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COLUMN コラム詳細

トライアル×NECの流通データ連携に見る──「共通フォーマット」が生む全体最適、データ標準化から始まる本質的DX

バラバラなデータが「ひとつの言葉」で話し出す瞬間。

2025-11-20

企業間や部署間で扱うデータの形式がバラバラなままでは、どれほど高度なシステムを導入しても真のDXは実現できません。在庫情報がExcel、販売データがCSV、物流管理が別システム。こうした断片化された構造が、在庫過多や入力ミス、二重管理といった非効率を生み出しています。

トライアルホールディングスとNECが進める流通データの共有基盤づくりは、まさにこの課題を解決する試みといえます。

本コラムでは、「共通フォーマットによるデータ標準化」がなぜDXの出発点になるのか、そしてフルスクラッチ開発がどのように全体最適を実現するのかを解説します。

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【記事要約】トライアル×NEC、流通業DX40兆円のムダ削減へ──業界横断のデータ連携で最適化を加速

ディスカウント大手トライアルホールディングスはNECと協働し、流通各社が在庫・出荷・POSなどのデータを共有する新たな基盤づくりを進める。サントリーやスギHDなど60社超が参画し、異なる規格のデータを統一してサプライチェーン全体を可視化。AI分析により需要予測や発注量を最適化し、欠品や過剰在庫などの非効率を削減する。個社単位から業界全体の最適化を図る「横割りDX」により、流通業界の構造的なムダ・ムラ・ムリの是正を目指す。NECは複数企業に共通基盤を提供する新事業モデルへの転換を進め、業界のDX推進を支える。

出典:日本経済新聞「〈ビジネスTODAY〉トライアル、60社とムダ削減流通データ共有、NECと組む サントリーなど参画」2025年11月1日付朝刊

ポイントをひとことで

DXを成功に導くうえで最も軽視されがちなのが「データ構造の統一」です。多くの企業が個別最適のシステムを積み上げた結果、データが分断され、全体像を把握できなくなっています。共通フォーマットの設計は、単なる形式合わせではなく、業務プロセスそのものを再定義する行為です。ここを曖昧にしたままDXを進めても、現場での判断スピードは上がりません。データを“共通言語”に整えることこそが、全体最適と持続的な経営判断を支える本質的なDXの第一歩です。

データが共通言語になっていない現場

多くの企業でDXが進まない背景には、「データが共有できない」という根本的な課題があります。
例えば、同じ商品を扱うメーカー・卸・小売の間で、在庫数量の単位や商品コード体系が異なれば、データを統合しても正確な分析はできません。結果として、余剰在庫が生まれたり、欠品が発生したりと、サプライチェーン全体の最適化を妨げます。

また、社内においても部門ごとに異なるシステムを使っているケースは少なくありません。販売管理、購買、物流、会計など、それぞれが独立して運用されており、同じ顧客や商品情報が重複登録されている状態です。これにより、担当者ごとの入力ミスや更新漏れが発生し、データの信頼性が損なわれていきます。

DXの第一歩は、こうした「バラバラな構造を整えること」から始まります。つまり、技術を導入する前に、データを共通の形式に整え、全体をつなげる“基礎設計”が必要なのです。

「共通フォーマット化」がもたらす全体最適

トライアルとNECが構築を進める流通データ連携の仕組みでは、メーカー・卸・小売それぞれが持つ販売・在庫・出荷データを共通フォーマットに統一し、同一基盤で管理する設計が採用されています。
この共通化によって、全体のデータ構造がそろい、ボトルネックの特定や在庫の最適化が容易になります。

共通フォーマット化の最大の効果は、“データの流れ”が見えることです。
異なるフォーマットを無理に突き合わせるのではなく、初めから一貫した構造で収集・保存することで、データ間の整合性が保たれ、分析や意思決定のスピードが格段に向上します。

また、業務の標準化も進みます。部署や取引先ごとに入力項目や表記ゆれを修正する手間がなくなり、情報伝達の正確性が増します。結果として、現場担当者がデータ整理に費やしていた時間を、より付加価値の高い業務に振り向けられるようになるのです。

データ標準化のカギは「業務構造の理解」にある

共通フォーマットを設計するうえで重要なのは、「形式をそろえること」だけに留まらないことです。
本質は、“業務そのものの構造”を理解したうえで、どのデータがどのプロセスで使われ、どのように活かされるかを整理することにあります。

たとえば、在庫管理システムでは「商品」「倉庫」「ロケーション」「入出庫履歴」など複数の要素が関係します。単にCSVのカラムを合わせるだけでは、現場の動きを反映できず、結果として無理のある設計になります。そこで求められるのが、現場業務を可視化し、それをデータ構造に正しく落とし込む“モデリング力”です。

フルスクラッチ開発は、まさにこの領域で真価を発揮します。
既製システムでは変更が難しいデータ構造を、業務に合わせて一から設計できるため、現場のリアルをそのままシステムに反映できます。結果として、標準化と柔軟性の両立が可能となり、属人化を防ぎながらも現場の創意工夫を活かせる設計が実現します。

フルスクラッチ開発がもたらす標準化の自由

「標準化」という言葉は、ともすると“自由がなくなる”印象を与えがちです。
しかし、フルスクラッチ開発ではその逆が起こります。

自社業務に最適化した標準を一度定義すれば、それを軸にAPI連携や新システムの追加が容易になり、将来的な拡張の自由度が高まります。
つまり、標準化とは制約ではなく「持続的な変化を支えるルールづくり」です。

たとえば、データ構造を共通化した在庫システムでは、将来的にAIによる需要予測やRPAによる自動発注といった高度な機能を組み込みやすくなります。
一度整えたデータ基盤が、後の成長戦略の土台として活きるのです。

一方で、パッケージやSaaS型サービスでは、他社と同じ形式に合わせる必要があるため、独自性を活かした標準化は困難です。
この点でも、フルスクラッチ開発は“自社に合わせた共通言語”を構築できる最も柔軟な手法といえます。

部署間・企業間をつなぐ「共通フォーマット」の効果

データ標準化の効果は、社内にとどまりません。
取引先やグループ企業など、外部との連携でも大きな価値を発揮します。

トライアルとNECの事例のように、共通のデータ構造をもつことで、複数企業間の在庫や出荷情報をリアルタイムに共有でき、需給の不均衡を防ぐことができます。
これにより、欠品による販売機会の損失や、過剰在庫によるコスト増を防ぎ、業界全体の効率化につながります。

企業単位の最適化ではなく、サプライチェーン全体を最適化する“全体最適”のアプローチこそが、本質的なDXの姿です。その基礎を支えるのが、共通フォーマットによるデータ標準化なのです。

「全体最適」はテクノロジーではなく設計から始まる

DXを進める企業の多くが陥る誤解があります。それは、「新しい技術を導入すればDXが実現する」という思い込みです。しかし、実際にはテクノロジーそのものよりも、その基盤となる設計思想のほうが重要です。

どれほど優れた分析ツールやAIを導入しても、データが整っていなければ正確な判断はできません。
DXの成果は、ツールの性能よりも、データの質と構造の一貫性に大きく左右されます。
だからこそ、まず取り組むべきは「共通フォーマットの設計」なのです。

システム開発会社にとっても、ここをどれだけ丁寧に設計できるかが、DXプロジェクトの成否を分けます。そして、業務の理解・データ構造の把握・拡張性の確保という3要素を兼ね備えた設計を行えるのは、フルスクラッチ開発の大きな強みです。

まとめ

DXの成功は、最新技術の導入よりも「基盤を整える力」にかかっています。
形式の違いをなくし、データを共通フォーマットで扱えるようにすることは、全体最適への第一歩です。共通化によって情報の流れがスムーズになり、判断のスピードと精度が高まります。そして、その土台を支えるのが、業務に合わせて柔軟に構築できるフルスクラッチ開発のアプローチです。

データを正しくつなぎ、企業の意思決定を支える仕組みを整えること。それが「見えるDX」から「動くDX」へと進化させるための、最も本質的な取り組みといえるでしょう。

フレシット株式会社では、企業ごとに異なる業務構造やデータの扱い方を丁寧に理解し、最適なデータ標準化を実現するフルスクラッチ開発を行っています。単にシステムを構築するのではなく、「共通フォーマットをどう設計すれば現場が動くか」を徹底的に考え抜くことが私たちの強みです。既存のツールやSaaSに合わせるのではなく、自社の業務に合った“唯一の標準”を築くことで、データが自然に連携し、判断が加速する仕組みを共に育てていきます。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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