システム開発をフルスクラッチで成功させるために──多段階の見積りがリスクを最小化する理由
見積りをプロセスとして捉える、健全な開発の進め方
2025-12-21

システム開発を検討する際、多くの事業会社が最初に悩むのが「いくらかかるのか」「どこまでやってもらえるのか」という点ではないでしょうか。特にフルスクラッチ開発では、要件や仕様が段階的に明確になるため、初期段階で正確な見積りを出すこと自体が難しいのが現実です。それにもかかわらず、最初から最終金額の確定を求めてしまうと、プロジェクトには無理が生じやすくなります。
本コラムでは、「多段階の見積り」という考え方を軸に、なぜ一括見積りがリスクを高めてしまうのか、そしてフルスクラッチ開発を成功に導くために事業会社が理解しておくべき見積りの捉え方を解説します。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
目次
【要約】IT化の原理原則[5]多段階の見積りは双方のリスクを低減する
システム開発では、工程の進行に応じて得られる情報量が増え、要件や仕様の確度も高まります。そのため、初期段階から最終精度の見積りを求めることは、誤差やリスクを内包したまま意思決定を行うことにつながります。多段階の見積りは、段階ごとに要件の確定度に応じて見積精度を高めていく考え方であり、発注者・受注者双方のリスクを抑える有効な手法です。不確定要素が多い初期段階では概算として扱い、設計や要件定義の進展に合わせて見積りを更新することで、過度な期待や無理な約束を避けることができます。適切な契約形態や説明責任を伴う多段階見積りは、健全なプロジェクト運営を支える重要な前提となります。
出典:独立行政法人情報処理推進機構
『超上流から攻める IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
『実務に活かす IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
「IT化の原理原則17ヶ条」が教える、IT導入を成功へ導くための基礎知識
IPAが公開する「IT化の原理原則17ヶ条」は、企業がIT導入やシステム開発を円滑に進めるための基本的な考え方を整理した指針です。ユーザー企業とシステム開発会社の視点の違い、要件定義の重要性、コミュニケーション不足が招く問題など、実務で起こりやすい課題を原理的に示している点が特長です。また、開発プロセスにおける責任や役割の明確化、投資判断の妥当性、品質確保への姿勢など、プロジェクト成功に必要な視点を包括的に提示しています。これらの原理原則を理解することで、組織が主体的にIT化を推進し、失敗しにくい体制を整えることができるようになります。
出典:独立行政法人情報処理推進機構
『超上流から攻める IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
『実務に活かす IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
ポイントをひとことで
フルスクラッチ開発における見積りは、最初から金額を確定させる行為ではなく、プロジェクト理解を段階的に深めていくための手段として捉える必要があります。初期段階では情報が不足している以上、精緻な見積りを求めること自体に無理があります。一括見積りに固執すると、過剰なバッファや品質低下といった歪みが生じやすくなります。多段階見積りは、要件の確度に応じて判断の質を高め、投資リスクを抑えるための合理的な進め方です。金額の変動を失敗と捉えるのではなく、理解が深まった結果として受け止められるかどうかが、プロジェクト成功の分かれ目になります。
なぜシステム開発の見積りはズレやすいのか
システム開発の見積りがズレる最大の理由は、「情報量の差」です。
開発初期は、業務の全体像や課題、将来像が完全に整理されていないことがほとんどです。この状態で算出される見積りは、どうしても仮定や前提に依存したものになります。
フルスクラッチ開発では、既存のパッケージに業務を合わせるのではなく、業務に合わせてシステムを設計します。そのため、要件定義や設計を進めるほど、必要な機能や処理が具体化し、工数の精度も高まっていきます。
つまり、見積りは「一度で完成するもの」ではなく、「育てていくもの」なのです。
【関連記事】
システム開発の費用相場は?費用を抑えるコツや依頼先選びのポイントについても解説
一括見積りが抱える構造的なリスク
最初から最終金額を確定する一括見積りは、一見すると安心感があります。しかし、実務上は次のようなリスクを内包しています。
過剰なバッファが積まれる
不確定要素が多い段階では、システム開発会社はリスク回避のために多めの工数を見積らざるを得ません。その結果、実態より高額になるケースがあります。
仕様変更がトラブルに直結する
見積り確定後に要件が変わると、「それは見積外です」という話になりやすく、関係が悪化する原因になります。
品質が犠牲になる可能性
金額と納期を守ることが最優先になり、本来必要な検討や改善が削られてしまうことがあります。
これらは、システム開発会社の姿勢の問題ではなく、見積りの前提構造そのものに原因があります。
多段階の見積りとは何か
多段階の見積りとは、プロジェクトの進行に合わせて見積りの精度を段階的に高めていく考え方です。
- 初期段階:概算レベルの見積り
- 要件定義後:要件を反映した見積り
- 設計後:実装を前提とした精緻な見積り
このように、情報の確度に応じて見積りを更新していくことで、過度な仮定や無理な約束を避けることができます。
重要なのは、「金額が変わること」そのものではなく、「なぜ変わるのかが説明できる状態」をつくることです。
多段階見積りが双方のリスクを下げる理由
多段階の見積りは、事業会社とシステム開発会社の双方にメリットがあります。
事業会社側のメリット
- 判断材料が増え、投資判断の精度が上がる
- 想定外の追加費用が発生しにくい
- プロジェクトの全体像を段階的に把握できる
システム開発会社側のメリット
- 不確定要素を前提に無理な約束をしなくて済む
- 品質を担保しやすい
- 適切な技術選定や設計提案ができる
結果として、双方の信頼関係が築かれやすくなり、プロジェクトが安定します。
フルスクラッチ開発と多段階見積りの相性
フルスクラッチ開発は、要件の自由度が高い分、初期段階では不確定要素が多くなります。そのため、多段階見積りとの相性が非常に良い開発手法です。
- 業務理解が深まるほど、必要な機能が明確になる
- 設計の工夫次第でコスト構造が変わる
- 将来拡張を見据えた判断が可能になる
これらはすべて、段階的な見積りとセットで考えることで、初めて活かされます。
【関連記事】
要件定義が失敗する原因は?6つの失敗事例から学ぶ対策を解説
見積りは「価格交渉の道具」ではない
多くのプロジェクトで見積りが「値下げ交渉の材料」として扱われてしまいます。しかし、本来の見積りは、プロジェクトのリスクと前提条件を共有するための重要なドキュメントです。
- どこが不確定なのか
- どの部分に工数がかかるのか
- どの判断がコストに影響するのか
これらを理解せずに金額だけを見ると、プロジェクトは必ず歪みます。
多段階見積りを前提にしたプロジェクト設計
多段階見積りを活かすためには、事業会社側にも準備が必要です。
見積りの前提条件を理解する
どの情報をもとに算出されているのかを把握することで、判断の質が高まります。
段階ごとのゴールを明確にする
要件定義フェーズで何を決めるのか、次工程で何を確定させるのかを整理します。
金額変動を前向きに捉える
変動は失敗ではなく、理解が深まった結果であると捉える視点が重要です。
システム開発会社選びで見るべきポイント
多段階見積りを適切に運用できるシステム開発会社には、次のような特徴があります。
- 見積りの根拠を論理的に説明できる
- 不確定要素を正直に伝える
- 段階的な進め方を提案できる
- 契約や進行方法について柔軟な選択肢を持っている
これらは、フルスクラッチ開発を成功させるうえで非常に重要な視点です。
【関連記事】
システム開発に最適なパートナー選びの方法を徹底解説!
まとめ
システム開発において、見積りは単なる金額提示ではなく、プロジェクトのリスクと前提条件を共有するための重要な手段です。特にフルスクラッチ開発では、初期段階からすべてを確定させることは現実的ではなく、一括見積りはかえってリスクを高めてしまいます。多段階の見積りを前提とすることで、情報の確度に応じた適切な判断が可能となり、事業会社とシステム開発会社の双方にとって健全なプロジェクト運営につながります。見積りの考え方を正しく理解することが、システム開発成功への第一歩となります。
多段階の見積りは、単に金額を調整するための手法ではなく、プロジェクトの不確実性を可視化し、適切な判断を積み重ねていくための重要なプロセスです。フレシット株式会社は、この考え方を前提に、要件整理から設計、開発、運用までを一貫して伴走するスタイルを強みとしています。初期段階では無理に確定させず、情報の確度が高まるごとに判断材料を丁寧に提示し、事業会社が納得したうえで次のステップへ進める進行設計を重視しています。フルスクラッチ開発だからこそ可能な柔軟な設計と、段階的な見積りによるリスクコントロールを両立させたいとお考えでしたら、ぜひフレシット株式会社にご相談ください。貴社の事業に本当にフィットするシステムを、責任をもって形にします。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら