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COLUMN コラム詳細

パナソニックHDの調達改革に見る──“推奨”を見える化する、フルスクラッチが変える標準化と現場裁量のバランス

標準化と裁量を両立させる、フルスクラッチ開発の設計思想

2025-11-03

パナソニックホールディングスが導入した「推奨部品の検索システム」と「使用比率の可視化ツール」は、単なるコスト削減のための仕組みではありません。そこには、“標準化を進めながらも、現場の判断を生かす”という難しい課題を両立させる設計思想が存在します。

本コラムでは、この「推奨」という考え方を抽象化し、製造・流通・サービスなど多様な業種に共通する、標準化と現場裁量のバランスをとるシステム設計の要諦を、フルスクラッチ開発の視点から解説します。

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【記事要約】パナソニックHD、推奨部品の可視化ツールで調達費を60億円削減

パナソニックホールディングスは、グループ全体で物流・調達改革を進めている。調達部門が推奨する部品を検索できるシステムや、推奨部品の使用比率を可視化するツールを導入し、標準化と効率化を加速。これにより、ある部品では2025年3月期の調達費用が前期比で約60億円減少する効果が確認された。部品選定の重複や非効率な調達を抑える仕組みとして、今後のコスト構造改革の中核を担う取り組みと位置づけられている。

出典:日本経済新聞「パナHD、国内社員2人に1人が50代以上数年後に『定年ラッシュ』 5000人削減へ募集開始」2025年10月28日付朝刊

ポイントをひとことで

“推奨”を見える化するというテーマは、単にルールを共有することではなく、「組織の判断構造を再設計する」ことに近いです。現場の裁量を奪わずに標準化を進めるには、システムがルールを押しつけるのではなく、判断を支援する仕組みである必要があります。可視化の本質は、統制ではなく理解の共有です。フルスクラッチ開発によって、業務ロジック・データ構造・UIを自社に最適化することで、現場が自律的に最適解を導ける“共通の思考フレーム”を持てるようになります。

推奨とは、現場を縛るルールではなく、判断を支える道標

「推奨」という言葉には、ルールや制約のイメージがつきまといがちです。しかし、本来の目的は現場を縛ることではなく、“最善の選択を支援する”ことにあります。
たとえば製造業における「推奨部品リスト」も、設計や品質管理、購買などの複数部門が連携して蓄積してきた知見の結晶です。これを全社で共有し、判断の基準とすることで、品質の安定とコスト削減を同時に実現します。

問題は、この推奨情報が暗黙知のまま放置され、部門や担当者によってバラバラに運用されてしまうことです。フルスクラッチ開発によって、推奨ルールをシステムに落とし込み、誰もがアクセスできる“道標”として再構築することで、属人化を防ぎながら、判断の精度を高めることができます。

標準化の「理想」と現場の「現実」は、いつも衝突する

標準化を進めようとする組織は多いものの、現場では「実情に合わない」「柔軟に対応できない」といった声が上がることも少なくありません。
標準化を徹底すれば効率は上がりますが、業務の多様性を奪い、現場判断のスピードを下げてしまうリスクもあります。

そのため重要なのは、“標準化する部分”と“自由度を残す部分”を設計段階で明確に線引きすることです。
例えば、推奨項目や承認ルートは中央管理で統一しつつ、例外的な判断を許容する「一時登録」や「条件付き承認」などの柔軟なワークフローを設けることで、全体最適と現場最適を両立できます。

フルスクラッチ開発では、このようなバランス設計をシステムの根幹に組み込むことが可能です。SaaS型サービスではテンプレートに沿った設定しかできませんが、フルスクラッチであれば、現場の多様性を損なわずに統制をとる構造を実現できます。

推奨の見える化がもたらす3つの効果

推奨情報を可視化することは、単なる情報共有ではなく、組織全体に次の3つの効果をもたらします。

1.判断基準の統一
誰がどのような判断をしても、同じ基準で選定・承認・運用できるようになります。これにより、属人化や品質のばらつきが減少し、意思決定のスピードも上がります。

2.改善のためのデータ蓄積
可視化されたデータは、どの推奨がどれだけ使われたか、どのルールが形骸化しているかを分析する材料になります。単なるルール遵守ではなく、“現場で活きている推奨”と“形だけの推奨”を見分け、ルールそのものをアップデートできるようになります。

3.標準化と柔軟性の両立
推奨を“固定ルール”ではなく“ガイドライン”として運用することで、現場が自ら判断できる余地を残します。結果として、ルールが「守られる」だけでなく、「活かされる」ものになります。

これらの効果を生むためには、単なるデータ可視化ではなく、組織の意図を反映した情報設計が不可欠です。

フルスクラッチ開発が推奨設計に向いている理由

推奨ルールの可視化や標準化を実現しようとした際、既存のSaaS型システムでは限界に直面することが多くあります。なぜなら、推奨ルールは企業ごとに異なり、製品特性や組織文化、承認プロセスなどが複雑に絡み合っているからです。

フルスクラッチ開発であれば、これらの要素をシステム構造の中に柔軟に組み込むことができます。
たとえば、

  • 業務プロセスや承認フローを完全に自社仕様に合わせられる
  • 推奨情報と実際の運用データをリアルタイムで連動できる
  • 部門や製品カテゴリごとに異なる“ルール階層”を定義できる


といった点です。

つまり、「現場の判断を奪わずに、全体の整合性を保つ設計」こそが、フルスクラッチ開発の真価です。
それは単に柔軟性が高いということではなく、組織文化そのものを設計に落とし込めるということを意味します。

データの可視化から理解化

多くの企業が“見える化”という言葉を掲げますが、実際にはデータを一覧表示して終わっているケースも少なくありません。
しかし、真の見える化とは、「データを提示すること」ではなく、「組織がそれを理解し、判断に活かせる状態をつくること」です。

たとえば、推奨項目の使用比率を単にグラフ化するだけでは意味がありません。
それを“なぜその推奨が選ばれたのか”“なぜ一部の現場では使われていないのか”という文脈で解釈できるようにすることが、真の“理解化”です。
そのためには、データの持ち方・更新方法・分析軸までも、業務構造に沿って設計する必要があります。

フルスクラッチ開発では、データベース設計・UI構成・アクセス制御などをすべて自社の判断構造に合わせて組み立てることができるため、情報が「生きた知」として活用される土台を整えることができます。

現場の知を、仕組みに変える

現場には、マニュアルには書かれない多くの“知恵”が存在します。
しかし、それが人の頭の中や紙の資料に留まっている限り、組織全体の財産にはなりません。
推奨ルールの明文化と可視化は、その知を「仕組み化」する第一歩です。

フルスクラッチ開発は、そうした現場知を抽出し、整理し、システムとして定着させるプロセスを支援します。標準化は“均一化”ではなく、“共通理解”のこと。現場が自律的に動きながら、組織全体で同じ方向を向けるようになる。その設計思想こそが、推奨を見える化する本質です。

まとめ

“推奨”の見える化は、単なるルール管理ではなく、組織の知を可視化し、共有知へと昇華させる営みです。
標準化と現場裁量という一見相反する要素も、設計思想によって共存させることができます。
そして、業務構造に合わせてルールやデータのあり方を設計できるフルスクラッチ開発こそが、その両立を最も自然に実現できる手段といえるでしょう。

フルスクラッチ開発とは、単にシステムをゼロから構築することではなく、「自社の意思決定や現場の判断をどう仕組みに落とし込むか」を設計することです。フレシット株式会社では、この“設計思想”を重視し、業務構造そのものを理解した上で最適なシステムを共に形づくります。標準化と柔軟性、効率と現場感。その両立を目指す企業にこそ、フルスクラッチという選択肢は有効です。現場の知を活かしながら、組織の判断を支える仕組みを共創する。それが、私たちフレシットの開発スタイルです。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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