システム開発におけるプロトタイピングの重要性とは?フルスクラッチで成果を出す設計の考え方
「思っていたのと違う」をなくす、体験から始めるシステム設計
2025-12-15

システムを新たに構築しようと考えたとき、多くの事業会社が最初に悩むのが「完成形をどう定義すればよいのか」という点ではないでしょうか。要件定義書を作成し、仕様を固めたつもりでも、開発が進むにつれて「思っていたものと違う」「現場では使いづらい」といった問題が表面化するケースは少なくありません。こうしたズレを未然に防ぐ手法として重要なのが、デザインにおけるプロトタイピングです。
本コラムでは、プロトタイピングの本質と、フルスクラッチ開発においてなぜ欠かせないのかを、事業会社のご担当者さま向けに実務視点で解説します。
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目次
プロトタイピングとは何か――理解を深めるための実践的アプローチ
プロトタイピングとは、完成品を目指す開発行為ではなく、課題や仮説への理解を深めるために、試作品を素早く作り検証する取り組みです。簡易なツールや身近な素材を用い、短いサイクルで作っては試し、得られた気づきを次に活かします。重要なのは完成度の高さではなく、使う中で生じる違和感や誤解、失敗から学ぶことです。一つの形に固執せず、部分的な試作を重ねることで、問題の本質や有効な方向性が徐々に明らかになります。プロトタイピングは「正解を証明する」手段ではなく、「学習を加速させる」ための手段と言えるでしょう。
ポイントをひとことで
本コラムが示している本質は、プロトタイピングを「デザイン工程」ではなく「理解を深めるための設計行為」として捉えている点にあります。要件を文章で固め切るのではなく、体験として可視化することで、業務とシステムのズレを早期に発見できる。特にフルスクラッチ開発では、このプロセスが完成度を大きく左右します。プロトタイピングは失敗を減らすための保険ではなく、成功確率を高めるための戦略だと言えるでしょう。
プロトタイピングとは何か
プロトタイピングとは、完成したシステムを作ることを目的とするものではありません。仮の形を素早く作り、実際に触れ、使い、検証することで、課題や仮説への理解を深めていくプロセスです。画面遷移のラフ、操作感を確認する簡易的なUI、場合によっては紙やホワイトボードを使ったものもプロトタイプに含まれます。重要なのは「早く作ること」と「試すこと」であり、完成度の高さではありません。
なぜシステム開発でプロトタイピングが重要なのか
業務システムは、現場の業務フローや利用者の習慣と密接に結びついています。文章だけで要件を定義すると、解釈のズレが生まれやすく、システム開発会社と事業会社の間で認識の差が拡大します。プロトタイプを使えば、「この操作は多すぎる」「この情報はここに必要ない」といった感覚的な違和感を、早い段階で共有できます。結果として、後戻りのコストを大きく減らすことができます。
プロトタイプは完成形を決めるためのものではない
よくある誤解として、「プロトタイプを作ると、その形に縛られてしまうのではないか」という不安があります。しかし、本来のプロトタイピングは一つの答えに固めるためのものではありません。むしろ、試して壊し、捨てることを前提としています。複数の案を並行して試すことで、どの方向性が課題解決に近いのかを見極めていく行為です。一つのプロトタイプに執着することは、かえってリスクを高めます。
失敗や誤操作こそが価値になる
プロトタイピングの過程では、利用者が迷ったり、間違えたりする場面が多く発生します。これはネガティブなことではありません。むしろ、設計上の問題点を早期に発見できる貴重な機会です。実装後に発覚するよりも、仮の段階で気づける方が、時間的にもコスト的にも影響は小さく済みます。プロトタイピングは、失敗から学ぶための仕組みと言えます。
フルスクラッチ開発とプロトタイピングの相性
フルスクラッチ開発は、既製品では対応できない業務や独自性を実現できる一方で、設計の自由度が高い分、判断の難しさも伴います。そのため、最初から仕様を固め切るよりも、プロトタイピングを通じて段階的に理解を深める方が合理的です。業務理解、画面設計、操作性の確認を繰り返すことで、事業会社とシステム開発会社が同じ前提に立ちやすくなります。
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プロトタイピングを軽視すると起きやすい問題
プロトタイピングを省略すると、要件定義書や仕様書に過度な期待を寄せることになります。しかし、文章だけでは伝えきれない部分は必ず残ります。その結果、開発後半での仕様変更や追加要望が増え、スケジュールや予算に影響を及ぼします。こうしたトラブルの多くは、初期段階での理解不足が原因です。
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良いプロトタイピングを実現するために重要な視点
効果的なプロトタイピングには、業務理解と設計のバランスが欠かせません。単に画面を作るだけでなく、「なぜこの操作が必要なのか」「この情報は誰の判断に使われるのか」といった背景まで掘り下げる必要があります。このプロセスを丁寧に進めることで、システム全体の品質が大きく向上します。
まとめ
デザインにおけるプロトタイピングは、システム開発を成功に導くための重要な工程です。完成形を急ぐのではなく、仮の形を通じて理解を深め、ズレを減らしていく姿勢が、結果的に高品質なシステムにつながります。特にフルスクラッチ開発においては、プロトタイピングを軸にした進め方が、事業とシステムの一体化を実現する鍵となります。
ここまでお読みいただき、プロトタイピングが「見た目を決める工程」ではなく、「事業と業務を正しく理解し、失敗を減らすための設計プロセス」であることをご理解いただけたのではないでしょうか。
実際のシステム開発では、このプロトタイピングをどの深さで、どの粒度まで踏み込めるかによって、完成後の使いやすさや事業へのフィット感は大きく変わります。
フレシット株式会社では、表層的な画面デザインにとどまらず、業務フローや判断ポイント、将来的な拡張まで見据えたプロトタイピングを重視しています。Figmaなどのデザインツールを活用しながら、関係者全員が「触って理解できる」状態を早期に作り、曖昧な要望や暗黙知を一つひとつ言語化・構造化していきます。そのうえで、フルスクラッチだからこそ可能な柔軟な設計に落とし込み、既製品では実現できない業務最適化を形にしてきました。 「要件はあるが、最適な形がまだ見えていない」「失敗のリスクをできるだけ抑えてシステムを作りたい」とお考えの事業会社さまにとって、プロトタイピングを起点にした開発は有効な選択肢です。構想段階から伴走し、事業に本当にフィットするシステムを共に作り上げたいとお考えでしたら、ぜひ一度フレシット株式会社にご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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