システム移行・追加開発で失敗しないための並行稼働とは?本番リリース後に必要な考え方と設計の勘所
事業継続を守るためのリリース設計という視点
2026-01-17

システム移行や追加機能の本番リリースは、事業成長や業務改善に欠かせない重要な局面です。一方で、「リリースした瞬間に業務が止まるのではないか」「想定外の不具合が出たらどう対応すべきか」といった不安を抱えるご担当者さまも少なくありません。そうしたリスクを現実的に抑えるための運用手法が「並行稼働」です。
本コラムでは、並行稼働の本質や導入目的、設計・運用時の注意点を整理し、押さえておくべき考え方を解説します。
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目次
本番リリース後における「並行稼働」とは何か
並行稼働とは、システム移行や機能追加の本番リリース後、旧システムと新システムを一定期間同時に動かす運用方式を指します。新システムに切り替えた直後は、想定外の不具合や業務上の違和感が顕在化しやすいため、旧システムを残すことで業務停止リスクを抑えます。また、同一データや業務結果を両システムで照合することで、処理差異や設計上の抜け漏れを早期に発見できます。並行稼働は安全性を高める一方で、二重入力や運用負荷が増えるため、目的と期間を明確に定め、段階的に新システムへ一本化する計画が重要です。
ポイントをひとことで
並行稼働の是非は技術的な可否ではなく、事業としてどの不確実性を許容し、どこに安全の余白を持たせるかという設計判断に帰着します。重要なのは、新旧システムの切替を一度きりのイベントとして扱わず、移行期間も含めて業務が連続する前提で構造を描くことです。その視点を欠くと、完成度の高いシステムであっても現場に定着せず、結果として投資価値を毀損します。システム投資では、稼働開始後の揺らぎをどう吸収するかまで設計に含める姿勢が不可欠です。
並行稼働とは何か
並行稼働とは、システム移行や機能追加の本番リリース後、旧システムと新システムを一定期間同時に稼働させる運用方式を指します。完全に切り替えるのではなく、あえて二つのシステムを並行して動かすことで、業務への影響を最小限に抑えることが目的です。特に基幹業務や売上に直結するシステムでは、切り替えの失敗が事業リスクに直結するため、並行稼働は現実的な選択肢となります。
なぜ本番リリース後に問題が起きやすいのか
テスト工程では問題が見つからなかったにもかかわらず、本番リリース後に不具合が顕在化するケースは珍しくありません。その理由は、本番環境特有のデータ量、実際の業務フロー、利用者の操作パターンがテスト環境とは異なるためです。また、追加機能の場合でも、既存機能との相互作用によって想定外の挙動が発生することがあります。並行稼働は、こうした「実運用でしか見えないズレ」を吸収するための緩衝材として機能します。
並行稼働が果たす役割
並行稼働の最大の役割は、業務停止リスクの回避です。新システムに問題が発生した場合でも、旧システムに切り戻す選択肢が残るため、事業への影響を抑えられます。また、同一業務を旧・新システムで処理し、結果を突き合わせることで、計算ロジックやデータ変換の差異を早期に発見できます。これは単なる安全策ではなく、システム品質を高めるための重要な検証プロセスでもあります。
並行稼働を前提にした設計の重要性
並行稼働は、後付けで簡単に実現できるものではありません。データの持ち方、更新タイミング、マスタ管理の方針などを、設計段階から考慮しておく必要があります。例えば、どちらのシステムを正とするのか、データ不整合が起きた場合にどう判断するのかといった点を曖昧にしたままでは、並行稼働がかえって混乱を招きます。システム開発会社には、業務理解を踏まえた上で、並行稼働を前提とした設計判断が求められます。
並行稼働に伴う現実的な負荷
一方で、並行稼働にはコストと負荷が伴います。二重入力が発生する、運用ルールが複雑になる、現場の負担が増えるといった課題は避けられません。そのため、並行稼働は「安全だから長く続けるもの」ではなく、「目的を持って短期間で終えるもの」と位置づける必要があります。いつまで並行稼働を行い、どの時点で新システムに一本化するのかを事前に定義することが重要です。
事業会社側が押さえるべき判断軸
並行稼働を検討する際、事業会社のご担当者さまが意識すべきなのは、「技術的に可能か」ではなく「事業として許容できるリスクは何か」という視点です。売上や顧客対応に影響が出る業務なのか、一時的な手作業でカバーできるのかによって、並行稼働の必要性や期間は変わります。システムは業務を支える手段であり、事業判断と切り離して考えることはできません。
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フルスクラッチ開発と並行稼働の相性
並行稼働を適切に設計・運用するためには、業務や既存システムの前提条件に柔軟に対応できることが重要です。画一的な仕組みでは、企業ごとの業務特性や移行事情を十分に反映できない場合があります。その点、フルスクラッチのシステム開発では、並行稼働を含めた移行プロセスそのものを設計対象とし、段階的な切り替えを前提にした構造を組み込むことが可能です。
まとめ
並行稼働は、システム移行や追加機能の本番リリース後に発生し得るリスクを抑え、業務を止めないための現実的な運用手法です。ただし、単なる保険として導入するのではなく、設計段階から目的や期間を明確にし、事業判断と一体で考えることが欠かせません。システムは完成がゴールではなく、業務に定着し、安定して使われ続けることが本当の価値となります。並行稼働をどう設計し、どう終わらせるかは、そのシステムが事業に寄り添えているかを映す重要な指標と言えるでしょう。
並行稼働を前提としたシステム移行や追加開発は、単に「安全に切り替える」ための技術論ではなく、業務理解・設計力・将来を見据えた判断力が問われる領域です。フレシット株式会社では、要件定義以前の業務整理や現行運用の把握から丁寧に伴走し、「どこまで並行させるべきか」「いつ一本化すべきか」といった事業判断まで含めて設計に落とし込みます。既存システムの制約や現場の実情を踏まえた上で、移行プロセスそのものをシステム設計の一部として組み立てられる点は、フルスクラッチ開発ならではの強みです。リリース後の混乱や想定外を前提にし、それでも業務が止まらない仕組みをつくりたいとお考えであれば、同じ目線で考え抜くパートナーとして、当社のフルスクラッチ開発が力になれるはずです。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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