システムはなぜ古くなるのか?OS・ミドルウェア・フレームワーク更新から考える保守の本質
システムは完成した瞬間から老朽化する
2026-01-01

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、多くの担当者様が「どのような機能を持ったシステムを作るか」に注力されています。しかし、システム開発において「作ること」と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「維持し続けること」です。
Webシステムは、家や建物のように一度建てたら終わりではありません。稼働した瞬間から、裏側の基盤となる技術は刻一刻と古くなっていきます。そこで避けて通れないのが、「OS(オペレーティングシステム)」「ミドルウェア」「フレームワーク」といった基盤技術の更新(アップデート)です。
「なぜ動いているシステムをわざわざ更新する必要があるのか?」「更新を怠ると、具体的にどんなリスクがあるのか?」「パッケージシステムとフルスクラッチ開発で、保守のしやすさはどう違うのか?」
本コラムでは、システムを長く安全に使い続けるために不可欠な「更新」の重要性について徹底解説します。これからシステム開発を依頼しようとしている担当者様にとって、システム開発会社の選定基準や、長期的な運用計画を立てるための重要な指針となるはずです。
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目次
ポイントをひとことで
システム開発は「導入して終わり」ではなく、実際には稼働してからが本当のスタートです。OSやミドルウェア、フレームワークといったシステムの土台となる部分は、時間の経過とともに古くなり、更新を怠ると情報漏洩やシステム停止といった経営に直結するリスクを招きます。これらの更新は単なる技術作業ではなく、事業を安全に継続するための重要な判断です。また、システム同士のつながり(依存関係)や、メーカーのサポート終了時期(EOL:End Of Life)を意識して設計・更新計画を立てているかどうかで、将来の運用保守コストやシステム刷新の難易度は大きく変わります。目先の運用だけでなく、長く使い続けることを前提にシステムを「事業の資産」として捉える姿勢の重要性を、実務の視点から理解できる内容です。
そもそもOS・ミドルウェア・フレームワークとは?役割の違いを理解する
システム開発の現場では当たり前に使われるこれらの用語ですが、システム開発を専門としない方にとっては違いが曖昧なことも多いでしょう。まずは、それぞれの役割を「家づくり」や「店舗運営」に例えて整理します。
ミドルウェア:システムの「インフラ設備・機能・翻訳機」
ミドルウェアは、OSとアプリケーションの間に入り、特定の機能を提供したり、プログラムを動かすための土台となるソフトウェア群です。大きく分けて3つの役割があります。
- Webサーバーソフト(Apache, Nginxなど): 「接客係」のように、ユーザーからのアクセスを一番に受け付け、整理します。
- データベース(MySQL, PostgreSQLなど): 「金庫」や「倉庫」のように、顧客データや商品データを安全に保管・整理します。
- 言語の実行環境(PHP, Java, Ruby, Pythonなど): 「翻訳機」や「熟練の職人」のような役割です。書かれたプログラムコードを読み取り、実際に計算や処理を実行します。例えば、PHPのバージョンが古くなると、新しい機能が使えないだけでなく、処理速度が遅いままになったり、セキュリティの穴が放置されたりします。
これらは、家づくりで言えば「電気・ガス・水道の配管」や「キッチン設備」、そしてそこで働く「専門スタッフ」のようなものです。これらが古くなると、水漏れ(情報漏洩)やガス漏れ(システム停止)の原因になります。
フレームワーク:システムの「骨組み・構造」
フレームワークは、アプリケーション開発を効率化するための土台となるプログラムの雛形です。プログラミング言語ごとに存在し(例:PHPならLaravel、RubyならRuby on Rails、JavaならSpring Boot)、開発のルールや便利な機能セットを提供します。家で言えば、プレカットされた木材や鉄骨の「柱・梁」のセットにあたります。独自のデザイン(機能)はこの骨組みの上に作られますが、骨組み自体の強度が重要です。
Webシステムは、これら3つの層(レイヤー)が積み重なって初めて動作しています。そして、それぞれの層が別々のタイミングでバージョンアップされていくのが、システム運用の複雑なところです。
なぜ「更新」し続けなければならないのか?放置する3つの巨大リスク
「機能が増えるわけでもないのに、なぜ安くない費用をかけなければならないのか?」「今のままで問題なく動いているのだから、余計なことをして壊れるのが怖い」そう考える担当者様もいらっしゃるかもしれません。しかし、ソフトウェアの世界において「現状維持」は「退化」と同義です。更新を怠ることで発生するリスクは、経営課題に直結するほど甚大です。
1. セキュリティリスクの増大(脆弱性の放置)
これが最大の理由です。世界中のハッカーは、常にOSやミドルウェア、フレームワークの「穴(脆弱性)」を探しています。ソフトウェアベンダーは、脆弱性が見つかるたびに修正パッチ(セキュリティ更新プログラム)を配布します。更新を行わないということは、泥棒に「裏口の鍵が開いていますよ」と看板を出しているようなものです。サイバー攻撃による個人情報漏洩やランサムウェア被害が発生した場合、企業の社会的信用は失墜し、損害賠償などの金銭的被害も計り知れません。
2. 機能不全とパフォーマンスの低下
IT技術は日進月歩です。ブラウザ(ChromeやSafari)の仕様変更や、連携している外部サービス(決済システムやSNS連携など)のAPI更新に対応するためには、こちらのシステム基盤も新しく保つ必要があります。古い環境のまま使い続けると、「突然画面が表示されなくなった」「処理速度が著しく低下し、ユーザーが離脱した」といった事態を招きます。最新の技術を取り入れて業務効率を上げるチャンスも逃してしまいます。
3. 「サポート切れ(EOL)」による完全な孤立
すべてのソフトウェアには「サポート期限(EOL:End Of Life)」があります。EOLを迎えると、ベンダーからのセキュリティ修正や技術サポートが一切受けられなくなります。この状態で重大なバグが見つかっても、誰も助けてくれません。これを業界用語で「塩漬けシステム」と呼びますが、塩漬けになったシステムは、いざ刷新しようとした際にデータ移行が困難になるなど、将来的に莫大なリプレイス費用が発生する原因となります。
システム更新はなぜ難しい?エンジニアが直面する「依存関係」の壁
「更新が大事なのはわかった。では、通知が来たらボタン一つで更新すればいいのでは?」スマホのアプリ更新のように簡単であれば良いのですが、企業のWebシステムにおける更新作業は、非常に繊細で高度な技術を要します。その理由は「依存関係」にあります。
バージョンのパズルを解く
例えば、フレームワークを最新版にアップデートしようとしたとします。すると、そのフレームワークを動かすために必要な「プログラミング言語のバージョン」も上げる必要が出てきます。さらに、言語のバージョンを上げると、今度は「OSのバージョン」が古すぎて対応していないことが判明します。このように、一つの要素を更新するために、連鎖的に他の要素も更新しなければならないケースが多々あります。
互換性の検証(リグレッションテスト)
基盤を更新した結果、今まで動いていたアプリケーションの機能が動かなくなることがあります。「日付の計算方法が微妙に変わった」「データベースへの接続命令の書き方が変更された」など、微細な仕様変更がシステム全体に影響を及ぼすからです。そのため、更新作業を行う際は、システム開発会社がテスト環境を用意し、すべての機能が正常に動作するかを入念にテストする必要があります。この検証作業こそが、システム保守におけるエンジニアの腕の見せ所であり、工数がかかる部分でもあります。
パッケージ利用とフルスクラッチ開発における「更新・保守」の違い
これからシステムを構築する際、「パッケージ(CMS含む)を利用するか」「フルスクラッチで開発するか」で迷われるかと思います。実はこの選択は、将来の「更新のしやすさ(メンテナンス性)」に大きく関わってきます。
パッケージ・CMS利用の場合
既存のパッケージ製品やCMS(WordPressなど)は、本体のアップデートが頻繁に提供されるため、一見安心に見えます。しかし、ここに落とし穴があります。独自機能を実装するために「プラグイン」を多用したり、パッケージの核となる部分を無理やりカスタマイズしたりしている場合、本体をアップデートするとカスタマイズ部分が上書きされて消えたり、動作しなくなったりすることがあります。その結果、「アップデートしたいが、システムが壊れるのが怖くてできない」という状況に陥りやすく、脆弱性を抱えたまま運用せざるを得ないケースが後を絶ちません。
フルスクラッチ開発の場合
一方、ゼロから構築するフルスクラッチ開発の場合、使用するフレームワークやミドルウェアの選定、そしてそれらをどのように組み合わせるか(アーキテクチャ)を、自社の事業計画に合わせて設計できます。
- 依存関係のコントロール:不要な機能を削ぎ落とし、シンプルな構成にすることで、更新時の影響範囲を最小限に抑えられます。
- 独自の更新計画:「繁忙期を避けてOSを更新する」「まずはセキュリティパッチだけ適用する」といった柔軟な運用計画が立てられます。
- ブラックボックス化の回避:自社専用に書かれたコードであるため、どこを修正すれば最新環境に対応できるかが明確であり、技術力のあるシステム開発会社であればスムーズな移行が可能です。
長期的に安定して稼働させ、かつ最新のセキュリティ水準を維持したい事業システムにおいては、コントロール権を自社(およびパートナー企業)が持てるフルスクラッチ開発の方が、結果的にTCO(総保有コスト)やリスク管理の面で有利になることが多いのです。
長く使えるシステムを作るためのパートナー選びと設計思想
OSやミドルウェア、フレームワークの更新は、システムが生きている限り続く「終わりのないタスク」です。だからこそ、開発を依頼する段階で、以下の視点を持ってシステム開発会社を選ぶことが重要です。
インフラからアプリまで一貫して見られる技術力があるか
アプリケーション(画面や機能)を作るだけの会社では、OSやサーバーの設定、セキュリティパッチの適用といったインフラ層の課題に対応できません。「AWSやGoogle Cloudなどのクラウドインフラ構築から、フレームワークの選定、アプリケーション開発までを一気通貫で対応できる会社」を選ぶことが、安定稼働への第一歩です。
「保守性」を考慮した設計ができるか
優秀なエンジニアは、コードを書く前に「将来の更新のしやすさ」を設計します。「バージョンアップが容易なフレームワークを選定しているか」「設定ファイルとプログラムコードが適切に分離されているか」「自動テスト(テストコード)を導入して、更新時のテスト工数を削減する工夫があるか」。見積もりの段階で、こうした保守性についての考え方を質問してみると、その会社の技術レベルと誠実さが見えてくるはずです。
ビジネスに伴走する姿勢があるか
システム更新にはコストがかかります。しかし、それは「保険」であり「投資」です。「今は予算がないから更新を見送る」という判断が必要な時もあるでしょう。そんな時、「リスクはこれくらい上がりますが、代替案としてここだけ塞いでおきましょう」といった、ビジネス状況を理解した上で現実的な提案をしてくれるパートナーが必要です。単なる作業代行ではなく、貴社のシステム部門の一員のように振る舞ってくれる会社を探してください。
まとめ
本コラムでは、普段あまり意識することのない「OS・ミドルウェア・フレームワークの更新」というテーマについて解説しました。
- システムはOS・ミドルウェア・フレームワークという3層の基盤の上で動いている。
- 更新を怠ると、情報漏洩やシステム停止、サポート切れといった経営リスクに直結する。
- 更新作業は依存関係が複雑であり、高度な技術と検証が必要となる。
- フルスクラッチ開発は、構成をシンプルに保ち、更新のコントロールがしやすいため、長期運用に適している。
- 成功の鍵は、インフラからアプリまで精通し、保守性を見据えた設計ができるシステム開発会社を選ぶこと。
華やかな新機能の追加に目が行きがちですが、システムを支えているのは地道な基盤技術です。この「足腰」を強く保つことこそが、貴社のビジネスを止めず、成長させ続けるための必須条件です。
フルスクラッチ(オーダーメイド)でシステムを構築する価値は、「今の業務に合う機能を作れること」だけではありません。
本当に重要なのは、そのシステムを5年後・10年後も、安全に、無理なく使い続けられるかという視点です。
フレシット株式会社は、要件定義や画面づくりだけでなく、OS・ミドルウェア・フレームワークといった基盤レイヤーを含めた“長期運用を前提とした設計”を重視しています。
更新が前提となるソフトウェアの世界において、依存関係を整理し、ブラックボックス化を避け、将来のアップデートやリプレイスまで見据えて構成を設計すること。それこそが、システムを「資産」として育てていくために欠かせない考え方です。
また当社は、開発して終わりではなく、事業の成長や環境変化に応じて、
「今はどこまで更新すべきか」
「どのリスクを優先的に潰すべきか」
といった判断にも、技術とビジネスの両面から伴走します。
システム保守や更新を“怖い作業”にしないための設計と運用こそが、フルスクラッチ開発の真価だと考えています。 これから業務システムやWebサービスの開発をご検討される際は、ぜひ「作ること」だけでなく、「作ったあと、どう守り、どう進化させていくか」まで一緒に考えてみてください。
その視点からフルスクラッチ開発を選びたいと感じられたとき、フレシット株式会社は、長く信頼できる技術パートナーとしてお力になれるはずです。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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