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COLUMN コラム詳細

情報共有を“仕組み”でデザインする──全社最適を実現するシステム設計論

情報共有は根性ではなく構造でつくる──仕組み化が競争力を決める

2025-11-13

部門や拠点ごとに最適化された業務ルールは一見効率的に見えても、全社的には情報の分断を生み出すことがあります。製造、営業、購買、管理──それぞれの現場で使われるシステムやフォーマットが異なると、情報の流れが滞り、意思決定のスピードが落ちてしまうのです。

本コラムでは、こうした「情報の壁」をどう取り払い、組織全体で共有できる仕組みをつくるかをテーマに、フルスクラッチ開発の視点から考えます。

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【記事要約】図面の共有・活用で工場間連携を強化、AIが製造ノウハウを可視化

製造現場で図面管理の効率化が進んでいる。仲精機(大阪府)はAIで図面を分析・管理するキャディのシステムを導入し、約6万枚の図面を共有化。従来は工場ごとに異なるルールでデジタル化が進み情報が分断されていたが、共通のフォーマットで作業手順や加工条件を記録し、工場間の仕事の融通や技能伝承が可能となった。熟練社員の図面メモも検索可能となり、暗黙知の継承や生産効率の向上に寄与。図面を核としたデータ共有は中小製造業の競争力を高め、供給網全体の安定にも貢献する。

出典:日本経済新聞「〈小さくても勝てる〉図面から生産・調達改革工場間の垣根なくし仕事融通 AIで職人メモ見える化」2025年10月15日付朝刊

ポイントをひとことで

情報共有の本質は、単にデータを集約することではなく、組織の構造そのものを再設計することにあります。部門ごとに最適化された仕組みは、結果的に全体の非効率を生み出します。重要なのは「統一」ではなく「整合性」。業務特性を尊重しながらも、共通ルールとデータ構造を持たせることで、情報は自然に流れ始めます。フルスクラッチ開発はこの“情報の流れ”を業務起点で設計できる手法であり、企業の競争力を底から支える基盤づくりに最も適しています。

部門最適がもたらす“情報のサイロ化”

企業が成長する過程で各部門はそれぞれの専門性を高め、最適なツールや業務ルールを構築してきました。しかし、これが行き過ぎると、部門ごとに異なる言語・データ形式・判断基準が生まれ、全社的な連携を難しくします。

たとえば製造業では「設計部門が管理する図面データ」と「生産部門で使う加工データ」が連携していないため、同じ製品の仕様を何度も確認し直したり、別部門で再登録したりするケースが少なくありません。営業では顧客情報がExcelで個別管理され、経理部門では会計ソフトに別形式で入力される。こうした“情報のサイロ化”が、企業のスピードと生産性を大きく損なっているのです。
属人化や二重管理の原因はツールの問題ではなく、「情報共有の仕組み」が組織内に存在しないことにあります。つまり、情報を集約・流通させるための設計思想が欠けているのです。

情報共有の本質は「人のつながり」ではなく「構造のつながり」

多くの企業では「情報共有」を人間関係やチームワークの文脈で語りがちですが、実際にボトルネックとなるのは人ではなく“構造”です。現場がいくら協力的でも、システムやデータ構造が分断されていれば情報は流れません。情報共有の本質とは「データが自然に流れる構造を設計すること」にあります。
具体的には、次の3点を満たす必要があります。

  1. どの部門でも同じ定義で情報を扱えること
    例:顧客IDや製品コードが全システムで共通化されている
  2. 入力ルールが明確で一貫性を保てること
    例:フォーマットや命名規則を統一し、入力のばらつきを防ぐ
  3. 情報の流れが可視化され、更新責任が明確であること
    例:どの部門がマスター情報を管理し、どこまで共有されるかを定義


この3つを満たさない限り「共有」は掛け声で終わります。逆に言えば、これらを構造としてシステムに組み込むことで、情報共有は自動的に機能し始めます。

「仕組み化」がもたらす再現性とスピード

情報共有を仕組み化する最大の利点は、再現性のあるオペレーションを生み出せる点にあります。人や拠点が変わっても、同じルール・同じ構造で情報が流れる。これにより、属人化や引き継ぎの混乱を防ぎ、組織としての学習速度を高めることができます。

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また、データの更新がリアルタイムで反映されるようになれば、現場の判断も迅速になり、経営の意思決定にもタイムラグがなくなります。たとえば営業が入力した見積情報をもとに、生産部門が即座に在庫や工程の調整を行う──こうした連携が実現すれば、組織全体の動きがスムーズに同期するのです。
さらに「仕組み化」は単なる効率化ではなく、企業文化の変革にもつながります。情報が誰にでも見える状態になることで、部門間の相互理解が深まり、“情報を独占することによる優位性”よりも、“共有による価値創出”を重視する文化が育まれます。

パッケージでは生まれない“現場に馴染む構造”

情報共有を目的に多くの企業が導入するのがERPやSaaSなどのパッケージシステムです。確かに標準機能が充実しており、短期間で導入できるというメリットはあります。しかし問題は「現場が求める運用ルールと構造がパッケージに合わない」ことです。
たとえばある部門では品目コードの桁数を増やしたい、別の部門では業務の流れ上項目を分けて管理したい。こうした要望を汎用パッケージにそのまま反映させることは難しく、結局Excelや個別ツールが併用されてしまう──これでは本末転倒です。

フルスクラッチ開発であれば、各部門の実態に合わせて情報構造や運用ルールを柔軟に設計できるため、“現場で本当に使われる仕組み”を構築することが可能です。特に企業独自の業務プロセスや判断基準が競争力の源泉となっている場合、この柔軟性は大きな強みとなります。

情報の流れを再設計する「3つの視点」

情報共有を仕組み化する際は、単にデータを一元化するだけでなく、組織全体の“情報フロー”を再設計する必要があります。そのための基本的な視点は次の3つです。

1.流す情報と止める情報を明確にする

すべての情報を全員に共有する必要はありません。必要な情報を、必要な人に、必要なタイミングで届ける。この線引きを誤ると、情報が氾濫し、かえって混乱を招きます。

2.現場と経営をつなぐデータ構造を持つ

現場データをそのまま経営判断に使えるよう、粒度と項目設計を整えること。フルスクラッチ開発では、業務フローと経営管理の両面から最適なデータモデルを設計できます。

3.運用ルールを“システムに埋め込む”

マニュアルや口頭で伝えるのではなく、システムそのものにルールを実装します。入力制御・承認フロー・自動通知などを組み合わせ、人に依存しない運用を実現します。これらを実現することで、情報共有は“仕組みとしての一体化”へと進化します。

情報共有の成熟度が競争力を決める

今日の企業競争は、スピードと連携力で決まります。市場環境が変化する中で、どれだけ迅速に意思決定し、組織全体を同じ方向に動かせるか。そのためには、情報の透明性と共有性が不可欠です。
しかし、それを支えるのは一時的な仕組みではなく、情報が自然に流れる構造を持つ組織基盤です。情報共有の「仕組み化」は、業務効率化の延長ではありません。それは、企業の思考・判断・行動を統合し、変化に強い経営体制を支える“戦略的な設計行為”なのです。

まとめ

部門最適を積み重ねても全体最適は生まれません。情報共有を真に機能させるには、現場ごとに異なるルールやツールを整理し、共通の構造で情報が流れる仕組みを設計することが欠かせません。フルスクラッチ開発による情報共有の仕組み化は、現場の柔軟性と経営のスピードを両立させ、企業の競争力そのものを支える基盤となります。情報を“集める”時代から、“流れる仕組みをつくる”時代へ。これからの企業に求められるのは、その根本的な発想転換です。

フレシット株式会社では、企業ごとの業務構造や情報の流れを丁寧に整理し、組織全体で“情報が自然に流れる仕組み”を一から設計します。既存ツールに業務を合わせるのではなく、現場で実際に使われ、運用しながら成長していけるシステムを構築することが私たちの強みです。パッケージでは実現できない柔軟な情報共有と全体最適を、フルスクラッチ(オーダーメイド)開発によって形にし、企業の競争力を支える持続的な仕組みづくりをご支援します。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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