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COLUMN コラム詳細

ユニクロの「経営コックピット」に学ぶ──顧客の声を資産に変える商品改善の仕組み

不満も要望も成長の糧に──顧客データ活用の観点

2025-09-17

顧客の声は、単なるフィードバックではありません。レビューや問い合わせには、商品改善や新たな価値創造につながる具体的なヒントが詰まっています。しかし、多くの企業ではそれらが断片的に収集され、十分に活かされないまま埋もれているのが現状です。ユニクロが導入した「経営コックピット」は、顧客接点で得られる膨大な情報を統合・分析し、商品開発や改良に直接反映する仕組みを構築しました。

本コラムでは、その取り組みを手がかりに、顧客の声を資産として活かすための考え方や、必要となる自社最適化されたデータ統合基盤の重要性について解説します。

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【記事要約】ユニクロ、データ活用で需要を的確予測し在庫最適化

ファーストリテイリングは23年に「経営コックピット」を導入し、商品レビューや顧客の声3000万件超を収集。販売動向や在庫をリアルタイムで把握し、独自アルゴリズムで需要を予測、工場の生産計画と連動させた。結果として必要な商品を迅速に供給し、販売までの期間を短縮。売れ残りを防ぎつつ商品改良や新素材開発にも反映し、国内ユニクロの売上高はアパレル業界で初めて1兆円を突破した。

出典:日本経済新聞「ユニクロ売上高、国内1兆円超え 前期アパレル企業で初 データ使い需給的確予測」2025年9月14日付朝刊

ポイントをひとことで

顧客の声を資産に変えるには、単なる収集ではなく一元化と分析、そして改善に結びつける仕組みが欠かせません。レビューや問い合わせは、現場では見過ごされがちな課題や新しい発想を含んでおり、商品開発やサービス品質向上の貴重な源泉となります。SaaSでは限界があるため、自社の業務や戦略に最適化した統合基盤を整えることが、競争優位を生む持続的な差別化につながります。

顧客の声が持つ潜在的な価値

商品レビューや問い合わせは、顧客が自社の製品やサービスをどのように受け止めているかを最も直接的に示す情報源です。そこには「気に入っている点」と「改善してほしい点」の両方が含まれ、開発部門が思いもよらなかった新しい着眼点を提供してくれます。

例えばアパレル業界では、オンラインレビューから「サイズ感が表記より大きい」「素材が洗濯に弱い」といった声が集まれば、それは即座に商品改良につながる重要なシグナルです。製造業であれば、アフターサービスに寄せられる「部品の耐久性に課題がある」といった情報が、次世代製品の設計改善に直結します。

ポジティブな声もまた価値を持ちます。顧客が「この商品は軽くて使いやすい」と評価していれば、それは自社の強みを裏付ける要素となり、マーケティングや販売戦略の差別化ポイントになります。つまり顧客の声は、単なる苦情や意見にとどまらず、企業の成長戦略を支える資産なのです。

データ収集・分析の仕組みと実際の事例

ユニクロは2023年に「経営コックピット」を導入し、オンラインストアの商品レビューやカスタマーセンターに寄せられた問い合わせなど、3,000万件以上の顧客データを収集しました。従来は個別に管理されていた情報を一元化し、AIや自然言語処理を用いて分析。そこから得られた知見をもとに、新素材ニットの開発や既存商品の改良を実現しています。

顧客の声を活用するには、単なる集計ではなく意味のある情報へと変換するプロセスが欠かせません。レビューや問い合わせをテーマごとに分類し、頻度や感情分析を行うことで「改善の優先度」を明確にできます。また、販売データと組み合わせれば「売上が伸びている商品の評価傾向」「在庫が滞留している商品の課題点」など、より具体的なアクションプランにつなげられます。

ユニクロの事例は、顧客接点から得られる膨大な情報を「経営判断の材料」に昇華させた代表例といえるでしょう。

部門横断的なデータ活用の課題と解決策

顧客の声を資産に変える上で大きな障害となるのが、部門間の分断です。多くの企業では、販売部門はPOSデータを、開発部門は設計情報を、カスタマーサポート部門は問い合わせ記録をそれぞれ管理しています。しかし、これらが横断的に共有されることは少なく、組織内にサイロ化が生じています。

結果として、顧客からの貴重な情報が全社的な改善に生かされず、局所的な対応にとどまってしまうのです。例えば「不具合の多い商品」の声がカスタマーサポートに集中していても、それが開発部門に届かず、改善のタイミングを逃すケースが見受けられます。

これを解決するには、部門を超えてデータを集約・共有する統合基盤が不可欠です。全社的に顧客の声を可視化することで、商品改良のスピードが上がり、顧客体験全体の改善につながります。経営層から現場までが共通のデータを基に判断できる体制を整えることが、顧客資産を活かすための重要な条件です。

業界別の活用事例

顧客の声を資産化するアプローチは、アパレルだけでなくあらゆる業界で応用可能です。

  • アパレル業界
    レビューから「素材が暑すぎる」「シワになりやすい」といった声を抽出し、季節ごとの商品改良に反映。サイズ感や着心地の改善は顧客満足度を大きく高めます。
  • 製造業
    アフターサービス窓口に寄せられる不具合や部品交換の履歴をデータ化し、次世代製品の設計改善に活用。製品ライフサイクル全体で品質を高められます。
  • 小売業
    問い合わせやレビュー内容をPOSデータと組み合わせ、仕入れや陳列を最適化。顧客の声を仕入戦略に直結させることで欠品や在庫過多を防ぎます。
  • サービス業
    コールセンターへの問い合わせをデータ分析し、サービス内容やUI/UX改善に反映。顧客体験の質が高まり、リピート率向上につながります。

いずれの業界でも共通して言えるのは、「顧客の声を活かせるかどうか」が競争力を左右するということです。

SaaSでは解決できない限界

市場には顧客の声を収集・管理するためのSaaSが数多く提供されています。これらは導入の容易さや初期コストの低さが魅力ですが、自社に完全にフィットするわけではありません。

多くのSaaSは汎用的な設計のため、自社特有の業務プロセスや分析手法を反映するのが難しいのが現実です。また、レビューや問い合わせだけでなく、販売データや在庫データとも組み合わせて分析したい場合、連携に制約が生じやすいという問題もあります。結果として、部分最適にとどまり「全社で顧客の声を活用する」という本来の目的が果たせないケースも少なくありません。

さらに、SaaSはサービス提供会社の仕様変更や機能制約に左右されやすく、自社の戦略的な活用を進める上で足かせとなるリスクもあります。顧客の声を本当の意味で資産化するには、外部サービスに依存しすぎず、自社の戦略や業務フローに合わせて最適化された仕組みを構築する必要があります。

自社最適化された統合基盤の構築ステップ

顧客データを真の資産に変えるには、自社に最適化されたデータ統合基盤の構築が欠かせません。以下はその典型的なステップです。

  1. 現状把握
    顧客データがどの部門でどのように管理されているかを洗い出し、分断や重複を可視化します。
  2. 要件定義
    どのデータを収集・分析したいのか、どのような形で活用したいのかを明確にします。レビュー、問い合わせ、販売履歴、在庫情報など、複数のデータソースを統合対象に設定します。
  3. プロトタイプ開発
    小規模で統合基盤を試験導入し、分析精度や現場の運用しやすさを検証します。初期段階から改善を繰り返すことが成功の鍵です。
  4. 全社展開
    プロトタイプで得られた成果を基に、全社的に統合基盤を拡大。複数部門で顧客の声を共有できる環境を整備します。
  5. 継続的改善
    顧客ニーズや市場環境は変化します。アルゴリズムや分析項目を定期的に更新し、資産としての価値を維持・向上させます。

このプロセスを通じて初めて、顧客の声を経営戦略と直結させる「生きた資産」として活用できます。

成功と失敗を分けるポイント

顧客データ活用の取り組みは、単なるシステム導入では成功しません。成功する企業と失敗する企業の差は、組織文化や経営姿勢にあります。

成功する企業は、経営層が「顧客の声を資産として扱う」意識を持ち、現場と同じデータを基に判断します。全社的に顧客中心の考え方が浸透しているため、データ活用が一過性の取り組みではなく継続的な仕組みとして機能します。

一方、失敗する企業は「顧客の声は現場で処理すればよい」という姿勢にとどまり、部分最適な改善にしかつながりません。部門サイロが解消されず、データが全社に共有されない結果、システムだけが形骸化するリスクも高まります。

つまり、顧客の声を資産化する取り組みは、単なるIT導入ではなく「組織全体のマインドセット変革」でもあるのです。

まとめ

顧客の声を資産として活用するためには、データを集めるだけでは不十分です。レビューや問い合わせを収集し、統合基盤で分析し、具体的な商品改善や新開発に反映する仕組みを持つことが重要です。

ユニクロの「経営コックピット」が示すように、顧客接点で得られる膨大な情報を経営判断に直結させれば、顧客とともに成長する企業の姿勢を実現できます。そのためには、自社に最適化された統合基盤を構築し、継続的な改善を行う体制が不可欠です。

SaaSに任せるだけでは得られない「自社業態にフィットしたデータ活用」が、今後の競争優位を決定づける鍵となるでしょう。

フルスクラッチ開発は、SaaSでは対応しきれない自社固有の業務フローやデータ活用の要件を柔軟に組み込める点に強みがあります。フレシット株式会社は、顧客の声を資産として活かすためのデータ統合基盤をゼロから設計し、部門横断で活用できる仕組みづくりを得意としています。自社に最適化されたシステムで競争力を高めたいとお考えでしたら、オーダーメイドの開発でその実現をサポートいたします。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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