システム・リプレースに伴うデータ移行の完全ガイド──失敗を防ぎ、理想の業務システムを実現するために押さえるべきポイント

システム・リプレースを成功させるうえで、最も重要でありながら見落とされがちな工程が「データ移行」です。移行が滞れば新システムは機能しても業務は動かず、逆に、データ移行を丁寧に設計できれば、新システムの価値を最大限に引き出せます。

本コラムでは、データ移行の基本から、プロジェクトが失敗しやすいポイント、押さえるべき設計の考え方までを実務的に解説します。これからシステム・リプレースを検討しているご担当者さまに向けて、安心してプロジェクトを進めるための視点を整理していきます。

＞＞フルスクラッチ（オーダーメイド）のシステム開発について詳細はこちら

【関連記事】
システムリプレイスの進め方とは？流れや失敗しないためのポイントなどを解説

システム・リプレースで避けて通れない「データ移行」の要点とは

システム・リプレースにおけるデータ移行は、旧システムから新システムへ必要な情報を正確かつ安全に移す重要工程です。単にデータを“入れ替える”だけでなく、形式の違いによる変換、重複や欠損の整理、コード体系の統一など、事前のデータクレンジング(「データの清掃」「データの整備」)が欠かせません。また、移行後の運用に支障が出ないよう、本番移行前にはテスト移行で不整合を確認し、移行手順やリカバリ計画も整備します。データ移行はシステム刷新の成否を左右するため、早期の計画策定と業務側との連携が不可欠です。

データ移行はシステム・リプレース成功の“要”

システム・リプレースでは、画面や機能だけでなく「データの移し替え」が不可欠です。
しかし、データ移行は単純なコピー作業ではありません。旧システムのデータは長年の運用で不整合や重複が発生し、新システムの項目と構造が一致しないケースも多くあります。
そのため、データ移行には次のような複数の工程が存在します。

・データの棚卸し
・形式変換のルール設計
・不要データの除去（クレンジング）
・コード体系の統一
・移行テスト
・本番移行と検証

これらを適切に進めることができれば、新システムはスムーズに稼働し、業務の負荷を最小限に抑えることができます。

【関連記事】
システム移行・更改の失敗事例とその対策を徹底解説

データ棚卸しで“現状の歪み”を可視化する

多くのシステム刷新プロジェクトで最初に直面するのが、旧システムのデータ構造が整理されていないことです。
マスタが未整備、無意味なコードが残っている、担当者独自の運用ルールが浸透してしまっているといった状態では、新システムにフィットさせることが困難になります。

そこで必要なのが「データ棚卸し」です。
棚卸しでは、次の観点からデータを精査します。

・重複している情報はないか
・使われていないデータが残っていないか
・入力ルールが統一されているか
・コード体系は妥当か
・データ間の整合性は保たれているか

棚卸しを通じて業務フローの矛盾や非効率も浮き彫りになるため、業務改善のヒントが見つかることも多い工程です。

クレンジングと変換ルール設計が“品質”を決める

棚卸しで現状を把握したら、次に必要なのが「クレンジング」と「変換ルールの設計」です。
例えば旧システムでは「顧客区分」が数値で管理されていたのに、新システムではテキスト管理である場合、変換規則を決めなければ整合性が取れません。

・表記ゆれを統一する
・不要データを削除する
・新システムに合わせて項目を再構築する
・コードを新体系にマッピングする

これらを曖昧にしたまま移行を行ってしまうと、新システムで検索ができない、分析精度が落ちる、データ連携が機能しないなど、さまざまな問題が発生します。
データは一度移行すると後戻りが難しいため、クレンジングと変換ルール設計は慎重に行う必要があります。

移行テストで“業務が止まらない状態”をつくる

本番移行前には必ずテスト移行を実施します。
テスト移行では、以下を確認します。

・データ量が多くても問題なく移行できるか
・変換ルールが正しく適用されているか
・実際の業務シナリオで問題がないか
・移行後の業務に支障が出ないか

特に重要なのは「業務シナリオでの確認」です。
テスト移行が成功しても、実際の運用フローで異常が発生するケースは珍しくありません。
例えば、変更前のコード体系に依存したExcelが現場で運用されている場合、移行後に参照が崩れる可能性があります。
そのため、システム開発会社だけでなく、現場の担当者も関わる総合的な確認が欠かせません。

データ移行で起きがちなトラブルとその背景

データ移行はシステム・リプレース全体のリスクを左右します。
典型的なトラブルとして、次のようなものがあります。

・移行したデータの整合性が取れていない
・旧システムの仕様がブラックボックス化している
・隠れたExcel運用がデータと矛盾している
・移行後の動作が遅い、エラーが発生する
・移行スケジュールが過密で検証不足になる

背景には、旧システムの理解不足や業務フローとの不一致、ドキュメントの欠如などがあります。
トラブルを避けるには「データ移行はシステム刷新の中核工程である」という認識を全員が共有することが重要です。

【関連記事】
なぜシステム更改は失敗するのか？後悔しない発注先の選び方も徹底解説

フルスクラッチ開発の強みは“データ移行の柔軟性”

パッケージシステムでは、データ構造や項目が固定されており、旧システムのデータとのギャップが大きい場合、移行が複雑になります。
一方、フルスクラッチ開発では、旧システムのデータ構造・業務フローに合わせて新システムを設計できるため、以下の利点があります。

・移行ルールを柔軟に設計できる
・現場の運用に合わせてデータモデルを最適化できる
・無理なデータ変換を避けられる
・移行後の拡張性を確保できる

特に、長期間運用されたシステムや独自運用が積み重なっているケースでは、フルスクラッチのほうが移行のリスクを大幅に抑えることができます。

【関連記事】
パッケージ開発とスクラッチ開発の違いとは？それぞれの特徴と適切な選び方について解説

システム開発会社と業務側の“二人三脚”が欠かせない

データ移行はシステム開発会社だけで完結する作業ではなく、現場の知識が不可欠です。
システムに登録されている情報の意味や入力ルールを最も理解しているのは業務側の担当者であり、解釈のずれが残ったまま移行してしまうと、新システムで誤ったデータが運用されてしまいます。

・業務フローの再整理
・データの意味のすり合わせ
・運用ルールの見直し
・移行後のチェック項目の策定

これらを、システム開発会社と業務側が協力して進めることで、品質の高いデータ移行が実現できます。

【関連記事】
システム開発に最適なパートナー選びの方法を徹底解説！

本番移行と移行後の安定化

本番移行は、プロジェクトの重要な山場です。
本番移行では、テスト移行で確立した手順をもとに、停止時間や負荷を考慮しながら慎重に作業を進めます。
移行後は、初期トラブルの早期発見と分析、データ修正、追加のクレンジングなどを通じて安定化を図ります。

データ移行は“システム刷新”と“業務刷新”の両方をもたらす

データ移行の工程は、単なる技術作業ではなく、自社の業務の歴史を整理し、未来の姿に合わせて再構築する機会でもあります。
データの質が向上すれば、将来的にシステム連携や分析基盤の構築などにも活かすことができます。
つまり、データ移行は業務全体のレベルアップにつながる投資です。

まとめ

データ移行はシステム・リプレースにおける最重要工程のひとつであり、移行の品質が新システムの価値を左右します。データ棚卸し、クレンジング、変換ルールの設計、移行テスト、本番移行といった一連の作業を丁寧に進めることで、トラブルを最小限に抑え、スムーズな移行が実現できます。

データ移行を技術的な作業だけでなく、業務をより良くする機会として捉え、適切な体制で取り組むことが重要です。 データ移行は、新しいシステムの価値を最大限に発揮させるための“土台づくり”です。その土台を強固にするには、業務理解と技術力の両方を兼ね備えたパートナーが不可欠です。

フレシット株式会社では、業務フローの可視化からデータモデルの再設計、移行ルール策定、本番移行の伴走まで、一連のプロセスを丁寧に並走しながら最適化します。既存データのクセや運用の背景を深く理解したうえで、新システムに合わせた最適な“移行設計”をゼロから組み立てられるのは、フルスクラッチ開発を専門とする当社ならではの強みです。業務に根差したシステムを実現したい、複雑なデータ構造を整理しながら刷新したいというご担当者さまは、ぜひ一度ご相談ください。

＞＞フルスクラッチ（オーダーメイド）のシステム開発について詳細はこちら