システム開発における「一貫性の原則」とは?使いやすい業務システムを実現するための設計思想
業務プロセスに寄り添う、統一されたUI/UX設計の重要性
2025-11-24

業務システムを開発する際、「機能の多さ」や「最新技術を使うかどうか」が注目されがちですが、実際の現場で最も成果に直結するのは“使いやすさ”です。そして、その使いやすさを大きく左右するのがデザインの「一貫性の原則」です。
入力画面や一覧画面、ワークフロー、通知設定など、システム上のあらゆる操作がバラバラだと、ユーザーは学習コストや操作ミスに苦しみます。一方で、一貫したデザインは“考えなくても操作できる”状態を生み、結果として業務効率の最大化につながります。
本コラムでは、業務システム開発における「一貫性の原則」の重要性と、その原則を満たすためのフルスクラッチ開発の価値を解説します。
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目次
デザインの「一貫性の原則」とは何か
デザインにおける「一貫性の原則」とは、色・レイアウト・フォント・アイコン・操作パターンなど、ユーザーが触れる要素を統一して設計することで、使いやすさと理解しやすさを高める考え方です。要素がバラバラだと、ユーザーは毎回「これは何を意味する?」「どう操作すればよい?」と認知負荷が増え、迷いやストレスにつながります。逆に、一貫したデザインは「見れば分かる」状態を作り、操作の予測も容易になります。また、ブランドイメージやプロダクトの信頼性向上にも寄与します。UI/UX設計では、スタイルガイドやデザインシステムを用いて一貫性を保つことが重要です。
ポイントをひとことで
業務システムにおける「一貫性の原則」は、単なるデザイン上の統一ではなく、業務プロセスそのものを理解した上で初めて成立します。画面遷移・入力ルール・ボタン位置などが統一されていないと、ユーザーは毎回判断を強いられ、ミスやストレスが蓄積します。一方、一貫した設計は“覚えなくても正しく使える”状態をつくり、業務全体のスループットを劇的に向上させます。フルスクラッチ開発の価値は、この一貫性を企業固有の業務に合わせて実装できる点にあり、既製品では得られない実務的な使いやすさを実現できることにあります。
一貫性の原則とは何か
デザインの「一貫性の原則」とは、画面構造・色・フォント・アイコン・操作性・情報の並び順などを統一し、利用者が迷わず操作できる状態をつくる考え方です。業務システムでは、ユーザーが日常的に扱うデータや機能量が膨大になるため、画面ごとにルールが異なると混乱や負荷が蓄積し、結果として作業スピードが落ちてしまいます。
一貫性はデザインの美しさを高めるためだけではなく、「利用する人の頭の中に共通のルールを形成する」ことが最大の目的です。つまり、ある画面で操作方法を覚えれば、他の画面でも応用できる状態をつくることが重要です。
なぜ一貫性が欠けたシステムは使いづらくなるのか
一貫性が欠けたシステムは、ユーザーに“毎回考える”状態を強制します。
例えば次のような経験はないでしょうか。
- 画面によって「保存ボタン」の位置が違う
- 入力フォームの必須項目の表現が画面ごとに異なる
- 一覧画面の並び順が統一されていない
- メニュー階層の構造が揺れている
- 同じ機能なのに、アイコンの形がページによって変わる
これらはすべて認知負荷を増大させ、ユーザー体験を損なう原因になります。特に業務システムは毎日利用されるため、「1回の小さなストレス」が累積し、生産性や組織全体の集中力に影響を与えます。
業務プロセスを正しく理解しないと一貫性は生まれない
一貫性のあるデザインは、見た目の統一だけではつくれません。
重要なのは「業務の流れを正しく理解したうえで、ユーザーがどう動くか」を設計に落とし込むことです。
- 現場がどの順序で作業しているのか
- どの項目を優先して確認するのか
- エラーを起こしやすいのはどのポイントか
- 誰がどの画面を使い、どのように引き継がれるのか
これらの情報を統合し、「現場の行動原則」を軸にデザインルールを構築することで、初めて真の一貫性が生まれます。業務理解が浅い状態でシステムを設計すると、「画面単位では正しいが、全体としてバラバラ」という状態になりがちです。
一貫性は“ストレスを減らし、スピードを上げる”
一貫したデザインはユーザーに二つのメリットをもたらします。
- 迷わない
「この位置にあるはず」「この色はこういう意味」と瞬間的に判断でき、操作ミスが減ります。 - 考える時間が減る
判断に迷いがなくなるため、作業の速度が上がります。
特に、毎日数十回以上行うルーティン業務では、操作効率の差が累積し大きな生産性の差となって表れます。
また、従業員が異動したり、新人教育を行ったりする場面でも、一貫したシステムは“学習コストの低さ”という圧倒的な利点を発揮します。
SaaS・パッケージでは一貫性を保てない場合がある
よくある悩みとして、「SaaSを導入したが運用に合わせきれず、画面構成がちぐはぐになる」というケースがあります。
SaaSは一般的な業務フローを前提に設計されているため、自社固有のプロセスや例外処理への対応が限定的です。結果として、
- フローが分断される
- 別のツールで補う必要が出る
- 入力の重複や画面遷移の複雑化が発生する
といった問題が起こりやすくなります。
どれだけUIが整っていても、業務全体で一貫性を保てなければ“使いにくいシステム”となってしまいます。
一貫性を担保するためのフルスクラッチ開発という選択肢
フルスクラッチ開発では、現場の業務構造を正確に把握し、必要な画面・必要な順序・必要な操作性をゼロから設計できます。
そのため、一貫性を保つための「デザインルール」「情報構造」「操作パターン」を自由に定義でき、自社の業務に最適化されたシステムを実現できます。
具体的には以下のような効果があります。
- 画面遷移・権限構造・データの流れをすべて自社に合わせられる
- アイコン・色・文字サイズのトーン&マナーを統一できる
- 自社の業務プロセスに沿った“迷わないUX”が構築できる
- 将来の機能追加を見越したデザインシステムを整備できる
現場が「使いやすい」と感じるシステムは、業務理解×一貫性×UIデザインの結合で生まれます。フルスクラッチ開発は、そのための最も有効な手段です。
>>フルスクラッチのシステム開発は時代遅れではない!その理由と向いている企業の特徴について解説
一貫性を維持するためのデザインシステムの重要性
システム開発後も一貫性を守るためには、デザインシステムの存在が欠かせません。
デザインシステムとは、色・余白・フォント・コンポーネント・動作ルールなどを体系化した“設計の辞書”のようなものです。
- 保存ボタンは右下
- 必須項目は赤いラベルで表示
- 検索フォームの並び順は統一
- モーダルのサイズや表示ルールを統一
- 一覧画面の並び順やフィルター仕様を共通化
このようなルールを定義し、開発者全員が同じ基準で画面をつくることで、システム全体の品質を安定させることができます。
フルスクラッチ開発では、これらを企業ごとに設計していくため、長期的な運用負荷の削減にもつながります。
一貫性は「現場の心理的安全性」を高める
意外に見落とされがちですが、一貫性は現場の心理的安全性にも関わります。
画面ごとに操作方法が変わるシステムは、ユーザーに常に不安を与え、「間違えたらどうしよう」というストレスを生み続けます。
一方、一貫性があるシステムは「どこを触っても大丈夫」「間違えにくい」という安心感が生まれ、業務の集中度が高まります。ユーザー体験の良さは、業務効率だけでなく“職場の空気”にも影響を与える重要な要素です。
まとめ
デザインの「一貫性の原則」は、業務システムの使いやすさを左右する基盤となる考え方です。
一貫性が欠けたシステムは認知負荷を高め、生産性を低下させます。一方、業務理解に基づいた一貫したシステムは、迷いを最小化し、操作スピードを向上させ、組織全体の業務効率を底上げします。
そのためには、単なる画面設計に留まらず、業務プロセスの深い理解と、デザインルールの体系化が欠かせません。フルスクラッチ開発は、その一貫性を企業ごとに最適化し、将来的な拡張にも耐えうるシステム基盤を整える有力な手段です。
一貫性のあるシステムは、単に“見やすい”だけではなく、現場の業務精度やスピード、そして組織全体の生産性に直結します。だからこそ、見た目だけでなく業務そのものを理解し、デザインと操作性を“業務の流れそのもの”として設計できる開発体制が求められます。
当社フレシット株式会社では、表面的なUIづくりではなく、丁寧なヒアリングと業務分析を通じて、企業ごとの“暗黙のルール”や“現場特有の動き”まで正確に把握し、そこから一貫性のあるデザインと操作性を構築しています。さらに、将来の拡張や改善にも強い独自のデザインシステムを整備し、成長に寄り添うシステム基盤をゼロから設計します。 もし「現場が迷わず使えるシステムをつくりたい」「自社の業務に最適化された一貫性のある仕組みを整えたい」とお考えでしたら、ぜひフレシットにご相談ください。現場が本当に使いやすいシステムを、企業ごとに最適化されたフルスクラッチでご提供いたします。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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