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COLUMN コラム詳細

トヨタのポイント経済圏構想に学ぶ | 「共通IDを作ればDXになる」という誤解

2026-01-15

複数のサービスやアプリをまたいで顧客体験をつなぐために、「共通ID」を導入する企業が増えています。ログインの統一、顧客情報の一元管理、ポイントや決済との連携など、一見すると共通IDを整備するだけでDXが進むようにも見えます。しかし現場では、「IDを統合したのに業務が楽にならない」「データは集まったが活用できない」といった声も少なくありません。DXの成否を分けるのは、IDそのものではなく、その先にある業務・データ・権限をどう設計するかにあります。

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【記事要約】トヨタ、ID統合を起点にポイント経済圏へ参入し、モビリティ基盤を拡張

トヨタ自動車は、複数サービスに分散していた顧客IDを「トヨタアカウント」として統合し、ポイント経済圏の構築を本格化させています。これまでレンタカー、カーシェア、コネクテッドカーなどで個別管理されていたIDを一本化することで、アプリやサービスを横断的に利用できる基盤を整えました。今後はこの共通IDと決済基盤を連携させ、獲得したポイントをスマホ決済や電子マネーとして日常利用できるようにする方針です。ID統合により顧客の行動データを包括的に把握でき、車両購入後の継続課金型サービスや生活サービスとの連携を強化できます。IDを軸にした統合基盤は、売り切り型からサービス型ビジネスへの転換を支える中核となります。

出典:日本経済新聞「トヨタ、ポイント経済圏参入 サービス連携」2026年1月8日付朝刊

ポイントをひとことで

共通IDは、ログインを一つにするだけの仕組みではありません。会社の中で「誰を顧客として扱うのか」「どの取引や契約をひとまとまりに見るのか」といった、仕事の進め方そのものを見直す取り組みです。これらが整理されていないままでは、情報を集めても判断や改善にはつながりません。大切なのは、IDをいつ作り、どう使い、将来どう変えていくかを考えた設計です。業務を止めずに少しずつ切り替えられることや、後から変更しやすいことが、投資の価値を大きく左右します。

共通IDDXという誤解が生まれる理由

共通IDという言葉は分かりやすく、DX施策の入口として語られがちです。サービスごとに異なっていたログイン情報を一つにまとめれば、顧客も社内も便利になる。そう考えるのは自然です。

しかし、IDはあくまで「識別子」にすぎません。どの業務で、どの情報を、どの単位でひも付けるのかが整理されていなければ、IDを統合してもシステムの裏側は分断されたままです。その結果、表面的には一つのIDでログインできても、業務は相変わらず手作業でつなぐ状態が続きます。

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ID統合で露呈する既存業務の歪み

共通IDを導入しようとすると、多くの企業で過去の業務設計が壁になります。たとえば、部門ごとに顧客の定義が異なるケースです。営業部門では「取引先単位」、サポート部門では「担当者単位」、別サービスでは「契約単位」で管理されていると、どれを共通IDの軸にするのか決められません。

ID統合は、こうした業務の不整合を強制的に表面化させます。ここを曖昧にしたままツールで吸収しようとすると、後から修正が効かない構造的な負債になります。

本当に設計すべきは「IDのライフサイクル」

DXの視点で重要なのは、IDを作ることではなく、IDがどのように生まれ、変化し、役目を終えるのかを定義することです。新規登録時にどの情報が必須なのか。契約内容が変わった場合、IDはどう扱うのか。退会や解約後、データはどこまで保持するのか。

これらは業務ルールそのものであり、システム開発会社に丸投げして決められるものではありません。ID統合を機に業務フローを再設計しなければ、データ活用やサービス連携は実現しません。

権限設計を軽視するとDXは止まる

もう一つ見落とされやすいのが権限設計です。
共通IDを導入すると、「誰がどこまで見られるのか」「どの操作ができるのか」という制御が複雑になります。顧客向けIDだけでなく、社内ユーザー、代理店、外部パートナーなど、立場ごとに異なる権限を整理する必要があります。

既存ツールの制約に合わせて権限を妥協すると、業務が回らなくなったり、セキュリティリスクを抱えたりします。業務実態に合わせて柔軟に設計できるかどうかが、DXを継続できるかの分かれ目になります。

なぜフルスクラッチが選択肢になるのか

ID統合後の業務設計は、企業ごとに正解が異なります。業種、提供サービス、顧客との関係性によって、最適なID構造やデータの持ち方は変わります。
汎用的なID統合ツールは導入を早める一方で、業務に合わせた細かな調整には限界があります。結果として運用で無理を吸収することになり、DXが止まるケースも多く見られます。

業務・データ・権限を一体で設計できるフルスクラッチ開発は、ID統合を単発施策で終わらせず、将来のサービス拡張や事業転換に耐えうる基盤を作るための現実的な選択肢です。

まとめ

共通IDを導入すればDXが進む、という考え方は分かりやすい一方で、本質を見誤りやすい発想です。重要なのは、ID統合の先にある業務設計、データ設計、権限設計をどう描くかです。
IDは目的ではなく手段にすぎません。自社の業務やサービスの将来像を見据え、ID統合後に何を実現したいのかを言語化することが、DXを形骸化させないための第一歩になります。

ID統合は、ツールを入れて終わる施策ではありません。
業務の実態を整理し、データの持ち方を定義し、権限や将来の拡張まで見据えて設計してはじめて、事業を支える基盤になります。その設計を誤ると、ID統合は便利さを生むどころか、運用負荷や制約を増やす原因にもなります。

フレシット株式会社は、要件が固まっていない段階から業務を分解し、「ID統合の先で何を実現したいのか」を一緒に整理するところからシステムづくりを行っています。既存ツールありきではなく、業務・データ・権限を一体で設計できるフルスクラッチだからこそ、将来のサービス拡張や事業転換にも耐えられる仕組みを構築できます。

共通IDや業務基盤の見直しを、単なるシステム更新で終わらせたくないと感じているのであれば、一度立ち止まって設計から考える選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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