既存パッケージでは再現できない“顧客行動データ”の深掘り──商品開発を加速させるオーダーメイド分析基盤とは
2025-11-16

購買データの活用は、単なるPOS分析の延長ではありません。特に「パッケージ型システムでは、ほしい粒度のデータが取れない」という悩みは多くの事業会社が抱える共通課題です。顧客の行動データをどれだけ深く取得し、どのレベルで分析できるかによって、商品開発の精度は大きく変わります。本コラムでは、オーダーメイドで構築する分析基盤がいかに企業の競争力を高めるのかを、実務的な視点で整理します。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
目次
【記事要約】富士フイルムの「クローン工場」戦略が示す、混沌期に勝ち残る企業の条件
富士フイルムは地政学リスクを見据え、設備やシステムを統一した「クローン工場」を英・日・米・デンマークに短期間で展開。米国での大型受注(約4500億円)につなげ、バイオ医薬版TSMCをめざす体制を築いた。環境変化を逆手に取った迅速な投資判断が勝因とされる。一方、日本企業では保守性が根強く、設備投資が伸び悩む。トライアルは購買データを共有する独自経済圏で小売大手に挑戦。フコクは非ケイレツの立場を活かし、EV向け部品で中国BYDに採用されるなど、混沌を機に変革した企業が成果を上げている。変化の波が速まるなか、既存の枠組みを超えた成長投資の決断が企業の存続を左右する。
出典:日本経済新聞「〈THESTRATEGY〉勝ち筋をつくる(1)巨人の牙城崩す『クローン工場』富士フイルム、混沌逆手に4500億円受注 10年後の存亡かけ現状打破」2025年11月5日付朝刊
ポイントをひとことで
オーダーメイドの分析基盤が重要なのは、「自社の強みや顧客の実態を、既存パッケージの“前提”に合わせて矮小化しないため」です。購買データや行動ログは、企業ごとに取得すべき粒度も意味づけもまったく異なります。特に商品開発やサービス改善では、「なぜ買われたのか」「誰に刺さっているのか」の因果を掘り下げられるかが競争力を左右します。ログ設計を業務フローと紐づけて定義できるフルスクラッチの基盤は、この“因果の可視化”を実現し、企業が意思決定を高速化するための土台となります。
既存パッケージが抱える“粒度の限界”
一般的な市販パッケージは、多くの企業で共通して使えるように設計されています。言い換えれば、最適化されているのは「平均的な業務」であり、特定企業の独自性や意思決定の流儀に合わせたデータ構造ではありません。
たとえば購買データ。
一見シンプルに見える「誰が・何を・いつ買ったか」という情報にも、企業ごとに取得したい粒度は大きく異なります。
・どの棚から商品を手に取ったのか
・どの商品と比較したのか
・カートに入れたが購入しなかった理由
・実際の属性と、購買行動から推定される隠れた属性の差
・時間帯や天候変化が購買行動に与える影響
既存パッケージの多くは、これらを細かく記録できません。ログの形式・項目・頻度が固定化されているため、追加の取得や現場に合わせた新しいログの定義が難しく、分析できる範囲に限界が生じます。
結果として、
「本当に知りたいデータが取れない」
「行動の背景が見えない」
「どんな改善施策が有効なのか判断できない」
といった事態が起きてしまいます。
商品開発に必要なのは“自社特化の行動データ”
購買行動は「レジで決済した瞬間」に完結するものではありません。意思決定の前後に、数多くの行動が存在します。
・来店動線
・手に取った商品のカテゴリ
・比較した商品の共通点
・戻した理由
・迷った時間
これらは、商品開発において大きなヒントを与えます。
「女性向けだが、実際は男性に売れている」
「想定されていない年齢層が繰り返し購入している」
といった現象は、行動ログを精緻に設計しなければ把握できません。
なぜその商品が選ばれたのか。
なぜ別の商品は選ばれなかったのか。
この“なぜ”を言語化できるかどうかが、商品企画の質を決めます。
パッケージ型のデータ基盤では、この“なぜ”の部分を掘り下げきれないケースが非常に多いのです。
オーダーメイド分析基盤が提供する価値
オーダーメイドで設計する分析基盤は、業務そのものに合わせてデータ構造を細かく作れます。既存パッケージと本質的に異なる価値が生まれるポイントは次の通りです。
業務フローに合わせたログ設計が可能
業務フローが企業ごとに異なるように、取得すべきデータも企業ごとに異なります。
「売上」「在庫」だけではなく、
・業務の実行順序
・判断のために使われた情報
・現場担当者の行動
などもログとして取得できます。
取得粒度・タイミング・形式を自由に定義できる
分析基盤の根幹となるログの“粒度”を、ビジネス要件から逆算して決められる点はオーダーメイドならではです。
・秒単位の行動ログ
・センサー情報
・カート内の移動履歴
・比較候補の履歴
これらを柔軟に定義し、後から変更や追加も可能です。
顧客行動の“因果”を読み取ることができる
ログの粒度を細かく設定できるため、
「なぜ売れたのか」「なぜ売れないのか」
の因果を再現できます。
これは、既存パッケージの分析画面では実現が難しい領域です。
“共創データ”が新たな価値を生む
データ基盤の価値は、自社内に閉じる必要はありません。
トライアルの例のように、メーカー・卸・小売が共通のデータを使い、商品企画を共同で行うモデルが一般化しつつあります。
自社の購買データを共有する代わりに、
・メーカーは開発スピードを上げられる
・卸は販売計画を最適化できる
・小売は売れる商品を確実に仕入れられる
という“共創の輪”が広がります。
この仕組みは、既存パッケージでは実現しづらい高度な連携要件を伴います。
権限管理・匿名化処理・企業ごとの閲覧範囲調整など、柔軟な設計が求められるため、オーダーメイドの方が適しています。
データ活用の成功は“設計”で決まる
データ分析は、ツールの導入だけでは成功しません。
最初の段階で、
・何を取得するのか
・どの粒度で取得するのか
・どのタイミングで取得するのか
・どのような分析をしたいのか
・誰がどう使うのか
といった設計が曖昧だと、データはほとんど使われなくなります。
オーダーメイドの分析基盤は、この設計工程を自社の業務に合わせてゼロから構築できます。
「データがあるのに活かせない」という状況を防ぎ、商品開発やマーケティング施策に直結する運用を可能にします。
まとめ
本当に知りたい顧客行動データは、多くの場合パッケージシステムでは取得しきれません。商品が選ばれた理由・選ばれなかった理由・隠れた顧客属性などの重要な情報は、業務フローに合わせてログを精緻に設計できるオーダーメイド分析基盤だからこそ捉えられます。
企業間でデータを共有し価値を共創する時代において、自社独自の分析基盤を持つことは商品開発力と競争力を高める重要な基盤になります。
データを「ただ集める」から「意思決定の武器にする」へ。この転換を実現するには、企業ごとの業務フローや判断プロセスを深く理解し、それを反映したシステム基盤が欠かせません。
フレシット株式会社では、こうした“業務から逆算する設計思想”を起点に、既存パッケージでは再現できないオーダーメイドのデータ基盤を構築しています。購買ログの粒度設定、企業間データ共有、権限・匿名化設計といった複雑な要件にも柔軟に対応し、貴社だけの「動く資産」として長く使えるシステムをご提供します。
もし、自社のデータ活用に限界を感じている、既存システムでは抽出できない行動データを捉えたい、業務に寄り添ったログ設計をゼロから見直したい──そのような課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。貴社の意思決定を支える本質的なシステムづくりをご一緒いたします。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら