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COLUMN コラム詳細

マツダ×日鉄の共創が示す──「ムリ・ムダ・ムラ」を減らす最短ルートは“発注関係の再設計”にある

発注関係の再設計がもたらす、品質・スピード・コストの最適化。

2025-11-04

マツダと日本製鉄が車体開発の初期段階から協働する新しい取り組みを始めました。両社は、従来の「発注―受注」という上下関係を超え、設計段階から一体となって開発を進める体制を構築しています。目的は、単なるコスト削減ではなく、供給網全体の“ムリ・ムダ・ムラ”をなくすこと。

この発想は、システム開発の世界にもそのまま通じます。多くのITプロジェクトで起こる非効率や炎上の根本原因は、工程や技術ではなく、「発注関係の構造」にあります。本コラムでは、マツダ×日鉄の共創モデルを手がかりに、発注者とシステム開発会社の関係性をどう再設計すれば、品質・スピード・コストを同時に高められるのかを解説します。

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【記事要約】マツダ、日鉄と共同で車体開発 関税負担を背景にサプライチェーンを再構築

マツダは日本製鉄と自動車車体の共同開発を開始する。日鉄が設計初期から参画し、車両全体の軽量化・コスト削減を図る。従来の部品単位の競争入札を見直し、素材メーカーの技術提案を生かす「共創型」体制へ転換。米国の関税引き上げで業績が悪化する中、マツダはコスト構造の抜本改革を急ぐ。初の対象は25年末発売予定の新型「CX-5」で、日鉄の次世代鋼材により1割軽量化を実現。自動車メーカーと素材メーカーの上下関係を超えた対等な連携の先例となる。

出典:日本経済新聞「〈ビジネスTODAY〉マツダ、日鉄と車体開発米関税打撃、コスト削減 車メーカー優位の力学変化」2025年10月24日付朝刊

ポイントをひとことで

多くのシステム開発プロジェクトでは、工程の見直しばかりが議論されますが、真の非効率は「関係性の設計」に潜んでいます。発注側と開発側が上下の構造に縛られたままでは、目的共有や課題解決のスピードが上がらず、ムリ・ムダ・ムラが生まれます。重要なのは、発注関係をフラットに再構築し、対等な立場で議論できる環境をつくることです。共創による信頼と透明性こそが、品質・スピード・コストの三立を可能にする最大の仕組みと言えます。

非効率の原因は「工程」ではなく「関係性」にある

システム開発が計画通りに進まないとき、多くの企業は「要件定義が甘かった」「スケジュール管理が不十分だった」といった工程上の問題に目を向けがちです。
しかし、プロジェクトを深く掘り下げていくと、真の原因は“工程”ではなく“関係性”にあることが少なくありません。

たとえば、発注側が仕様を一方的に決め、システム開発会社がそれに従うだけの関係性では、対等な議論が生まれません。
システム開発会社は「言われた通りに作る」ことを優先し、提案やリスク共有を控える傾向があります。一方、発注側は「なぜそうなったのか」を理解できず、結果的に後戻りや仕様変更が増える。こうして、双方が疲弊しながらもゴールが遠のいていく構図が出来上がります。

本来、プロジェクトの目的は「仕様書を完成させること」ではなく、「業務を変えること」「成果を出すこと」です。にもかかわらず、上下関係が強い発注構造では“成果に向けた共創”が生まれにくく、ムリ(過剰な対応)・ムダ(重複作業)・ムラ(認識のズレ)が常態化してしまいます。

マツダ×日鉄の協働が示した「対等な関係性」の力

マツダはこれまで、新型車の設計を自社で完結させたうえで、部品ごとに複数の素材メーカーに見積りを依頼していました。
一見、価格競争によってコストを抑えられる仕組みのように見えますが、実際には素材メーカーの技術提案が活かされず、全体コストの最適化が進まないという課題がありました。

そこでマツダは、日本製鉄を開発初期段階から巻き込み、車両全体の構造設計と素材選定を一体で行う体制に転換しました。
両社が対等な立場で課題を共有し、品質・コスト・重量などの目標をすり合わせることで、従来見えなかった非効率が可視化され、結果的に車体の軽量化とコスト削減を同時に実現したのです。

この関係性の変化は、単なる「発注プロセスの改善」ではなく、「パートナーシップの再設計」でした。
それは、上下関係ではなく対話と共創による新しい開発構造――まさに“発注関係の再設計”の実践例といえるでしょう。

システム開発の「ムリ・ムダ・ムラ」はこうして生まれる

システム開発の現場でも、同様の構造的な非効率が発生しています。
たとえば、発注側が「この仕様で見積もりをください」と要件を固定してから複数社に見積りを依頼するケースです。
この時点で、システム開発会社は「決められた範囲内で最も安く作る方法」を考えるしかなく、提案の自由度を失います。

結果として、

  • システム開発会社は安さを優先して無理なスケジュールを組む(ムリ)
  • 同じような機能を複数のシステムで重複開発する(ムダ)
  • 発注側と開発側の意図がずれて手戻りが発生する(ムラ)

という悪循環が起こります。
これらはどれも技術力の問題ではなく、発注構造の問題です。
つまり、プロジェクトの効率を上げるためには、工程を細かく管理する前に「関係性の設計」を見直す必要があります。

対等な共創関係がもたらす3つの効果

発注関係を再設計し、発注側と開発側が対等な立場で議論できるようになると、プロジェクトには大きく3つの変化が生まれます。

1.目的の共有と判断のスピード化

上下関係がなくなることで、両者が同じ目的意識で判断を行えるようになります。仕様変更や設計調整が必要な場面でも、目的を軸にした議論ができ、意思決定のスピードが上がります。

2.技術提案の質向上

システム開発会社が“評価される立場”ではなく“共に考える立場”になることで、制約を超えた提案が生まれます。
たとえば「仕様をこう変えると保守性が上がる」「他システムと連携するなら構造を変えるべき」といった中長期的視点の提案が増えます。

3.プロジェクト全体の生産性向上

対等な関係性は、心理的安全性を高めます。メンバーが自由に意見を出し合える環境が整うことで、問題の早期発見・改善が進み、結果的にスピード・品質・コストが同時に改善されます。

「発注側の責任範囲」を減らすのではなく「共有」する

発注関係を見直すと聞くと、「発注側の管理範囲を減らす」と誤解されがちです。
しかし、実際に目指すべきは“責任の共有”です。
すべてを外部に任せるのではなく、目的と課題を共有し、互いの強みを生かして進める。

たとえば、発注側が業務知識を提供し、開発側が技術の最適化を図る。
お互いの視点が重なる領域こそが、価値を最大化するポイントです。
このように「責任を分ける」から「責任を共有する」関係に変わることで、システム開発の成果は格段に高まります。

関係性の再設計が、最も確実なコスト削減策

価格交渉によって単価を下げる取り組みは、一時的な効果しか生みません。
本質的なコスト削減とは、「手戻りをなくすこと」「無駄な調整を減らすこと」「修正の発生を防ぐこと」であり、これらは関係性の質に直結します。

関係性が健全であれば、課題が早期に共有され、不要な工程が減ります。
逆に、信頼関係が希薄なまま進めば、互いに守りの姿勢となり、リスク回避のための冗長な工程が増えます。

つまり、コスト削減の最短ルートは、発注関係をフラットにすること。
これが、マツダと日鉄が示した“共創の本質”であり、システム開発における生産性向上の核心でもあります。

まとめ

システム開発における「ムリ・ムダ・ムラ」は、工程管理の問題ではなく、関係設計の問題です。
発注側と開発側が上下関係で対立する構造を改め、目的を共有できる対等な関係性を築くこと。
その再設計こそが、品質・スピード・コストをすべて両立させる最短ルートです。

共創による発注関係の再設計は、単なる“発注プロセスの見直し”ではなく、“組織と技術のあり方”そのものを変える改革です。
マツダ×日鉄の共創が自動車産業を変えたように、発注関係の再設計はシステム開発の未来を大きく変えていくでしょう。

フレシット株式会社では、この「発注関係の再設計」という考え方を、システム開発の現場で実践しています。私たちは、発注者と受託者という枠を超え、課題の本質を共に掘り下げる“共創型フルスクラッチ開発”を行っています。要件定義の前段階から対話を重ね、業務全体を理解したうえで最適なシステム像を設計することで、ムリ・ムダ・ムラのない開発を実現します。対等なパートナーとして、本質的な成果を追求するシステム開発をご希望の方は、ぜひフレシットにご相談ください。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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