なぜ“1人体制で開発・運用が回っているシステム”は危険なのか?
開発・運用体制の属人化が引き起こすシステムの構造的リスク
2026-01-08

旅行予約システムで会員登録直後に他人の個人情報が表示される。
この出来事は、単なる実装ミスや技術的な不具合として片付けられる問題ではありません。背景を読み解くと浮かび上がるのは、「システムを1人で開発・運用する体制」そのものが内包する構造的なリスクです。フルスクラッチで業務システムを構築しようとする事業会社のご担当者さまにとって、これは決して他人事ではありません。
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目次
【記事要約】旅行予約システムで個人情報誤表示、1人体制の開発・運用が露呈した構造的リスク
NYANGOが提供する旅行予約システムで、会員登録直後に他人の個人情報が表示される不具合が発生した。原因はシステム改修時の実装見落としにより、データベース接続先がリセットされ、別地域のDBを参照した点にある。技術的な不備自体は短時間で修正されたが、開発・運用を社長1人で担う体制が、設計上の思い込みや検証不足を招きやすい構造的リスクとして浮き彫りになった。第三者チェックが働かない1人体制は、インシデントの未然防止や品質確保の面で脆弱であり、同様の体制を取る事業者全体に重い課題を突き付けている。
出典:日経クロステック/日経コンピュータ「旅行の予約サイトで他人の個人情報が誤表示される、DB接続先がリセット状態に」2025年9月12日公開
ポイントをひとことで
このコラムは、システムトラブルの原因を技術力の不足ではなく、開発・運用を1人に依存する体制そのものに求めている点が重要です。設計時の思い込みや前提のズレは、複数人による確認やレビューがなければ表面化しにくく、結果として「想定外」の事故につながります。フルスクラッチで業務に最適化したシステムを作る場合こそ、コードや機能以上に、誰が確認し、どう引き継ぎ、どう改善していくのかという体制面を含めて判断することが、長期的な安定運用の鍵になります。
技術的な不具合よりも本質的な問題
今回のコラムで取り上げるトラブルは、データベース接続先の管理に関する実装上の見落としが直接の原因でした。しかし、注目すべき点は「なぜその見落としが防げなかったのか」という部分です。
問題のシステムは、開発から運用までを1人で担う体制で構築されていました。本人は十分に理解しているつもりでも、設計時の思い込みや前提条件のズレは、第三者の視点が入らなければ気付かれにくいものです。技術力の高低ではなく、チェック機能が存在しない体制そのものが、リスクを増幅させていたといえます。
「属人化=コスト削減」という誤解
フルスクラッチ開発を検討する際、「少人数のほうがコストを抑えられる」「1人で見てくれている方が話が早い」と考えるご担当者さまは少なくありません。確かに短期的には、人数を絞ることで費用やコミュニケーションコストが下がるように見えます。
しかし、その裏側では、設計思想・実装判断・運用ノウハウがすべて特定の個人に依存する状態が生まれます。この状態は、障害発生時や仕様変更時に一気にリスクとして顕在化します。属人化はコスト削減策ではなく、将来の不確定要素を増やす選択であることを理解する必要があります。
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なぜ1人体制では「想定外」が起きやすいのか
1人体制の最大の弱点は、「思い違いを正す機会が存在しない」点です。
人は誰しも、自分が正しい前提で設計していると思い込みがちです。特にフルスクラッチ開発では、業務要件・システム構成・運用フローが複雑に絡み合うため、すべてを頭の中で完全に把握することは困難です。
複数人であれば、「その前提は本当に成り立つのか」「別のケースではどうなるのか」といった問いが自然に生まれます。しかし1人で完結している環境では、その問い自体が生まれにくく、結果として“想定外”の形で不具合が表面化します。
フルスクラッチ開発で本当に設計すべきもの
フルスクラッチ開発というと、機能要件や画面仕様に意識が向きがちです。しかし、本来設計すべきなのはシステムそのものだけではありません。
・誰が設計をレビューするのか
・誰が実装を確認するのか
・運用時の変更や障害対応をどう引き継ぐのか
こうした「体制設計」は、システムの安定性や安全性に直結します。体制が設計されていないシステムは、どれほど優れた技術で作られていても、長期的には不安定になりやすいのです。
事業会社のご担当者さまが発注前に確認すべき視点
システム開発会社を選定する際、実績や技術スタックだけで判断してしまうと、体制リスクを見落とす可能性があります。重要なのは、「どのような体制で開発・運用が行われるのか」という点です。
・レビュー工程があるのか
・特定の個人に依存しない設計になっているのか
・将来的な運用・改善まで見据えた体制が用意されているのか
これらを事前に確認することで、システム導入後に想定外のリスクを抱え込む可能性を大きく下げることができます。
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まとめ
今回のコラムで見てきたように、システムトラブルの本質的な原因は、技術力の不足ではなく「体制設計の欠如」にあるケースが少なくありません。特にフルスクラッチ開発では、柔軟性の高さと引き換えに、属人化のリスクが生まれやすくなります。
「今は問題なく動いているから大丈夫」という判断は、将来のリスクを見えにくくします。システムは導入して終わりではなく、使い続け、変化に対応していくものです。その前提に立ち、技術だけでなく体制にも目を向けることが、失敗しないシステム構築への第一歩といえるでしょう。
システムは「作れるかどうか」ではなく、「安心して任せ続けられるかどうか」で価値が決まります。
当社フレシット株式会社では、オーダーメイドでシステムを構築するからこそ、属人化させない体制、複数人による設計・レビュー、運用を見据えた引き継ぎや改善までを重視しています。
専用システムを検討しているものの、体制や将来リスクに不安を感じている場合は、一度立ち止まり、どのような考え方でシステムを作るべきかを整理することが重要です。業務や状況に応じた最適な形を一緒に考える選択肢として、フレシット株式会社を検討してみてはいかがでしょうか。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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