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COLUMN コラム詳細

サイバー攻撃で浮き彫りになる「システム統合のリスク」とフルスクラッチ開発が果たす役割

統合の先にあるリスクを見据えたシステム設計

2025-10-10

多くの企業が効率化を目的としてシステムの統合を進めています。ERP(統合基幹業務システム)をはじめとした大規模なシステムは、複数部門をまたぐ情報を一元的に管理できる利点があります。しかし一方で、障害やサイバー攻撃が発生した際には、その影響が全社規模に拡大してしまうリスクも無視できません。特に食品や製造業のように業務の連鎖性が強い業界では、システム障害が即座に事業活動の停止につながる可能性があります。

本コラムでは「効率化とリスクは表裏一体」である現状を整理し、部分的な独立性を保ちながら柔軟に設計できるフルスクラッチ開発の強みについて考察します。

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【記事要約】アサヒGHD、システム統合の影響でサイバー被害が拡大

アサヒグループホールディングスはランサムウエア攻撃を受け、国内の受注・出荷やコールセンターが停止した。企業のDX戦略として進む基幹システムの統合は効率化をもたらす一方、一度の攻撃が全社に波及するリスクを高める。食品業界では特に複雑な在庫・流通管理のため大規模システム化が進んでおり、被害拡大の要因となる。グリコの長期障害やHOYA、KADOKAWAの事例も示すように、統合システムは脆弱性を抱えやすく、復旧が長期化すれば巨額の損失につながる。攻撃侵入の早期検知や通信制御、頻繁なバックアップ、予備システムを前提としたBCP策定が不可欠である。

出典:日本経済新聞「サイバー防御DXに死角アサヒGHD、複数部署に被害 システム統合で影響拡大」2025年10月3日付朝刊

ポイントをひとことで

システム統合は効率化をもたらす一方で、障害や攻撃時の影響範囲を広げる諸刃の剣です。特にERPのように全社を貫く基幹システムは、一度停止すれば受注から物流まで事業全体が麻痺しかねません。重要なのは「統合=全面依存」としない設計思想です。部分的な独立性や冗長化を意識したアーキテクチャを採り入れることで、リスクの波及を抑制し、復旧も容易になります。効率と安全性を両立させるためには、統合と分散のバランスを戦略的に描くことが求められます。

システム統合が進む背景

企業がシステム統合を推進する最大の理由は「効率化」と「コスト削減」です。従来は部署ごとに異なるソフトウェアや管理ツールを利用しており、データの二重管理や転記ミスが頻発していました。統合基幹業務システムを導入すれば、在庫・会計・人事・販売といったデータがリアルタイムでつながり、全社の状況を一目で把握できます。

また、システムを共通化することでライセンス費用や保守の負担を軽減でき、全社的なIT戦略を推進しやすくなる点も魅力です。特にグローバルに展開する大企業では、国や地域ごとに異なるシステムを統合することが管理上の必須条件となっています。

統合がもたらすリスクの実態

効率化の恩恵がある一方で、統合によってリスクが拡大する現象も多く報告されています。大規模なシステムほど構造が複雑化し、障害発生時の影響範囲も大きくなります。例えば、ある企業で受注システムに障害が生じれば、物流、在庫、請求、カスタマーサポートといった関連業務すべてが同時に停止する可能性があります。

さらに近年はランサムウエアのようなサイバー攻撃が増加しており、一度侵入されると統合されたシステム全体に被害が広がりやすい傾向があります。統合が進むことで、セキュリティリスクもまた集中する構造になっているのです。

食品・製造業で顕著な影響

特に食品業界や製造業は、システム統合によるリスクが顕著に現れる分野です。これらの業界では、在庫管理や生産ラインの制御、物流のスケジュールが密接に結びついており、ひとつの遅延が連鎖的に全体へ波及します。冷蔵品や生鮮品を扱う場合は鮮度維持が厳しく求められ、数日の遅れでも大きな損失につながります。

ERP導入によって管理の一元化が進む一方、トラブル発生時には「出荷停止」「製造停止」という形で直ちに売上やブランドに打撃を与えます。実際に過去の障害事例でも、長期のシステム停止によって数十億円規模の損失が発生しています。

統合は「万能」ではない

システム統合は多くの企業にとって不可避の選択ですが、「統合すれば安全で便利」という認識は誤解です。統合によって管理コストは下がりますが、その代償としてリスクは集中し、障害時の復旧は一層困難になります。大規模システムは一度止まると再稼働に膨大な時間と費用を要し、業務停止期間が長引くほど損失が拡大していきます。つまり、統合は効率化の手段であると同時に、新たな脆弱性を生み出す行為でもあるのです。

柔軟なフルスクラッチ開発の可能性

こうした背景から注目されるのが、フルスクラッチによる柔軟なシステム設計です。既製のパッケージをそのまま導入するのではなく、業務特性に応じて必要な機能を一から設計することで、統合のメリットを享受しつつも影響範囲を限定できます。

例えば、基幹システム全体をひとつにまとめるのではなく、「会計」「販売管理」「在庫管理」などを緩やかに連携させる設計にすることで、ある領域に障害が発生しても他領域の停止を防げます。オーダーメイドであれば、こうした分散と統合のバランスを自在に調整することが可能です。

部分的独立性を保つ設計の重要性

フルスクラッチ開発の強みは「部分的独立性を保てること」です。完全統合型のERPに依存すると、障害時に全体が巻き込まれますが、独立性を確保した設計であれば一部のシステムを切り離して運用でき、全社停止を防ぐことができます。

さらに、BCP(事業継続計画)と組み合わせて設計すれば、主要機能のバックアップを独立稼働させることも可能です。これにより、たとえ一部が攻撃や障害で停止しても、重要な業務は継続できます。

セキュリティ対策との連動

システム統合におけるリスク管理は、セキュリティ対策と切り離せません。侵入の早期検知、ネットワーク内部の通信制御、バックアップの3-2-1ルールなどは必須の施策です。しかし技術的な防御策だけでは限界があり、設計そのものにリスク分散の思想を組み込む必要があります。

フルスクラッチ開発では、システム構造を業務ごとに最適化しながらセキュリティ設計を重層的に組み込むことができるため、より強固な守りを実現できます。

DX推進とリスクマネジメントの両立

DXを推進する上で、システム統合は避けられない流れですが、リスクマネジメントの観点を欠いた統合は企業活動そのものを脅かします。効率化と安全性を両立させるためには、フルスクラッチによる柔軟なシステム設計が有効です。効率を追求するあまり、障害時に全社が停止する状況を招かないよう、分散と統合のバランスを取ることが求められています。

まとめ

システム統合は効率化やコスト削減を実現する一方で、障害発生時の影響が全社に及ぶリスクを抱えています。特に食品や製造業では、そのリスクが顕著に現れ、実際の障害事例では巨額の損失が生じています。統合を進める際には「効率」と「リスク」の二面性を理解し、部分的な独立性を確保できる設計が不可欠です。フルスクラッチ開発は、業務特性に合わせた柔軟な構造を構築できるため、統合と分散の最適なバランスを実現する有効な手段となります。企業がDXを進める際には、効率化だけでなく、リスクマネジメントを前提にしたシステム設計が重要です。

統合による効率化とリスクの両面を理解したうえで、自社の業務特性に最適化された仕組みを設計することが、これからのシステム開発には欠かせません。フレシット株式会社では、フルスクラッチ(オーダーメイド)開発を通じて、部分的な独立性を保ちながら必要な機能を柔軟に組み合わせる設計を実現しています。既存の枠にとらわれず、事業ごとに異なるリスクや成長戦略を踏まえたシステム構築をご検討の際は、ぜひ当社にご相談ください。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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