みずほFGの生成AIアプリ導入に学ぶ──生成AIの力を引き出すのは“データの整理力”──バラバラの情報を活かす仕組みづくり
生成AIを活かすための前提条件──情報整理と統合の重要性
2025-09-25

生成AIを業務に活用する流れは急速に広がっています。しかしAIを導入するだけでは十分な効果を得ることはできません。その実力を発揮するためには、もとになるデータが整理され、活用しやすい状態で蓄積されていることが欠かせません。営業活動で得られる商談記録、顧客対応の履歴、商品やサービスに関する情報、さらには社内の業務フローに関するデータなど、企業には多種多様な情報が存在します。これらが部門ごとに分断されていてはAIの回答精度や提案力は限定的になってしまいます。
本コラムでは、生成AIの力を最大限に引き出すために求められる「データの整理力」に焦点を当て、具体的なポイントや実務的な課題について解説します。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
目次
【記事要約】みずほFG、生成AIアプリを全社導入し顧客対応を高度化
みずほフィナンシャルグループは、自社開発の生成AIアプリを全社的に導入した。特にコンタクトセンターでは、顧客の属性や過去の接点履歴を基にAIが回答案を準備する体制を整え、顧客対応の効率化と質の向上を図っている。木原正裕社長は、少子化による労働力不足に対応するため生産性向上が不可欠とし、AIを業務変革の中核に据える考えを示した。
出典:日本経済新聞「金融ニッポントップに聞く(3)『リテールの旗、もう一回』みずほFG社長・木原正裕氏 AI活用に500億円投資」2025年9月19日付朝刊
ポイントをひとことで
生成AIを業務に導入する際、最も軽視されがちなのがデータの整備です。営業や顧客対応、商品、業務フローといった情報が散在していては、AIは断片的な判断しかできません。むしろ導入前の「データ整理こそがAI活用の土台」であり、これを怠れば投資の効果を最大化できません。本コラムはAI導入を華やかに語るのではなく、実務的な基盤整備の重要性を指摘しています。生成AIの成果は、裏側の地道なデータ環境づくりにかかっているのです。
生成AIが成果を出すための前提条件
生成AIは膨大な情報をもとに、自然な回答を生成したり、適切な提案を導き出したりします。そのためにはAIに投入されるデータの質と構造が極めて重要です。もし情報がバラバラに保存され、同じ顧客の情報が複数のシステムに重複して存在している場合、AIは矛盾したデータをもとに処理を行うことになり、正確性や信頼性を損ないます。
一方で、営業、顧客対応、商品、業務フローといったデータが統合され、整理された形で保持されていれば、AIは一貫性のある情報に基づき、精度の高い回答や提案を可能にします。つまり、AI活用の成否はデータが整理されているかどうかに大きく依存しているのです。
部門ごとに分断されたデータの課題
多くの企業では、部門ごとに異なるシステムを導入しており、営業部門は営業管理システム、顧客対応部門はコールセンター用のシステム、商品部門は在庫管理システム、といったように情報が分散しています。これらのシステムが連携していない場合、AIに必要なデータを一元的に扱うことができず、情報の重複や不整合が生じます。
例えば、顧客の問い合わせ履歴がコールセンターには残っているが、営業部門には共有されていないケースでは、AIは顧客の全体像を把握できません。その結果、回答が部分的なものになり、顧客満足度を高めることができないのです。
データを活かすための「整理力」とは何か
ここでいう「整理力」とは、単に不要な情報を削除することではありません。企業内に点在するデータを見直し、誰が、どの業務で、どの情報を使うのかを明確にした上で、統一された形式で扱えるようにすることを指します。顧客の基本情報、購入履歴、問い合わせ記録、契約状況などが統合されれば、AIは顧客のニーズや状況に応じた提案を迅速に行うことが可能になります。
さらに、業務プロセスや商品情報のように一見AIとは直接関係のなさそうなデータも、整理された状態で保持されていると大きな価値を持ちます。業務の流れを理解した上で提案できるAIは、顧客対応においても社内業務の効率化においても強力な武器となります。
営業データと顧客対応データをつなぐ価値
営業活動で得られる商談情報と、顧客対応で得られる問い合わせ情報は、本来密接に結びつけて活用すべきものです。ある顧客が過去にどのような質問をし、どのようなやり取りを経て契約に至ったのかが一元的に分かれば、AIは次にどのようなニーズが生じるかを予測できます。
逆に、これらの情報が別々に存在していると、AIは断片的な事実しか把握できず、単なるFAQ自動化の範囲にとどまってしまいます。生成AIが真の価値を発揮するためには、異なる部門で得られたデータを横断的に整理し、つなぎ合わせることが不可欠です。
商品データと業務フローデータの重要性
顧客対応や営業活動に比べると軽視されがちですが、商品データや業務フローデータもAIにとって欠かせない情報源です。商品仕様や在庫状況の情報が整備されていれば、顧客の質問に対して即座に正確な回答を導き出すことができます。また業務フローデータが整理されていれば、AIは作業工程を踏まえた上で効率的な手順を提案することができ、現場の負担を減らします。
このように、表に見える顧客情報だけでなく、裏側で動く商品や業務に関する情報も整理しておくことで、生成AIの回答はより現実的かつ実務に直結したものになります。
整理されたデータがもたらす効果
データを整理し、一元的に管理できるようになると、生成AIがもたらす効果は飛躍的に高まります。顧客に対しては、過去の履歴を踏まえたきめ細やかな提案やサポートが可能になり、信頼関係を強化できます。社内においては、部門間での情報共有がスムーズになり、業務効率が大幅に向上します。
さらに、経営層にとっては、全社のデータを横断的に把握できるようになることで、意思決定のスピードと精度が向上します。つまり、データの整理力は単なるAI活用の前提条件にとどまらず、企業全体の競争力を左右する重要な基盤なのです。
データ整理に立ちはだかる課題
しかし、データを整理することは簡単ではありません。既存のシステムが古く、部門ごとに仕様が異なっている場合、データを統一するには大きな手間がかかります。また、長年蓄積されてきた情報には誤りや重複が含まれていることが多く、そのままAIに学習させてしまうと精度を下げる要因となります。
このため、まずは現状のデータを見直し、どの範囲から整備を始めるかを計画的に決めることが重要です。小さな範囲から始め、段階的に整備を広げていくアプローチが現実的です。
システム開発会社に求められる役割
データの整理には、単にシステムを導入するだけではなく、業務プロセス全体を見直すことが求められます。営業や顧客対応の担当者と連携し、実務でどのようにデータが使われるかを理解したうえでシステムを設計する必要があります。このとき、システム開発会社は単なる外注先ではなく、データ活用の設計パートナーとしての役割を果たすことが期待されます。
特にフルスクラッチ開発であれば、既存の業務やデータの実態に合わせて柔軟に仕組みを構築できるため、企業ごとの課題にフィットした解決策を実現できます。
まとめ
生成AIを効果的に活用するためには、まずデータが整理されていることが前提条件となります。営業、顧客対応、商品、業務フローなど、多岐にわたる情報を統合し、矛盾や重複を取り除くことで、AIは正確で価値ある回答を導き出すことが可能になります。
逆に、バラバラの情報がそのままでは、AIは断片的な処理しかできず、期待した効果を得ることはできません。データの整理力は、生成AIの実力を引き出すだけでなく、企業全体の効率化や競争力向上に直結する取り組みなのです。
生成AIの力を最大限に活かすためには、自社の業務やデータの特性に合わせた柔軟な基盤づくりが欠かせません。フレシット株式会社は、フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発を強みとし、部門ごとに分断されたデータを整理・統合し、実務に直結した仕組みを設計することが可能です。既存のパッケージに縛られることなく、企業ごとの課題や成長戦略に合わせた最適なシステムを構築できるため、生成AIを真に戦力化する環境を整えることができます。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら