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COLUMN コラム詳細

鴻池運輸のクラウド移行に学ぶ──“虎の穴”を社外に持つ、内製化を支える外部パートナーの選び方

システム開発を通じて人を育てる──内製化を支える共創の設計

2025-10-21

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進において、システムの内製化を目指す企業が増えています。しかし、「社内にIT人材が足りない」「スキルを持つ人材が育たない」といった課題を抱える企業は少なくありません。

鴻池運輸がクラウド移行を進める過程で設立したIT子会社「コウノイケITソリューションズ」は、いわば“社内の虎の穴”。実務を通じてITスキルを磨く仕組みをつくり上げました。

本コラムでは、鴻池運輸の事例を手がかりに、内製化を成功に導く外部パートナーとの協働のあり方を考察します。

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【記事要約】鴻池運輸、4年で業務システムの9割をAWSへ移行──「虎の穴」で人材育成とゼロトラスト基盤を整備

鴻池運輸は2018年から4年間で業務システムの約9割をAWSに移行し、クラウドファーストを実現した。サイロ化したIT基盤やベンダー依存を解消するため、クラウドリフト方式で段階的に移行。並行してゼロトラスト型のセキュリティーを導入し、ZscalerやOktaなどを活用してリモート環境でも安全に業務ができる仕組みを整備した。さらに、ITベンダーNSDと共同設立した「コウノイケITソリューションズ」で社員を実務教育し、専門人材を育成。経営層の理解を得ながら、コスト削減よりもガバナンス強化とIT人材育成を重視し、内製開発への基盤を築いた。

出典:日経クロステック/日経コンピュータ「鴻池運輸が業務システムの9割をクラウド移行、4年をかけた成果」2023年5月24日公開

ポイントをひとことで

内製化とは、単に開発を自社で完結させることではなく、「知を社内に蓄積するプロセス」を構築することです。鴻池運輸のように外部のシステム開発会社を“虎の穴”として活用する発想は、極めて実践的です。重要なのは、外注と内製の境界を曖昧にしながら、学びを循環させる仕組みを持つこと。開発の現場そのものを教育の場と捉え、外部パートナーと共に考え、作り、改善する。その積み重ねこそが、持続可能なDXを支える“内製文化”を育てていきます。

内製化が進まない企業に共通する構造的な課題

多くの企業が「外注から脱却して内製化を進めたい」と考えています。しかし、思うように成果が出ないのは、単にスキル不足だけが原因ではありません。

最も大きな問題は、“育てる仕組み”そのものが社内に存在しないことです。
既存システムの保守や運用に追われ、社員が新しい技術を学ぶ時間も環境も確保できない。
教育プログラムを整備しても、実務に直結しないためモチベーションが続かない。
結果として、ITスキルは“外部任せ”のまま固定化されていきます。

この構造を変えるには、外部のシステム開発会社を「作業委託先」ではなく、自社の人材を育てる実践の場=社外の虎の穴として活用する発想が求められます。

虎の穴を社外に持った鴻池運輸のアプローチ

鴻池運輸は、クラウド移行に合わせて「コウノイケITソリューションズ」というIT子会社を設立しました。同社はシステム開発会社のNSDと共同出資し、実務を通じて社員がクラウドスキルを習得できる環境を構築。プロジェクトマネジャーやエンジニアが“先生役”となり、実際の開発案件に関わりながら社員のスキルを底上げしました。

この取り組みの本質は、「内製化=すべて自社で完結させること」ではないという点です。
むしろ、外部の専門家と連携し、社内に知見を定着させることこそが真の内製化です。外部に“実戦型の学びの場”を設け、社員が失敗しながら成長できる環境を整えることで、組織は自走力を高めていきます。

外部パートナーを教育の伴走者として見る視点

従来の発注構造では、企業とシステム開発会社の関係は「成果物を納品する側・される側」でした。しかし、DXを前提とした時代では、両者の関係はよりフラットで、共創型であるべきです。

発注側の企業は、要件定義や仕様策定の段階から積極的に関与し、実装過程でノウハウを吸収していく。一方でシステム開発会社は、技術支援だけでなく、社員の理解促進や運用設計の教育にも関与する。こうした「教育の伴走者」としての関係が築けるかどうかが、内製化の成否を左右します。

特に、フルスクラッチ開発を行うシステム開発会社は、ゼロから設計思想を共有し、コードや構成に至るまで透明化できる点で、教育パートナーとして理想的です。

丸投げ発注では育たない理由

内製化が進まない企業の多くは、過去に「開発を完全に外部へ丸投げしてきた」経験を持っています。このやり方では、短期的な納期は守れても、ノウハウは外部に蓄積され、自社には何も残りません。

仕様変更が発生するたびに開発会社へ依頼し、コストが膨らむ。
担当者が退職すると、運用の背景も引き継げない。
結果として、システムは“動いているのに誰も理解できない箱”になってしまいます。

この悪循環を断ち切るには、発注者も学ぶ姿勢を持ち、開発過程に主体的に参加することが欠かせません。パートナーを“外注先”ではなく、“共に成長するチーム”と位置づけることで、内製化の第一歩が始まります。

フルスクラッチ開発会社を「育成の現場」として活用する

フルスクラッチ開発は、テンプレートや既存パッケージに依存しないため、要件定義から設計・実装・テストまで、全工程を自社の業務に即して設計できます。このプロセスを外部パートナーと共有することで、開発そのものが“実践的な教育”の場になります。

たとえば、以下のような進め方が効果的です。

  • 要件定義フェーズで社内担当者が議論に参加し、要件を自分の言葉で説明できるようにする
  • 設計段階でUIや業務フローのレビューを行い、構成の意図を学ぶ
  • 実装後のテストに立ち会い、バグ修正やデプロイ手順を共有してもらう

このように、実案件を通じて知見を蓄積すれば、将来的には小規模な改修や機能追加を社内だけで行えるようになります。「育成の場を外に持つ」という発想は、外注と内製の間にある新しいハイブリッド型の開発体制です。

経営層が理解すべき「内製化のコスト構造」

内製化を進めるには、短期的なコスト増をどう捉えるかが重要です。教育やスキル習得には時間がかかり、外部パートナーとの協働には一時的な投資も発生します。しかし、それを「育成コスト」ではなく「知識資産への投資」と捉える視点が必要です。

鴻池運輸もクラウド移行の過程で、ITインフラに関するコストが一時的に増加しました。それでも経営層が支援を続けられたのは、「ITを単なるコストではなく、企業の知的基盤」と位置づけていたからです。同様に、内製化も“人を育てるコスト”を前提にしなければ、継続的なDXにはつながりません。

パートナー選定の3つの視点

では、内製化を支える外部パートナーはどのように選ぶべきでしょうか。
ポイントは以下の3つです。

①ナレッジ共有の姿勢
開発をブラックボックス化せず、設計思想やコードをオープンに共有してくれること。
知見の移転を前提とした契約・体制を整えているかを確認する必要があります。

②対話型の開発文化
コミュニケーションを重視し、課題を共に整理しながら進める姿勢があるか。
要件を一方的に受け取るのではなく、議論を通じて設計を磨けるかが重要です。

③中長期視点での伴走力
単発の開発で終わらせず、運用保守・改善・教育までを見据えた支援を行えるか。
内製化は一朝一夕では実現できません。伴走型のパートナーこそが鍵を握ります。

外注か内製かではなく共創できるか

DX時代のシステム開発は、「外注するか、内製するか」という二択ではなくなりました。重要なのは、自社の業務理解を深めながら、外部パートナーとどれだけ知見を共有できるかです。

鴻池運輸が実践したように、外に“虎の穴”を設ける発想は、今後の人材戦略にも通じます。
社員が外部のプロと肩を並べて学び、やがて自走できるようになる──。
それこそが、企業が本当に手に入れるべきDXの成果なのです。

まとめ

内製化を成功させるカギは、「外注しないこと」ではなく、「学びを内側に蓄積すること」です。
鴻池運輸のように、外部のシステム開発会社を実践の場として活用し、社内の人材がスキルを磨く仕組みをつくることが、持続的なDXの基盤になります。“虎の穴”を社外に持つという考え方は、教育と開発を両立させる最も現実的な戦略です。
自社の成長を支えるIT人材は、学ぶ環境の中でしか育ちません。

内製化を本気で進めたい企業にとって、信頼できる外部パートナーは“開発会社”ではなく“共に育つ伴走者”であるべきです。

フレシット株式会社は、業務プロセスや組織構造を深く理解した上で、フルスクラッチ(オーダーメイド)で最適な仕組みを設計します。開発の過程を通じてノウハウを共有し、将来的に自社で改修・拡張できる体制づくりを支援する──それが私たちの提供価値です。
システムを「作る」ことを超えて、「育てる」パートナーとして、貴社のDX推進を力強く支えます。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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