全体が迅速かつ一貫性のあるアクションを取れるようになります。
成功と失敗を分けるポイント
経営コックピットの導入が成功するかどうかは、経営層の姿勢と現場の協力にかかっています。
- 成功する企業:経営層が「データに基づく経営」の重要性を理解し、現場も同じデータを使って改善を進める
- 失敗する企業:経営層がシステムを導入しただけで満足し、現場に浸透せず形骸化する
つまり、経営コックピットは「IT導入」ではなく「経営改革」の一環として位置付けることが不可欠です。
経営の視界をクリアにするために
操縦席のない飛行機が危険であるように、経営の全体像を即座に把握できない企業は市場の荒波に適切に対応できません。経営コックピットは、経営層に「視界のクリアさ」を与え、将来の方向性を誤らないための必須基盤です。
変化のスピードが増す市場においては、情報の遅れは致命的です。経営の操縦席を自社で設計し、自社の特性に合わせた情報基盤を整備することが、持続的成長の前提条件になります。
まとめ
経営コックピットは、経営層にとっての操縦席であり、意思決定のスピードと精度を高める基盤です。販売・在庫・顧客の声・生産計画などを一元化し、リアルタイムで把握することで、市場の変化に迅速に対応できます。
SaaSの汎用ツールでは限界があるため、自社業務や戦略に合わせて最適化したシステム基盤を設計することが欠かせません。経営の操縦席を自社で設計する発想こそが、これからの企業が持続的に競争力を高める鍵となるでしょう。 経営コックピットのように企業全体を見渡せる仕組みを実現するためには、自社固有の業務や指標に最適化されたシステムが欠かせません。
フレシット株式会社は、経営層が必要とする情報を的確に収集・統合し、意思決定を加速させるフルスクラッチ開発を強みとしています。既存のパッケージやSaaSでは満たせない要件にも柔軟に対応し、経営の“操縦席”をゼロから設計することで、事業の成長を支える基盤を提供いたします。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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