Excel管理に限界を感じていませんか?脱Excelの方法を解説します。
2025-11-22

Microsoft社が提供している表計算ソフト「エクセル(Excel)」。その多彩な機能は、業種・職種を問わないさまざまなビジネスシーンにおいて活用され、効率化や利便性向上などに役立てられています。
しかしながら、長年に渡ってExcelを利用してきたものの、徐々に管理の煩雑化や運用の負担増に悩まされるようになり、昨今はいよいよ限界を感じているという方も多いのではないでしょうか。
そこでこのコラムでは、「Excelとは何か?」「スプレッドシートとの違いは?」といった基本的な疑問に答えながら、Excelでの管理が向いている業務や、Excel管理に限界を感じた場合の代替手段について解説しています。Excel管理から脱却するためのロードマップ、脱Excel管理に失敗する企業の共通点と回避策などにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
Excelとは?
Excelとは、Microsoft社が開発・提供している表計算ソフトです。基本的な機能となる表作成や数値計算を始め、データ管理・分析、グラフ作成、作業自動化などの豊富な機能を備えています。
関数を使用した複雑な計算や統計処理も可能なほか、プログラミング言語である「VBA(Visual Basic for Applications)」によって自由に機能を拡張できるため、業種や職種を問わず、世界中のあらゆるビジネスシーンで活用されています。
スプレッドシートとの違いとは?
Excelが基本的にパソコンやスマートフォンなどにインストールして使用する有償パッケージソフトの1つであるのに対し、スプレッドシートはWEBブラウザ上でインターネットを介して使用するクラウドベースの無償アプリケーションです。Google社によって提供されており、WEBブラウザとインターネット環境さえあれば手軽に活用できるため、登場以来、急速にユーザーを増やしてきました。
しかしながらスプレッドシートの基本機能において、Excelとの大きな違いはなく、双方で使用感が劇的に変わるようなこともありません。そのため、当コラム内にある「Excel」という記述を、「スプレッドシート」と読み替えていただいても問題はないでしょう。
Excelでの管理が向いている業務
Excelでの管理が向いている業務には、主に次のようなものがあります。
- 売上データ・在庫データなどの集計・分析
- 経費精算などの入出金管理
- 見積書・請求書など数値を多く扱う書類の作成・管理
- 月次収支管理や年間予算管理
- 顧客リスト管理やアンケート集計などのマーケティング業務
- スケジュール管理・進捗管理
基本的には、金額を始めとする数値データを正確に集計したり、関連データを連動させたりするのが得意といえます。表やグラフの作成機能を併せて有効活用することで、これらの業務の効率化や自動化を大幅に進められるでしょう。
また、前述したVBAによるプログラミングを駆使すれば、複雑な統計処理などのより高度な業務にも対応可能です。
なぜExcel管理には限界が訪れるのか?
Excelは多くの人にとって馴染みが深く、手軽に扱えるソフトウェアであるため、特定の業務に対して長期的に使い続けている企業が多く存在します。その中には、長年に渡るさまざまなデータをExcel内に蓄積しながら、データベースのように活用しているケースもあるでしょう。
しかしながら、本来は「表計算ソフト」の1つに過ぎず、膨大なデータを即座に処理するようなデータベースとして利用するには、仕様や性能の面で限界があります。
特に昨今は、激化するビジネス競争を勝ち抜くための「ビッグデータ活用」が声高に叫ばれ、多くの企業があらゆる業務で大容量かつ複雑なデータを取り扱う必要があります。そのような状況において、Excelによる管理のみではいずれ作業効率が大幅に低下し、業務が滞ってしまう(=限界が訪れる)可能性があるといえるでしょう。
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Excel管理でこんな状況に陥っていませんか?限界のサインとは
もはやExcelでの管理は限界ではないか?と思われるサインとして、主に次のような状況が挙げられます。
以下、それぞれについて解説します。
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部門毎に別管理されているなど、同じようなファイルが多数存在する
部門内の細かな要望に対応するため、これまで社内共通で使用していたエクセルファイルをコピーし、自部門向けに独自のカスタマイズを施して活用するケースは珍しくありません。
また、Excelは権限設定が難しいため、役職によってファイルを分けて管理している現場も見受けられます。
このような状況が全社的に進展すると、同じようなファイルが多数存在することになり、組織全体としての効率性は低下し、管理が煩雑になる可能性が高いでしょう。
バージョン管理が煩雑になっており、どれが最新版か分からない
1つのExcelファイルを複数人で共有していると、誰がどこを編集したのかという履歴を追いづらくなり、バージョン管理が煩雑になってしまうことがあります。不用意にコピーされたために、どのファイルが最新なのか分からなくなるというのもありがちな事態です。
また、共有サーバーのExcelファイルを、個人のPCにコピー・編集したもので上書きされた結果、別のメンバーが施した修正が元に戻ってしまう、いわゆる「先祖返り」を経験したことがある方も多いでしょう。
このような状況が常態化している場合、Excelでの管理が限界になっていると判断しても良いかもしれません。
タイムリーに情報が更新されず、リアルタイム性が損なわれている
Excelファイルの更新を失念したために、その内容が実態と乖離してしまっているというのはよく聞く話です。
また、基本的に複数人での同時編集が難しいExcelでは、他メンバーがファイルを開いている間は待たされることになり、作業が滞ってしまいます。その結果、タイムリーに内容が更新されず、リアルタイムな情報共有ができなくなってしまうことがあります。
こういった状況が業務に支障をきたしているようであれば、Excelでの管理を考え直した方が良いでしょう。
ファイルが重く、処理に時間がかかって効率が悪い
Excel内の情報が膨大になってくると、ファイルが重くなり、破損のリスクが高まります。また、開く際に時間がかかったり、操作や処理のスピードが遅くなったりすることがあり、効率が悪くなります。
Excelファイルの肥大化によって待機時間が増え、業務に支障が出ているようであれば、Excel管理の限界が訪れたと判断して良いでしょう。
関数やマクロのメンテナンスが追い付いていない
Excelに備えられているさまざまな関数やVBAを駆使したマクロは、統計処理などの高度な業務や複雑な作業を可能にする、大変便利な機能です。しかしながら、自由自在に使いこなすには相応の知識が必要となり、対応できるメンバーが不足している企業も少なくありません。
その結果、関数やマクロのメンテナンスが業務要件の変更に追い付いていないようであれば、いずれExcelを使わなくなる日が訪れるのは間違いないでしょう。
Excel管理の代替手段を要望別に紹介
Excel管理に限界を感じている方に向け、代替手段として活用できるツールを要望別に紹介します。今回ピックアップしたものは次の通りです。以下、それぞれについて詳しく解説します。
データベースとして活用したい
Notion
Notionは、データベース管理を始め、プロジェクト管理・タスク管理なども可能なオールインワンツールです。ブロック形式のインターフェースによって直感的に操作できる上、テンプレート機能の活用で定型作業の大幅な効率化が図れます。さらに、Excelとの連携もできるため、移行もスムーズに行えるのではないでしょうか。
1メンバー当たり月額1,650円~(フリープランあり)
Airtable
Airtableは、RDB(リレーショナルデータベース)の機能性とスプレッドシートの利便性を兼ね備えたデータベース管理ツールです。CRM(顧客関係管理)やプロジェクト管理など、用途に合わせたさまざまなテーブルを作成の上、それらを直感的にリンクできるため、業務効率の大幅な向上が見込めます。
1シート当たり月額20ドル~(フリープランあり)
PigeonCloud
PigeonCloudは、クラウド型のWEBデータベースツールです。企業内のさまざまな情報を手軽にデータベース化できる上、大量のデータ管理にも対応しています。顧客情報を始め、商談状況、従業員の勤怠、日報など、あらゆるデータの一元管理が可能です。クラウドベースのため、PCだけでなくスマートフォンやタブレットなど、デバイスを選ばずに利用できるのも便利です。
1ユーザー当たり月額1,100円~(最小ユーザー数 5~)
業務ツールを自由に作りたい
kintone
kintoneは、専門的な知識や技術力を必要とせず、業務アプリをノーコードで自由に作成できるクラウドツールです。ドラッグ&ドロップを中心とした直感的な操作で、業務の効率化や自動化を図るアプリを実現できます。さらに、JavaScriptなどのプログラミング言語を使用して、より複雑な業務要件を実装することも可能です。
1ユーザー当たり月額1,000円~(最小ユーザー数 10~)
なお、kintoneの利用には失敗例もございますので、詳細は以下記事をご確認ください。
>>kintoneをやめた理由とその後の選択肢について解説
AppSheet
AppSheetは、ノーコードでの業務アプリ構築が可能な開発プラットフォームです。プログラミングの知識がなくても、マウス操作のみの直感的なユーザーインターフェースでデスクトップアプリやモバイルアプリを作成できます。Excelやスプレッドシートなどの既存データとも連携できるため、移行もスムーズに進められるでしょう。
https://about.appsheet.com/home
1ユーザー当たり月額5ドル~(無料での試用が可能)
bubble
bubbleは、WEBやモバイル向けの業務アプリをノーコードで作成できる開発プラットフォームです。プログラミングを必要とせず、ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、スピーディにアプリケーションを構築できます。ほかのツールと比べて細かな機能が豊富なゆえに初心者向けとはいえませんが、その分、詳細な仕様まで作り込むことが可能です。
月額59ドル~(フリープランあり)
CRMとして利用したい
Sansan
Sansanは、顧客との接点情報を一元管理できるCRM(Customer Relationship Management)です。名刺を基にした企業データを始め、メールのやり取り、商談履歴など、顧客と良好な関係を保つために不可欠な情報が可視化されるため、営業のチャンスを逃さず、効率的に売り上げの拡大とコストの削減が実現できます。
料金は要問い合わせ(無料デモの提供あり)
IT資産を管理したい
JOSYS
JOSYSは、組織内で利用されているITデバイスやSaaS(Software as a Service)の状況を可視化し、ガバナンスの強化と最適な運用を実現できる業務支援ツールです。ログの監視によってユーザーのアクティビティを分析し、シャドーIT(組織が許可していない機器やサービスの無断利用)を発見したり、300以上のSaaSアプリと連携しながら使用状況をモニタリングすることで、コストを最適化したりすることが可能となります。
料金は要問い合わせ(無料のデモ体験と資料ダウンロードの提供あり)
脱Excel管理に失敗する企業の共通点と回避策
脱Excel管理に失敗する企業には、準備不足のまま、半ば無理やり新しいツールへの移行を進めようとするといった共通点があるようです。具体的には、主に次のような状況が見受けられます。
- 組織内におけるすべてのExcel管理を一気に移行しようとする
- 定型作業や業務フローの変化に抵抗がある従業員の理解を得ていない
- 移行のロードマップや新しいツールの活用イメージが十分に確立できていない
つまり、これらを回避しながら慎重に移行を進めることが、脱Excel管理を成功させる鍵といえます。したがって、主に次のようなポイントを意識しながら新しいツールへの移行を実施することが重要です。
- まずは一部の業務のみを対象とするなど、段階的に移行を進める
- Excel管理をやめる理由や新しいツールに移行するメリットを十分に説明し、従業員の不安を払拭しながら理解を得る
- 移行のプロセスや必要となるコストを明確にした上、移行後の現場負担や費用対効果についてシミュレーションしておく
脱Excel管理には自社システム開発という手段もある
サードパーティが提供するパッケージシステムや既存のツールを利用せず、脱Excelのために自社システムをゼロから開発するという手段には、業務に合わせて詳細までカスタマイズできるという大きなメリットがあります。つまり、自社に完全マッチしたシステムによって、従業員の大幅な負荷軽減を始め、活用の効果を最大化することが可能です。
一方で、開発規模によって幅があるものの、一般的には数百万円から数千万円のコストがかかる上、数か月から1年以上の期間を要するというデメリットもあります。本コラムで紹介したような代替手段(各種ツール)の導入も視野に入れながら、業務要件や費用対効果などを総合的に考慮して検討することが重要です。
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Excel管理から脱却するためのロードマップ
Excel管理からの脱却を成功させるには、次のようなロードマップを描いた上で、1つ1つのステップを慎重に進めていくことが大切です。
- 現状を把握し、課題を整理する 脱Excel管理の第一歩として、対象業務を特定し、課題を整理します。
- 目標を設定し、要件を定義する 課題が整理できたら、脱Excel管理によって達成したい目標を設定し、そのための要件を定義します。要件定義が失敗する原因については以下コラムをご覧ください。
>>要件定義が失敗する原因は?6つの失敗事例から学ぶ対策を解説 - 代替手段を比較検討し、選定する 要件が定義できたら、それを実現するための代替手段を選定します。各種ツールや自社開発など、あらゆる可能性を比較検討することが重要です。
- 従業員の理解を得て、スモールスタートする 代替手段が決定したら、脱Excel管理を進める理由や代替手段のメリットについて従業員からの理解を得た上で、一気に移行するのではなくスモールスタートを実施します。
- 定着化を図りながら、効果測定と改善を繰り返す 従業員への教育、運用ルールの整備などを進めて定着を促進させながら、効果測定とその結果を基にした改善を繰り返します。
まとめ
数値計算やグラフ作成を始め、関数やマクロを利用したデータ管理・分析などの豊富な機能を備えたExcelは、あらゆる業界で長年利用されてきた大変便利なツールです。効果的に活用することで、従業員の負担を減らし、業務の効率化や自動化をスムーズに実現できます。ただし、限界を感じた際には、各種ツールを始めとした代替手段への移行を早めに進めることが大切です。
また、Excelでの管理に限らず、社内の仕組みやルール、利用しているシステムなどの職場環境は、組織の規模拡大や業務の発展に合わせて変化させる必要があります。企業間のビジネス競争が日々激しさを増している昨今は特に、変化を恐れず積極的に挑戦する姿勢が重要といえるでしょう。
さいごに
Excel(スプレッドシート)管理の限界を感じながらも、「どこから手を付ければ良いか分からない」「ツールが多すぎて選べない」というご相談を、当社には多くいただきます。重要なのは、特定のツールを“導入すること”ではなく、「自社の業務にとって本当に必要な管理の姿」を言語化し、その姿に最適な仕組みを段階的に整えていくことです。
当社フレシット株式会社は、Excelで積み上げてきた業務ノウハウを丁寧に棚卸ししながら、フルスクラッチ(オーダーメイド)の業務システムとして再構築することを得意としています。まずは「どのExcelを残し、どこから脱却するか」という整理から始め、プロトタイプによる検証、小さく始めて広げていく段階的な移行など、現場負担を抑えた進め方をご提案します。
汎用ツールでは埋もれてしまう自社ならではのルールや判断基準を、システムという“動く仕組み”に落とし込むことで、属人化の解消やミス削減、リアルタイムなデータ活用が可能になります。Excel管理の限界を感じているものの、一歩目を踏み出すことに迷っているのであれば、まずはお気軽に当社へご相談ください。御社の業務と成長戦略にフィットした「脱Excel」のロードマップづくりから、伴走させていただきます。
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監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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