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COLUMN コラム詳細

パナソニックHDの調達改革に学ぶ──調達コストを“見える化”する、フルスクラッチによる最適購買システム構築の考え方

自社の購買思想を、システムというかたちで定義し直す

2025-11-11

調達コストの削減は、単なる「仕入れ価格の見直し」だけでは実現できません。
部品の標準化や推奨品の選定、各拠点・グループ会社の購買情報の統合といった、組織全体での“構造的な可視化”が欠かせません。パナソニックホールディングスが推奨部品の検索システムと使用比率の可視化ツールを導入し、年間60億円のコスト削減を実現した事例は、その象徴的な一例といえるでしょう。

本コラムでは、調達コストを見える化する仕組みの設計思想を紐解きながら、フルスクラッチ開発だからこそ実現できる最適な購買システムの在り方について解説します。

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【記事要約】パナソニックHD、推奨部品の可視化ツールで調達費を60億円削減

パナソニックホールディングスは、グループ全体で物流・調達改革を進めている。調達部門が推奨する部品を検索できるシステムや、推奨部品の使用比率を可視化するツールを導入し、標準化と効率化を加速。これにより、ある部品では2025年3月期の調達費用が前期比で約60億円減少する効果が確認された。部品選定の重複や非効率な調達を抑える仕組みとして、今後のコスト構造改革の中核を担う取り組みと位置づけられている。

出典:日本経済新聞「パナHD、国内社員2人に1人が50代以上数年後に『定年ラッシュ』 5000人削減へ募集開始」2025年10月28日付朝刊

ポイントをひとことで

調達コストの削減を実現する鍵は、単なるシステム導入ではなく、購買情報をどこまで“構造的に見える化”できるかにあります。現場の判断や例外処理が多い調達業務では、既製のSaaSでは業務ロジックを反映しきれず、結局は属人的運用に戻ることが少なくありません。フルスクラッチ開発で重要なのは、部品選定・承認・発注・分析といった流れを企業固有の判断基準に合わせて再設計することです。見える化とは、単に可視化することではなく、意思決定を速く・正しくする“設計思想”そのものです。

調達コスト削減の本質は「見える化」にある

調達改革の取り組みは多くの企業で行われていますが、成果を上げる企業とそうでない企業の差は、「データの見える化」がどこまで進んでいるかにあります。
部品や資材の購買は、同じ社内でも部署や拠点ごとに異なる担当者・手順・取引先が存在し、全体像が把握しづらい領域です。個別最適が積み重なった結果、同じ部品を異なる仕入価格で購入していたり、既に推奨から外れた部品を使い続けていたりするケースは少なくありません。

調達の“ブラックボックス化”を解消するためには、まず現状の購買データを一元的に収集・整理し、どの製品でどの部品が、どのようなコスト構造で使われているのかを俯瞰できる状態にする必要があります。

このデータを可視化できれば、非効率な取引や重複購買の発見、推奨外品の使用抑制など、構造的なコスト削減の余地を具体的に把握できます。

なぜSaaSでは限界があるのか

調達管理にはSaaS型のクラウドサービスも数多く存在しますが、実務上の“個別ロジック”を反映しきれないという課題があります。
企業ごとに、部品選定の基準や承認フロー、取引先の評価指標、購買上の例外ルールなどが存在します。これらは一見すると小さな違いのように見えても、実際の現場運用では非常に重要な意味を持ちます。

SaaSは、汎用性を重視する設計思想のため、こうした自社特有のプロセスをそのまま反映することが難しいのです。
結果として、

  • Excelなど別ツールで補完する
  • 本来自動化できる業務が属人的に戻る
  • システム更新のたびに運用が混乱する


といった問題が生じます。

調達は単なる“データ入力業務”ではなく、設計部門・品質保証・生産管理など多部署が関わる戦略的な業務です。その複雑な関係性を踏まえ、フローやデータモデルをゼロから設計できるのがフルスクラッチ開発の最大の利点です。

フルスクラッチ開発で構築する“見える化”の仕組み

フルスクラッチ開発では、企業の調達戦略や購買プロセスを余すことなく反映できます。たとえば、以下のような仕組みを段階的に構築できます。

1.推奨部品データベースの設計
各製品カテゴリごとに、推奨部品や代替部品を一覧化。型番・仕様・コスト・供給リスクなどの属性を持たせ、検索性を高めます。これにより、設計担当者は必要な部品を正確に見つけ、調達側は標準化の浸透状況を管理できます。

2.使用比率の可視化ダッシュボード
推奨部品が実際にどの程度採用されているかを可視化し、拠点別・製品別に利用状況を分析。使用率の低い部門へのフィードバックや、推奨外品使用の是正に役立てます。

3.調達データの統合・分析基盤
仕入れ価格、サプライヤー評価、納期遵守率などのKPIを統合し、リアルタイムに分析。購買単価の異常値検出や、発注ロット最適化のシミュレーションなど、高度な意思決定支援を実現します。

4.部門連携を前提としたワークフロー設計
設計・品質・調達の間で情報が分断しないよう、承認・共有・更新プロセスを一元化。ワークフローをシステムで制御することで、ヒューマンエラーや手戻りを最小化します。

こうした仕組みを支えるのは、単なる「データの蓄積」ではなく、「データをどう構造化するか」という情報設計の思想です。業務構造とデータ構造を整合させることが、見える化の成否を左右します。

「標準化」と「柔軟性」を両立させる設計思想

調達システムの設計において、最も難しいのが「標準化」と「柔軟性」の両立です。
標準化を徹底すれば運用は効率化しますが、現場の裁量が奪われすぎると例外対応が増え、かえって運用コストが膨らみます。逆に柔軟性を重視しすぎると、標準ルールが形骸化し、購買コントロールが効かなくなります。

フルスクラッチ開発では、これらをシステム設計の段階で“意図的に共存させる”ことができます。
たとえば、

  • 推奨部品リストは中央で一元管理しつつ、現場側で一時登録が可能
  • 承認ルートを柔軟に切り替えられる権限設計
  • 各事業部の業務特性に合わせた可視化指標のカスタマイズ
    といった設計が可能です。

これは、SaaSでは“設定項目の制限”に阻まれやすい部分です。
自社の業務モデルに沿ってルールを作り込み、後からも進化できる構造を持つことが、長期的な調達改革の鍵になります。

見える化が生む「意思決定の速さ」と「全体最適」

購買データが部門ごとに分断されていると、経営層が全体最適の判断を下すことが難しくなります。
見える化システムの導入によって、どの拠点で、どの製品に、どの程度のコストがかかっているかを一目で把握できるようになれば、

  • 調達先の統合によるスケールメリット
  • 発注タイミングの最適化
  • サプライヤーの再選定


といった意思決定を迅速に下すことができます。

また、見える化の効果は“コスト”だけにとどまりません。
部品の安定供給や品質トラブルの早期発見、設計段階での部品選定スピードの向上など、業務全体に波及します。
調達のデジタル化とは、単に仕入価格を管理することではなく、企業の競争力を左右する情報資産を整える取り組みなのです。

DX推進の礎としての「調達システム」

近年、製造業を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、調達部門はしばしば後回しにされがちです。しかし、調達データは企業活動のあらゆる領域に関係しており、経営のボトルネック解消に直結する分野です。購買情報の一元化と見える化は、DX推進の“入口”であり、“基盤”でもあります。

フルスクラッチによる調達システム開発は、単にシステムを刷新するというよりも、「自社の購買思想をシステムとして定義し直す」ことに近いプロジェクトです。
そのプロセスを通じて、部門をまたいだ共通言語が生まれ、組織文化そのものが変わっていく可能性があります。

まとめ

調達コストの削減は、価格交渉だけではなく、情報の構造化と可視化から始まります。
推奨部品の検索や使用比率の分析といった仕組みは、単なる管理ツールではなく、企業の知的資産を活かす基盤です。
そして、その基盤を自社の業務構造に合わせて設計できるのが、フルスクラッチ開発の真価です。
“調達を制する者が経営を制する”という言葉の通り、見える化された購買情報こそが、次の成長を支える経営リソースとなるのです。

フルスクラッチ開発は、単なる“ゼロから作る”ことではなく、自社の業務構造・意思決定プロセス・将来の拡張性までも見据えて設計する行為です。既製のシステムに業務を合わせるのではなく、業務の本質に合わせてシステムを設計する。それが、フレシット株式会社が大切にしている考え方です。

当社では、要件定義からプロトタイプ、運用保守フェーズまでを一貫して支援し、企業の中に眠る業務知をテクノロジーとして再構築します。既存ツールでは拾いきれない“自社らしさ”を可視化し、調達や購買といったコア業務を次の成長ステージへ導く。フルスクラッチだからこそ実現できる「最適化」を、現場とともにかたちにしていきます。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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