まず“現状を正しく見る”ことから始める、問題解決の第一歩としてのデータ統合の重要性
データ基盤の整備が、的確な課題把握と改革の起点になる理由
2025-11-26

韓国政府が若者のニート問題に対し、個人データを統合したデータベースを構築し、対象者を特定したうえでアウトリーチ型の支援につなげる取り組みを始めました。この事例は、「解決策を考える前に、まず現状を正確に把握する」ことの重要性を示す象徴的な動きです。
多くの企業でも、業務の非効率や属人化、データ散在といった課題が生じているものの、正確な現状分析ができていないため、本質的な改善が進まないケースが少なくありません。
本コラムでは、韓国政府の取り組みを手がかりに、企業が問題解決に取り組む際にまず着手すべき「データベース化」の本質と、その実現に必要な視点について解説します。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
目次
【記事要約】韓国政府、データベース化で若者ニートを特定し「就労の第一歩」を後押しする支援を開始
韓国では高学歴層を中心に職探しや就学をしない若者が増加し、ニート率は過去最高の5.2%に達した。深刻化する労働離れに対応するため、政府は初めて若者をデータベース化し、就労の「第一歩」を促すアウトリーチ型支援を開始する。個人情報の活用に同意した若者の金融取引記録、学歴、軍務情報、雇用保険情報などをAIで分析し、ニート状態の可能性が高い人を特定。メール等で連絡し、個別最適化した支援プログラムにつなぐ仕組みだ。政府は仮想会社での職業疑似体験や相談体制も整備し、長期離職による社会復帰の困難化を防ぐことを狙う。
出典:日本経済新聞「韓国、増える高学歴ニート若者の5%、経済損失5兆円 政府が個人特定し積極支援」2025年10月22日付朝刊
ポイントをひとことで
韓国政府の事例は、「課題の本質はシステムを入れ替える前に“データ構造の乱れ”にある」という、企業でも頻繁に起きる問題を象徴的に示しています。多くの組織では、部門ごとにデータが散在し、定義も粒度もバラバラなため、改善の判断材料が揃いません。この状態では、どれだけ表面的にDXを進めても成果は出ません。本コラムが示す通り、問題解決の起点は“現状を正しく見るためのデータ基盤作り”です。まず情報を統合し、可視化し、共通の理解を持つことこそ、企業変革の最初の関門だといえるでしょう。
問題解決は“現状を把握すること”から始まる
韓国政府の若者支援のポイントは、いきなり支援プログラムを拡充したわけではないという点です。まず、若者の金融記録、就学歴、軍務記録、雇用保険情報などを統合したデータベースを整備し、誰が支援を必要としているのかを明確にしました。
つまり、支援策の設計に着手する前に、現状を正しく理解するための基盤づくりに力を注いだということです。
このアプローチは、企業の業務改善にもそのまま当てはまります。例えば「現場の作業時間が長い」「ミスが減らない」「顧客対応が属人的」といった課題があったとしても、そもそも何が起きているのか、どのプロセスに負荷がかかっているのか、どのようなデータが不足しているのかを正確に把握できていなければ、対策は的外れになってしまいます。
データが揃っていない状態で改革を進めることは、地図のない状態で目的地に進もうとするようなものです。
点在する情報を集め、全体像を可視化する重要性
韓国政府が行ったデータベース化は、単にデータを集めただけではありません。別々の省庁が保有する情報を横断的に統合し、AIを使った分析を可能にした点が重要です。金融機関・教育省・国防省・雇用労働省といった複数の機関のデータが連携されることで、若者の状況を立体的に把握できるようになりました。
企業でも同様に、部署ごとに管理しているデータがバラバラなケースは珍しくありません。
・営業部門は顧客データをExcelで管理
・現場部門はシフトや作業記録を紙や別システムで管理
・バックオフィスは会計ソフトに情報を入力
このように情報が散在していると、業務全体の実態を把握することが難しく、改善ポイントも見えにくくなります。韓国政府の事例は、「情報が散らばったままでは、正しい課題認識はできない」ということを示す象徴的な例といえるでしょう。
データの「統合」と「定義」をそろえることが問題解決の出発点
データベース化の本質は、単にデータをまとめることではありません。
最も重要なのは「データの定義をそろえること」です。
企業でも、たとえば「顧客名」ひとつとっても、
・営業部では会社名+担当者名
・経理部では請求先名
・サポート部では問い合わせ者の氏名
と表記がバラバラなことがあります。
定義が揃っていなければ、データをどれだけ集めても比較や分析はできません。
韓国政府の事例でも、住民登録番号をキーとしてデータを統合したことで、各機関の情報が一貫性をもって結合できる体制を整えました。
企業の場合は、顧客ID、案件ID、商品IDなど、業務に応じた“統一された軸”を定義することが必要です。
このように、データベース化とは単なる情報集約ではなく「システムとして扱いやすい形に整え、分析可能な状態にすること」が本質だといえます。
データに基づく意思決定が“誤った対策”を防ぐ
現状を正しく把握することができれば、次に行うべき施策の精度は格段に高まります。
韓国政府がアウトリーチ型支援に踏み切ったのも、データ分析によって「支援が必要なのに行政とつながれていない若者」を発見できたからです。
企業でも、データに基づく分析を行うことで次のような判断が可能になります。
・どの作業が最も時間を圧迫しているのか
・どの顧客層の離脱が多いのか
・どの工程でミスが多いのか
・どの部署が負荷を抱えているのか
感覚や経験則だけで対策を打つと、解決すべき課題を取り違えるリスクがあります。
データに基づく現状把握は、正確な課題設定につながり、無駄な投資や改善活動を避けることができます。
フルスクラッチ開発が「現状把握のための基盤」を作る
データベース化の取り組みは、市販のパッケージでは対応できないケースが多くあります。
なぜなら、企業ごとにデータの構造、管理ルール、業務プロセスが異なるため、パッケージソフトでは柔軟な統合が難しいからです。
そこで重要となるのが、フルスクラッチ(オーダーメイド)によるシステム構築です。
・散在する情報を統合するデータ基盤
・部署ごとに異なる粒度のデータを整理する仕組み
・自社の業務に合わせたデータ定義の統一
・既存システムとの柔軟な連携
といった要素は、フルスクラッチならではの強みで対応できます。
韓国政府が多数の省庁データを統合したように、企業でも複数部署の情報をひとつの仕組みにまとめることで、現状把握の精度が飛躍的に高まります。
これは表面的なDXではなく、根本的な業務改革につながる考え方です。
【関連記事】
フルスクラッチのシステム開発は時代遅れではない!その理由と向いている企業の特徴について解説
まとめ
韓国政府の若者支援は、「問題解決の第一歩は現状を正しく把握すること」という普遍的な教訓を示しています。
どれほど高度な施策を導入しても、解決すべき課題が誤っていれば効果は出ません。
そのためには、まず情報をデータベース化し、全体像を可視化することが欠かせません。
企業においても、点在したデータを統合し、正確な現状を把握できる基盤を整えることが、本質的な業務改善につながります。
この「データから始める問題解決」の視点は、業務改革やシステム刷新を成功させるための重要な出発点となります。
企業が本質的な課題を把握し、改善の“第一歩”を踏み出すためには、自社の実態に合ったデータ構造と、それを正確に扱えるシステム基盤が欠かせません。しかし、多くの企業では既存のパッケージや寄せ集めのシステムでは対応しきれず、「本当に知りたい情報が取れない」「部署ごとのデータ粒度が揃わない」といった壁に直面します。
フレシット株式会社では、こうした課題を抱える企業に対して、業務の特性や既存フローを丁寧に読み解いたうえで、ゼロから最適なデータ構造と業務システムを設計します。点在する情報の統合、既存システムとの柔軟な連携、現場の判断に直結する可視化まで、すべてをオーダーメイドで構築できることが私たちの強みです。 「まずデータから整えたい」「属人化を解消し、現状を正しく把握できる仕組みをつくりたい」とお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。貴社の業務課題に本当に向き合い、長く使える“自社仕様”のシステムづくりをご支援いたします。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら