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COLUMN コラム詳細

日用品業界のデータ統合から学ぶ──Excelでは限界、「同じ情報なのに違う」をなくす業務データ統合のすすめ

バラバラな情報を“ひとつの真実”に──Excelの限界を超える統合設計とは

2025-10-23

企業の中で扱われるデータは、商品情報・顧客情報・在庫・契約内容など多岐にわたります。しかし、同じ「商品情報」であっても、部門や取引先ごとにフォーマットや表記が異なり、「同じ情報なのに違う」状態が生まれています。結果として、データの重複登録や転記ミス、整合性の欠如が業務効率を大きく下げています。

かつてはExcelや既製のシステムで各部門が独自管理することが一般的でしたが、企業が扱う情報量が増える今、その方法では限界が見え始めています。

本コラムでは、データの不統一が生む実務的な課題と、それを解消するための「業務データ統合」の考え方、そして“ひとつの真実(SingleSourceofTruth)”を実現するための具体的なアプローチを解説します。

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【記事要約】日用品業界のデータを統合、物流効率化へ──パルタック・あらた・プラネットが新会社設立

日用品卸のパルタックとあらた、データ管理のプラネットは、物流業務の効率化を目的に新会社「プロダクト・レジストリ・サービス」を設立する。現在はメーカーや卸、小売ごとに商品情報や配送関連データの形式が異なり、登録・管理の手間が大きい。新会社では、せっけんやシャンプーなど日用品の商品情報から、梱包・ロット数など配送に必要な関連情報までを一元管理。業界全体での情報共有基盤を整え、登録業務の重複を減らすことで、年間約18億円のコスト削減と人手不足解消を目指す。

出典:日本経済新聞「日用品卸のパルタックとあらた、データ新会社商品登録効率化」2025年10月21日付朝刊

ポイントをひとことで

企業の多くは「同じ情報なのに一致しない」状態を抱えています。部門ごとに異なるフォーマットや命名規則が存在し、正しいデータがどこにあるのか誰も把握できない。これが業務効率を著しく下げる要因です。本コラムが指摘するように、解決の鍵はデータを一箇所に集めることではなく、構造と定義を統一することにあります。フルスクラッチ開発は、この“データ構造の再設計”を現場業務に合わせて実現できる唯一の手段です。DXの第一歩は、データの正しさを取り戻すことから始まります。

データがバラバラだと何が起こるのか

多くの企業では、部門ごとに異なる形式で情報を管理しています。たとえば、営業部門は顧客名を「株式会社〇〇」、経理部門は「(株)〇〇」、システム部門は「〇〇」と登録しているケースがよくあります。これらのデータを統合しようとすると、表記の違いにより「別の会社」として認識され、正しい分析やレポート作成ができなくなります。

さらに、商品情報の管理でも同様の問題が発生します。メーカーから受け取るデータには、成分情報・サイズ・梱包方法・ロット数などが含まれますが、メーカーごとに項目名や単位、フォーマットが異なることが多いのです。そのため、卸や小売企業は自社データベースに登録し直す必要があり、重複作業や入力ミスが発生します。

このように、データの不統一は単なる「見た目の違い」ではなく、業務全体の生産性を下げる根本的な要因になっています。

Excel管理の限界──属人化と整合性崩壊

Excelは手軽で柔軟なツールですが、情報を統合管理するには向いていません。
理由のひとつは「更新履歴と整合性の保証」ができない点にあります。ファイルが複数の担当者に共有されると、どのバージョンが最新なのか、誰がどこを更新したのかが分からなくなります。結果として、古い情報が参照されたまま業務が進み、誤出荷・二重請求といったトラブルに繋がります。

もうひとつの課題は「属人化」です。Excelファイルの設計ルールや数式、マクロが担当者に依存しているため、異動や退職によってメンテナンスが困難になります。さらに、データ量が増えると動作が重くなり、ファイル破損のリスクも増大します。

これらのリスクは、「小規模な一時対応」では済まされないレベルにまで拡大しています。特に、複数拠点や外部パートナーとデータを共有する企業では、Excelの限界を超えた構造的な課題が顕在化しているのです。

「同じ情報なのに違う」をなくすためのデータ設計思想

業務データを統一的に扱うためには、まず「何をもって同一情報とみなすか」という定義を明確にする必要があります。そのための出発点となるのが、「マスターデータ管理(MDM:MasterDataManagement)」です。

マスターデータとは、企業全体で共通して使用される基礎情報(商品・顧客・取引先など)を指します。各部門が独自に管理するのではなく、全社で共通のマスターを設け、更新ルール・承認プロセス・命名規則を統一します。これにより、「株式会社A」「(株)A」「ACo.,Ltd.」といった表記ゆれを吸収し、データの整合性を維持することが可能になります。

フルスクラッチでシステムを設計する場合、この“マスターの定義”こそが設計の要です。既製システムでは決まった項目しか持てませんが、フルスクラッチなら業務実態に合わせてカスタム項目を追加でき、運用上の摩擦を最小限に抑えられます。

部門横断のデータ統合は「単なる集約」ではない

多くの企業が誤解しがちなのが、「データ統合=一箇所に集めること」という認識です。
実際には、単に情報を一箇所に集約するだけでは、課題は解決しません。大切なのは、集めた情報を“同じ構造”で扱えるように整備することです。

たとえば、販売データ・在庫データ・購買データを統合する場合、共通のキー(商品コードや取引先コードなど)で紐づけられるよう、構造をそろえる必要があります。もしキーが一致していなければ、データ分析やシステム連携ができず、結局は人手で突き合わせる作業が残ってしまいます。

フルスクラッチ開発の強みは、この「構造の整備」を柔軟に行える点にあります。
業務フローに沿ったデータ構造を設計し、将来的な拡張(新製品ラインや外部API連携)にも耐えうる仕組みを最初から構築することで、長期的な運用コストを抑制できます。

ひとつの真実をつくる仕組み──SingleSourceofTruthとは

SingleSourceofTruth(SSOT)とは、社内で扱うあらゆるデータの「唯一の正しい出所」を定義する考え方です。たとえば、商品マスター・顧客マスター・取引履歴・契約情報などを、それぞれの部門が個別に持つのではなく、共通データベースを中心に構築することで、常に最新かつ正確な情報を全社で共有できるようになります。

このアプローチにより、営業が登録した顧客情報を経理がそのまま請求データとして利用できる、物流が在庫状況をリアルタイムで把握できる──といった“データの再利用性”が生まれます。
さらに、SSOTの実現はAIやBIツールの精度向上にも直結します。基盤となるデータが正確であれば、予測分析やダッシュボード表示の信頼性も高まり、経営判断のスピードが飛躍的に向上します。

既製システムでは吸収できない差異の壁

SaaSやパッケージシステムは便利ですが、設計思想が共通化されているため、企業ごとのデータ構造や現場の業務ルールには完全にはフィットしません。たとえば、同じ「納品情報」であっても、A社では「ロット単位管理」、B社では「店舗単位管理」と異なるルールを持つことがあります。こうした差異を吸収するには、画一的なシステムではなく、業務実態に合わせた“柔軟なデータモデリング”が不可欠です。

フルスクラッチ開発では、企業ごとの管理粒度・運用ルール・承認フローを前提に設計できるため、「使いにくいから別でExcel管理」という事態を防げます。最初から“全社共通の構造”を意識して設計することで、後からの統合・連携コストを最小化できるのです。

データ統合は「整理」ではなく「仕組みづくり」

多くの企業が、データ統合を「データをきれいに並べ替えること」と捉えがちです。しかし本質は、“統一ルールを持つ仕組みをつくること”にあります。つまり、一度整えたデータを維持し続けるための仕組み、すなわち「データガバナンス」の設計が欠かせません。

入力時のバリデーション、承認フロー、履歴管理、アクセス権限などを設計段階で組み込み、正しいデータしか登録できない仕組みをつくること。これが、長期的にデータ品質を維持する鍵です。

フルスクラッチであれば、こうしたルールを業務プロセスと一体化させることができ、システムが自然と“正しいデータ運用”を促す環境を構築できます。

まとめ

データが複雑化・分散化する今、「同じ情報なのに違う」という状態を放置することは、企業の成長速度を鈍化させる大きなリスクです。
Excelや既製システムでは吸収しきれない情報のばらつきを整え、正確で一貫性のあるデータ基盤を構築することが、今後の企業競争力を左右します。
業務データ統合は単なるIT施策ではなく、経営の判断精度・現場の生産性・顧客対応力を底上げするための“情報インフラ整備”そのものといえるでしょう。

企業が抱える「同じ情報なのに違う」という課題は、単なるシステム更新では解決できません。必要なのは、業務の実態に沿って情報の構造を見直し、企業固有のデータの扱い方を設計し直すことです。
フレシット株式会社では、既存システムやSaaSの制約に縛られず、業務プロセスやデータ構造を一から設計するフルスクラッチ(オーダーメイド)開発を行っています。商品情報や顧客データ、取引履歴など、企業ごとに異なる情報の粒度や運用ルールを整理し、全社で一貫したデータ管理を実現することが可能です。

もし「部門ごとにフォーマットが違う」「Excelとシステムの整合が取れない」といった悩みを抱えているなら、それは今が業務データ統合の転換期かもしれません。
フレシット株式会社は、現場に合わせた最適なシステム設計で、貴社の“ひとつの真実”を形にします。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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