【後悔しない】システム開発のベンダー選定方法を解説
2025-10-04

システム開発のベンダー選定は、システム開発全体に影響を及ぼす重要なフェーズです。ベンダー選定が失敗して成功するシステム開発はないといっても過言ではありません。
このコラムでは、
- システム開発のベンダー選定とは?
- ベンダー選定のプロセス 5STEP
- ベンダー選定の5つの判断基準
について、失敗例もふまえて、わかりやすく解説します。
ベンダー選定の重要性を理解した上で、自社に適したベンダーを選び、システム開発を成功に導きましょう。
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目次
システム開発のベンダー選定とは?
システム開発のベンダー選定について、まずは基礎知識を押さえておきましょう。
システム開発におけるベンダーとは?
システム開発におけるベンダーとは、システム開発を担当する企業や団体、あるいは個人のことを指します。
ベンダーにもさまざまな種類があります。システムの設計や開発だけを担当するシステム開発会社、複数のシステムやサービスを組み合わせるなどして大規模システム構築をコンサルから運用まで担うSIer(エスアイヤー:System Integrator)などです。
ベンダーも開発ベンダー、システムベンダーなどさまざな呼び方をしますが、このコラムではそれらをすべて統一して、ベンダーと呼びます。
ベンダー選定の目的と重要性
システム開発におけるベンダー選定は、自社の課題を解決できるパートナーを探すプロセスです。システム開発はシステムで課題解決をはかるアプローチに過ぎません。そのため、同じ目線で同じ目的のために一緒に協力してくれるパートナーを探すことが、ベンダー選定の目的となります。目的をうまく共有できなかったベンダーがシステムを開発した場合、「こんなはずじゃなかった」というようなシステムが出来上がってしまうのです。
また、ベンダー選定は大きな費用がかかることから社内稟議を通す必要がある場合が多く、経営層への選定理由の説明が不可欠となります。場合によっては企業全体へ影響するということを理解しておきましょう。
ベンダー選定のプロセス 5STEP
ベンダー選定のプロセスを5STEPにわけて紹介します。
STEP1 要件整理
システム開発において、何よりも重要なのは要件の整理です。まず、「このシステムで何を実現したいのか」を整理し、システム開発の全体像を描く必要があります。要件がブレると、システム開発は成功しません。
なお、要件を整理するためには、目的と業務課題の洗い出しが不可欠です。要件整理はシステム開発における最初の工程であり、最も大切な準備段階だと理解しておきましょう。
STEP2 RFP作成
RFP(Request for Proposal)とは、要件をまとめた書類のことで、発注側がベンダーにシステム開発を依頼する際に作成します。「何を作りたいか」「どういう条件なのか」を明文化し、ベンダーに正確に伝えることがRFPの目的です。
要件をまとめた資料となるため、稟議など社内決裁にも活用できます。
STEP3 候補ベンダーの調査・洗い出し
RFPの作成と並行して、依頼するベンダーを調査し始めます。まずはWEB検索でベンダーの情報を集めるのがよいでしょう。ベンダーのWEBサイトには事例紹介や得意な開発分野などが書かれています。
調査と洗い出しを行う中で、良いと判断したベンダーには実際に会ってみましょう。場合によっては意見をもらいながらRFPをブラッシュアップすることもできます。
候補ベンダーを少なくとも3社は洗い出し、次のSTEPに進みましょう。
STEP4 比較・評価
候補ベンダーの洗い出しをしたあとは、比較・評価をします。
ベンダーはRFPから費用やスケジュールの見積りを作成しますので、このタイミングでRFPを各候補ベンダーに展開しましょう。
作成された見積りや見積りが作成されるまでのベンダーの対応など、総合的、客観的に判断してベンダーを決定します。なお、判断基準を明確にするためにも選定評価の項目リストを用意しておくとよいでしょう。以下の表を評価項目の参考になさってください。
評価項目 | 内容のポイント |
---|---|
技術力 | 要件に合ったシステム開発実績や得意分野があるか |
開発実績 | 同業界・同規模での導入事例や成功事例があるか |
提案力 | 要件定義を深掘りし、改善提案や追加アイデアを提示できるか |
プロジェクト管理能力 | 納期・予算・品質を守る進行管理体制があるか |
品質保証体制 | テスト工程、セキュリティ対策、バグ対応の仕組みが整っているか |
コミュニケーション力 | 担当者が分かりやすく説明し、相談しやすいか |
運用保守体制 | 納品後の運用保守サポートが十分か |
見積りの透明性 | 見積りが明確で、相場や内容に照らして妥当か |
継続性・安定性 | 会社の経営基盤や継続的に事業を行える体制があるか |
契約条件 | 瑕疵担保責任、著作権の扱いや再委託の可否などが明確か |
STEP5 発注・契約
比較の結果、発注先のベンダーを決定しましょう。契約条件を相互確認した上で、問題がなければ契約を結びます。
ベンダー選定の5つの判断基準
システム開発のベンダー選定において、特に重要なポイントを5つ解説します。
1.実績の確認
世の中には数多くのベンダーが存在します。その中から自社に適したベンダーを一から探し出すのは労力も時間もかかる大変なことです。しかし、予め候補を減らすことはできます。それは「自社の業種のシステムを過去に開発したことがあるか」確認することです。
いくら優秀なベンダーでも、経験したことのない業種のシステムを構築するのは、一筋縄ではいきません。できないわけではありませんが、実績があるベンダーと比較すると苦労します。同業種あるいは要件に近いシステム開発実績が少なくとも1件はあることを確認して候補を探しましょう。
実績はベンダーのWEBサイトで確認することが多く、担当者の口コミが記載されている場合もありますので、現場の声として参考にしましょう。
2.担当者のコミュニケーション力
担当者のコミュニケーション力も重要です。問い合わせからの返答が24時間以内に行われているか、初めてコミュニケーションを取ってから1か月に一度でも状況確認が来るか、など指標を設けてチェックするとよいでしょう。
システム開発はいくら念入りに準備しても要件変更や追加調整が発生してしまいます。そういった場合に迅速に対応してくれるかは、担当者のコミュニケ―ション力にかかっています。定期的にコミュニケーションがとれる体制が整っているか確認しましょう。
ベンダー候補を絞ったのであれば、実際に会ってみるのが効果的です。打ち合わせの場で自社の課題への傾聴力、理解力を確認しましょう。
3.見積りの透明性
見積りの透明性も重要です。なぜこの見積り結果になったか、最終的には担当者が経営層に説明できるようにならなくてはいけません。
システム開発の多くは、1人が月に稼働する労力の単位を1人月と表現します。3人月かかるシステム開発を1か月で終わらせたい場合、単純計算で3人の技術者を確保する、という考え方をします。
「このシステムを実現するための労力が〇人月と試算し、〇人の技術者で開発を進め、〇か月で開発を進めるので〇〇円」というできるだけ数値化された見積りであることを確認しましょう。詳細な金額まで教えてくれない担当者もいるとは思いますが、「何人月の想定ですか?」と聞けばほとんどの場合教えてくれるでしょう。
また、見積りに対し、どのような変化が起こると追加費用が発生するのか、予め確認しておきましょう。そうすることで予想外の費用増加も防ぐことができます。
4.契約条件
以上の判断基準をクリアしただけでは、十分とはいえません。契約条件が自社に適したものかについても、入念に確認が必要です。システム開発は契約に基づいて行われますので、契約外のことをベンダーに求めても対応してくれません。
その際まず確認するべき点は契約形態です。大きく分けると請負契約と準委任契約があります。どちらが自社のシステム開発に適した契約か、事前によく考慮しておきましょう。契約形態が変われば、何をもってシステム開発の契約を完了するのか、というプロジェクトのゴールも変わります。
契約ではその他にも引き渡されたシステムに隠れた欠陥があった場合にベンダーが発注側に対して負う瑕疵担保責任、システムの著作権の帰属先など、契約書に明文化しておきましょう。システム開発の前に確認しておくことで、システム開発後に発生するトラブルを限りなく減らすことができます。
また、契約書は担当部署だけではなく会社の法務部門にもチェックを入れてもらうべきです。法務のプロから見ても問題ない内容であることをチェックしてもらい、安全にシステム開発に着手できるように準備しましょう。
5.運用保守体制
システムは開発したら終わりではありません。システムを安全・安心に利用するための運用保守サポートが必要です。運用を開始して初めて見つかる課題や問題、改善点などにも対応する可能性があります。
なお、運用保守はシステム開発をしたベンダーと異なるベンダーに依頼することも可能ですが、システム開発を担当したベンダーにそのまま任せた方が無難だといえます。新たな体制にすれば、その分教育期間や労力がかかるからです。そのため、開発後の運用保守も対応できるのか、見積りの段階でベンダーには相談しておきましょう。
またベンダーに運用保守を依頼する場合は、緊急を要する障害対応は即時対応できるか、サポート窓口はあるか、といった具体的な確認をすることをおすすめします。
ベンダー選定でよくある失敗パターン5選
できるだけイメージしやすいように、実際によくある失敗パターンを紹介します。
1.費用だけで選んで品質不足
システム開発は、大きなコストがかかります。安いものでも数百万円、企業全体に影響が出るような大規模開発だと数千万~数億円にもなります。少しでもコストを抑えたいという気持ちはわかりますが、費用の安さを最重要判断基準としてしまうのは危険です。
実現したいシステムに対し技術が足りていないベンダーや、見積りが甘いベンダーに依頼することになりかねません。結果、品質不足のシステムが出来上がったり、コストが膨れ上がったりする可能性が高まります。
高かろう良かろうというわけではありませんが、他社の見積りと比べて安すぎる結果が出た場合は、要注意です。価格の安さにすぐさま飛びつかず、見積り内容の確認を行いましょう。
2.前提が曖昧で見積りがバラバラ
システム開発ではRFPを元に見積り依頼をしますが、RFPが固まる前に見積り依頼をしてしまうと正しい見積り比較ができません。
例えば、A社に見積り依頼するときには決まっていなかった要件が、B社に依頼する前にRFPに追加されてしまった場合、当然A社とB社の見積りは異なる結果となります。前提がブレてしまった見積りは比較対象になりません。
こういった事態を防ぐために、ベンダーへのRFPの正式な展開は、各社にメールで同じタイミングに行うことをおすすめします。口頭やドキュメントの手渡しでは、どのベンダーにどのバージョンのRFPを渡したか後からわからなくなりがちです。RFPに修正が入った場合は、同じように各社に漏れなく展開するようにしましょう。
3.予算承認が通らない
ベンダー選定までこぎつけても、稟議が下りなければベンダーに発注は出来ません。ベンダーに発注をかける日を逆算しておき、いつまでに予算を取らなければならないか、ベンダー選定に入る前にスケジュールを抑えておきましょう。
稟議を通すためには「なぜそのシステムが必要か」ということの他に、「なぜそれほどのコストがかかるのか、なぜそのベンダーで開発をするのか」ということを経営層に説明できなければなりません。経営層もコストはできるだけ下げたいと考えています。想定より多くの費用を提案されると、もっと安いベンダーでいいのでは?という疑問を持つはずです。実際に使用した選定評価の項目リストなども使用して、説明が出来るように準備しておきましょう。
予算が通らなくて困るのはベンダーも同じです。稟議が通らなければ発注してもらえなくなります。時にはベンダーも巻き込んで、経営層に説明出来る準備を整えましょう。
4.納品後に想定外の修正費用が発生
ベンダー選定の失敗は、システム開発が終わったシステム納品後にも影響します。契約によっては納品されたシステムに不具合が発生した場合、開発したベンダーが対応してくれないことも十分にありえます。システム開発のベンダーの作業範囲は契約書に明文化された範囲だけです。
もし、契約書に「納品後の修正は別契約とする」など書かれていた場合は、追加費用を支払わなければなりません。システム開発の内容に疑問を持ち、システムの修正から別のベンダーに変更した場合も、もちろん追加の費用が発生します。
こういった想定外の費用を抑えるためにも、契約を結ぶ前にベンダーへの疑問点はすべて確認をしておきましょう。
5.運用保守費用の考慮不足
システム開発を行う上で見落としがちなのは、システムのランニングコスト、つまり運用保守費用です。システム開発の契約とシステムの運用保守の契約は、全く異なります。もし、最初の契約の時点でシステム開発の契約しか結んでいないのであれば、システムの運用保守の契約は新たに結ばなければなりません。当然、そこで運用保守費用が発生します。
運用保守費用の考慮不足を防ぐには、見積りの段階で概算でよいので運用保守の見積りも依頼しておくのが効果的です。そうすれば、システム開発着手前にある程度、運用保守費用の予算も組み込んでおけます。そして、システム開発中には正式に見積りを出しなおしてもらうとよいでしょう。完成するシステムの全貌が明らかになれば、だいたいの運用保守費用は算出できます。
システム開発中に並行して、システムの運用保守の費用についても経営層と握っておくと運用保守費用が突然膨れ上がる、といった事態は避けることができます。
ベンダー選定がシステム開発の成否を握る
ベンダー選定は、システム開発の成否を握る重要なフェーズです。開発品質、納期、コスト、保守性、契約リスク──これらの多くは「誰が作るか」で大きく変わります。ベンダー選定を見誤ると追加コストや長期的な運用への影響だけでなく、最悪の場合システムの再構築にまで至るのです。要件整理、RFP作成、客観的な比較評価といった準備を入念に行い、慎重に進めましょう。
さいごに
システム開発のベンダー選定は、単なる発注先を決める作業ではなく、自社の未来を共に形づくる重要な選択です。フレシット株式会社は、フルスクラッチ(オーダーメイド)開発を強みとし、課題整理から開発、運用保守までをワンストップで支援します。表面的な仕様の実装にとどまらず、本当に必要な仕組みを一緒に考え、将来の拡張や運用も見据えた提案を行うことを大切にしています。
また、透明性のある見積りや契約条件の明確化、品質保証やセキュリティ対策まで含めた体制を整えているため、安心して長期的なパートナーとしてご依頼いただけます。
「どのベンダーを選べばよいか迷っている」「要件整理から相談したい」という段階からでもご相談可能です。失敗しない選定を実現し、成果につながるシステム開発を当社が伴走いたします。
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監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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