なぜ現場は疲弊するのか?業務を人に押し付ける仕組みが生む2000億円損失の正体
その業務、本当に人がやる必要ありますか
2025-12-17

飲食店を中心に、無断キャンセルによる損失が深刻化しています。経済産業省によれば、その規模は年間約2000億円にも及ぶとされています。しかし、この問題の本質は「売上が失われること」だけではありません。現場で働く従業員が、本来担う必要のない業務や精神的負担を背負わされている点にこそ、見過ごされがちな課題があります。
本コラムでは、無断キャンセル対応を一例として、なぜ現場が疲弊するのか、そして業務を人に押し付けないためのシステム設計の考え方について掘り下げていきます。
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目次
【記事要約】無断キャンセル問題に挑むアコードX、自動請求で飲食店の負担を軽減
飲食店の無断キャンセルによる年間約2000億円の損失を背景に、スタートアップのアコードXはキャンセル料を自動請求するシステム「請求できるくん」を提供している。専用サイトに情報を入力するだけで、顧客に段階的な請求通知を送付でき、従業員が直接対応する必要はない。2024年6月の開始以降、導入店舗は約5000店に拡大し、回収率は平均5割超に達した。成功報酬型で中小店も導入しやすく、多言語対応や再来店促進策も備える。創業者の現場経験を基に開発され、今後は飲食以外への展開やデータ活用事業も視野に入れている。
出典:日本経済新聞「〈STARTUP X〉無断キャンセル、飲食店負担軽く アコードXが自動請求システム」2025年12月4日付朝刊
ポイントをひとことで
本コラムは、無断キャンセルという具体的事象を切り口に、現場疲弊の原因が個人の努力不足ではなく、業務構造そのものにあることを明確にしています。定型的で摩擦の生じやすい業務を人が担い続ける限り、精神的負担や属人化は避けられません。業務を分解し、人とシステムの役割を意識的に切り分けることが、持続的な改善とDXを進める上で不可欠であると示唆しています。
無断キャンセルは「一部のマナー違反」ではない
無断キャンセルは、しばしば「利用者のモラルの問題」として語られがちです。しかし、年間2000億円という損失規模を考えると、個人の意識だけで片付けられる問題ではありません。団体予約に備えて仕入れた食材が廃棄される、席が空いたまま回転率が落ちるなど、経営への影響は甚大です。
さらに深刻なのは、その後処理を現場の従業員が担っている点です。キャンセル料の請求や連絡、説明といった対応は、本来の接客や店舗運営とは性質が異なります。それにもかかわらず、「誰かがやらなければならない業務」として、現場に静かに積み上がってきました。
人がやるべきでない業務が現場に集まる理由
無断キャンセル対応に限らず、多くの現場では「本来人がやるべきではない業務」が放置されています。その理由の一つが、業務の切り分けが曖昧なまま運用が続いてきたことです。
例えば、キャンセル料の請求はルールに基づく定型業務です。感情や裁量を必要とする場面は少なく、事実確認と通知が中心になります。それでも、従来は電話での連絡が主流で、相手の反応を直接受け止めなければなりませんでした。罵声を浴びせられる、長時間の説明を求められるといった事例も珍しくなく、精神的負担が蓄積していきます。
このような業務が人に押し付けられる背景には、「仕組みで代替する」という発想が後回しにされてきた現実があります。
泣き寝入りが常態化する業務構造
業務負担が大きいにもかかわらず、キャンセル料の回収を諦める店舗が多いのも特徴です。請求にかかる手間やストレスを考えると、回収できる金額以上の負担を感じてしまうためです。
これは、業務が個人の努力や我慢に依存している状態とも言えます。特定の担当者が対応を引き受け、その人が疲弊すれば運用が止まる。結果として「泣き寝入り」が常態化し、損失が固定化されていきます。
この構造は、無断キャンセルに限らず、クレーム対応、督促業務、例外処理など、さまざまな現場業務に共通しています。
業務を「人」と「システム」で切り分ける視点
現場の疲弊を防ぐために重要なのが、業務を冷静に分解し、「人がやるべきこと」と「システムに任せるべきこと」を明確にする視点です。
人が担うべきなのは、判断や配慮、関係構築といった付加価値の高い業務です。一方で、ルールに基づく通知、記録、進捗管理などは、仕組み化することで安定的に運用できます。
無断キャンセル対応を例にすれば、請求の通知やリマインド、支払い状況の管理はシステムに任せ、人は例外的な判断が必要なケースにのみ関与する、という設計が考えられます。この切り分けができていない状態こそが、現場疲弊の根本原因と言えるでしょう。
仕組み化を前提に考える要件定義の重要性
業務を人から切り離すには、表面的なツール導入だけでは不十分です。重要なのは、業務全体を俯瞰し、どこに負担が集中しているのかを整理した上で要件を定義することです。
例えば、「キャンセルが発生した後、誰が、いつ、何をしているのか」「どの工程で感情的な摩擦が生まれているのか」といった点を丁寧に洗い出す必要があります。その上で、システムが肩代わりできる部分を設計に落とし込んでいきます。
このプロセスを省略すると、かえって現場の負担が増える仕組みになりかねません。業務を理解しないまま導入されたシステムが、入力作業や確認作業を増やしてしまうケースは少なくありません。
無断キャンセル問題が示すDXの本質
無断キャンセル問題は、単なる飲食業界の課題ではありません。人が対応し続けてきた業務を、どこまで仕組みに委ねるのかという、DXの本質的な問いを投げかけています。
業務を効率化することだけが目的ではなく、現場で働く人が不必要なストレスを抱えずに済む環境をつくること。そのためには、「人がやらなくていい業務」を見極め、構造から見直す視点が欠かせません。
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まとめ
現場の疲弊は、個々の努力不足や意識の問題ではなく、業務構造の問題として捉える必要があります。無断キャンセル対応に象徴されるように、本来人が担うべきでない業務が現場に押し付けられることで、精神的負担や泣き寝入りが生まれてきました。業務を分解し、システムに任せるべき部分を明確にすることが、持続可能な運営への第一歩となります。人と仕組みの役割を正しく切り分ける視点こそが、これからの業務改善に求められています。
現場の疲弊が業務構造に起因していることが明らかになると、解決の鍵は単なるツール導入ではなく、業務の本質を理解した上で負担の大部分を仕組み化する設計にあります。システムが人の代わりに担うべき役割を正確に切り分け、業務の本質価値を最大化するためには、表面的な機能提供ではなく、御社固有の業務フローや課題に応じたオーダーメイド設計が不可欠です。
フレシット株式会社は、クライアントの現場業務への深いヒアリングを起点に、「何をシステム化すべきか」「どこまで人の判断が必要か」という根本から要件を整理し、最適なフルスクラッチ開発を実現してきた実績があります。単なる効率化ではなく、現場の精神的負担を軽減し、業務の質を高めることを目的とした設計を得意としているため、「仕組みで現場を守りたい」という想いを、具体的なシステムとして形にすることが可能です。
もし、現場を疲弊させない業務設計や、属人化しない仕組みづくりでお悩みであれば、フレシット株式会社のフルスクラッチ開発は有力な選択肢となります。まずはお気軽にご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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