汎用SaaSでは伸びない?サブスクリプション成功企業が選ぶ“フルスクラッチ”という選択
ビジネスモデルの柔軟性を最大化する、フルスクラッチ開発という選択。
2025-10-26

近年、動画配信やソフトウェアだけでなく、製造・教育・物流・美容といった多様な業種で「サブスクリプション型サービス」が注目されています。一度契約すれば継続的に利用される仕組みは、収益の安定化や顧客ロイヤルティの向上につながる一方で、成功する企業と伸び悩む企業には明確な差が生まれています。
その分かれ道となるのが、「自社仕様の仕組みをどう設計するか」という点です。
本コラムでは、既存SaaSを組み合わせる方法ではなく、フルスクラッチでサブスクリプション基盤を構築する意義と、その実現のポイントを解説します。
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目次
【記事要約】ネットフリックス、AI依存を避けIP活用で成長持続──映画・グッズ展開で収益多角化
米ネットフリックスは自社コンテンツの知的財産(IP)を軸に、配信にとどまらず映画館上映やグッズ販売へ展開し、収益基盤を拡大している。2025年7〜9月期は10四半期連続で増収増益を達成し、売上高は前年同期比17%増の115億ドル超。韓国アニメ「KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ」は配信後に劇場公開され、米国興収1位を記録。さらにマテルやハズブロと提携し商品化を進める。AI生成動画の流行にも距離を置き、「創造性は人にしかない」と強調。自社制作とIP投資による“王道戦略”で堅実な成長を続けている。
出典:日本経済新聞「ネトフリ、IP投資で稼ぐ配信→映画館・グッズ展開 AIに踊らず増収増益 7~9月」2025年10月23日付朝刊
ポイントをひとことで
サブスクリプション型サービスの本質は「継続利用される仕組み」をどう作るかにあります。その中核を担うのがシステム設計であり、ビジネスモデルに最適化されていなければ、いずれ限界が訪れます。既製SaaSの組み合わせでは初期の立ち上げは容易でも、事業拡張や独自施策の展開で必ず制約が生まれます。フルスクラッチ開発はその制約を取り払い、事業そのものを成長させる“器”を設計できる手段です。ビジネス構想を実装へと落とし込む力こそ、真の競争優位となります。
サブスクリプション成功の鍵は「独自モデルの再現性」にある
サブスクリプション事業は「継続課金」という点では共通していますが、実際の運用設計は業種やサービス特性によって大きく異なります。たとえば、動画配信なら利用量課金や視聴履歴に応じたレコメンドが必要になり、製造業では利用台数やメンテナンス周期に基づく請求が求められます。教育サービスであれば、ユーザー単位で契約期間や学習進捗を管理しなければなりません。
このように、サブスクの仕組みは単なる「定額課金システム」ではなく、ビジネスモデルそのものを支える中枢構造です。ところが、市販のSaaSや既成パッケージを組み合わせただけでは、こうした独自モデルを完全に再現することは難しく、「自社の運用をシステムに合わせる」という本末転倒な状態になりがちです。
SaaS活用の限界──“スピード導入”の裏に潜む柔軟性の欠如
多くの企業が新規事業立ち上げ時にSaaSを選択する理由は、初期投資の少なさと導入スピードの速さにあります。しかし、SaaSを中心とした構成では、次のような課題が顕在化します。
- 自社固有の料金体系やプラン構造を実装できない
- 顧客ごとに契約内容が異なるとデータ整合性が崩れる
- CRMや在庫管理など他システムとの連携に制約がある
- ビジネスモデル変更時に仕様改修ができない
サブスク事業の特徴は「試行錯誤を重ねながら進化する」点にあります。
にもかかわらず、SaaSの仕様制約が新たなプランや販促施策の実行を妨げ、成長機会を逃してしまうケースは少なくありません。
特に、SaaS間を連携させた運用では、仕様変更のたびにAPI改修が発生し、運用負荷やコストが急増するリスクもあります。
フルスクラッチ開発がもたらす“自由度”と“自社資産化”
フルスクラッチでサブスクリプションシステムを構築する最大のメリットは、自社のビジネスロジックをそのまま実装できる自由度です。料金体系、顧客区分、利用権限、契約フロー、請求サイクルなどを、事業モデルに合わせてゼロから設計できます。
また、フルスクラッチ開発で構築したシステムは「自社資産」として蓄積され、外部サービスに依存せずに改善や拡張を継続できます。これは単に機能の自由度にとどまらず、ブランド体験の一貫性を維持するうえでも極めて重要です。
たとえば、顧客がプラン変更を行う際のUIや契約画面のデザイン、通知メッセージのトーン&マナーなども、自社の世界観に合わせて作り込むことができます。こうした細部の積み重ねが、結果的に「使い続けたい」と思わせる顧客体験を生みます。
新規事業立ち上げにおける“プロトタイプ思考”の重要性
フルスクラッチ開発というと「時間がかかる」「コストが高い」というイメージを持たれがちです。しかし、実際には段階的な開発アプローチを採ることで、初期投資を抑えながらスピード感を確保することが可能です。
まずはコアとなるサブスク管理機能(契約・決済・顧客管理)を最小限で構築し、早期にプロトタイプを運用開始します。実際の顧客行動データや解約傾向を見ながら機能追加を重ねることで、現場に即した仕組みへと自然に育てていくことができます。このプロセスは、いわば“システムを育てる”開発手法であり、ビジネスモデルとシステムを同時に磨き上げる点に大きな価値があります。
サブスク事業の本質は「顧客との関係性を維持し続けること」
サブスクリプションの成否を決めるのは、単に新規契約数ではなく「継続率」です。ユーザーが離脱する理由の多くは、価格やコンテンツよりも、体験設計の不整合にあります。たとえば、契約変更や休止手続きが煩雑だったり、決済エラー時の通知が不親切だったりするだけで、解約率は急上昇します。
こうした“体験の摩擦”を最小化するには、サーバーサイドだけでなく、UI・UX・データ設計を一貫して制御できる開発体制が不可欠です。フルスクラッチであれば、利用履歴や行動ログをもとにしたパーソナライズ施策、継続課金の自動最適化、サポート連携などを自在に組み合わせることができます。つまり、顧客維持のためのPDCAサイクルをシステム側で回せるのがフルスクラッチの強みです。
拡張フェーズで問われる「データの一貫性」と「スケーラビリティ」
サブスクリプション事業が成長し、会員数や契約プランが増えるほど、課題となるのがデータ管理の複雑化です。SaaSでは各サービスが別々にデータを保持するため、顧客ID・契約履歴・課金データが分散し、正確なLTV(顧客生涯価値)の算出が困難になります。
フルスクラッチであれば、データベース設計段階から将来的な拡張を見据え、スキーマを最適化することが可能です。たとえば、複数ブランドのサブスク統合、海外決済対応、パートナー事業者との収益分配など、成長フェーズでの柔軟な対応力を確保できます。つまり、初期の段階から“10倍スケールしても破綻しない構造”を作っておくことが、長期的な競争力に直結します。
まとめ
サブスクリプション型サービスを成功させるために重要なのは、単に課金を自動化することではなく、自社のビジネスモデルと顧客体験を一貫して再現できる仕組みを持つことです。既成のSaaSではスピードは出せても、自社らしさや柔軟性を犠牲にせざるを得ません。一方、フルスクラッチによる構築は、設計自由度・資産性・拡張性のすべてを両立し、事業の成長に合わせて“システムを育てる”ことができます。
サブスクリプション事業は、一度作って終わりではなく、顧客とともに進化し続けるビジネスです。その持続的な進化を支えるのが、自社仕様で設計されたフルスクラッチのサブスクリプションシステムなのです。自社の事業構想を本当に形にできるのは、「自社仕様」で設計されたシステムだけです。
既製SaaSでは表現しきれないビジネスモデルや、将来の拡張性を見据えた基盤づくりをお考えなら、フレシット株式会社にご相談ください。当社は、サブスクリプション事業をはじめとする業務システムを、ゼロから設計・構築するフルスクラッチ(オーダーメイド)開発を専門としています。事業の成長に合わせて柔軟に進化できるシステムを、貴社のチームとともに伴走しながら形にしていきます。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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