【トヨタ近氏「意思ある踊り場」発言に学ぶ】機能追加が経営を重くする理由
その機能、本当に必要ですか?
2026-02-08

「便利にしたはずなのに、コストも判断も重くなる」。
多くの事業会社で、システム投資に対してこのような違和感が生まれています。業務効率化や高度化を目的に機能を追加してきたにもかかわらず、運用負荷は下がらず、むしろ意思決定が遅くなっている。こうした状況は、個別のツール選定やIT部門の問題ではなく、システム投資の考え方そのものに原因がある場合が少なくありません。
2026年2月、トヨタ自動車の近次期社長は、損益分岐台数が上昇している背景として「各機能にとっていい物を積み重ねすぎた」点に言及し、「意思ある踊り場」を全社で進める考えを示しました。この発言は、自社システムをどう設計し、どう育てるべきかを考えるうえで、多くの示唆を含んでいます。
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目次
【記事要約】トヨタ近次期社長、損益分岐点上昇に危機感「意思ある踊り場」を全社で推進
トヨタ自動車の近健太次期社長は、直近1~2年で損益分岐台数が上昇している現状に触れ、機能ごとに最適を積み重ねた結果、全体としての統一感や効率を欠いてきたと課題を示した。その上で、佐藤社長が掲げた「意思ある踊り場」を全社で実行し、立ち止まって取捨選択と全体最適を進める考えを強調した。成長投資を続けるためにも、収益構造の改善と経営判断の整理が不可欠であり、足元を見直す局面にあるとの認識を示した。
出典:日本経済新聞「トヨタ・近氏『意思ある踊り場やる』 損益分岐台数を改善」2026年2月7日付朝刊
ポイントをひとことで
システム投資で問題になるのは、機能不足よりも判断軸の不在です。個別要望に応える形で追加を重ねると、全体を俯瞰した意思決定が難しくなり、コストと運用負荷が静かに積み上がります。重要なのは、どの機能を入れるかではなく、事業判断をどの単位で行い、変化にどう対応するかを先に定めることです。立ち止まって取捨選択を行う設計判断は、成長を止める行為ではなく、将来の選択肢を狭めないための前向きな投資判断だと言えます。
なぜ「機能を足すほど」経営が重くなるのか
システム導入や改修の場面では、「この機能があればもっと便利になる」「現場から要望が出ているから追加したい」といった判断が積み重なります。個々の判断だけを見れば合理的でも、結果として全体が見えにくくなり、管理コストや調整工数が増えていくことがあります。
特に多いのが、部門ごとに最適化された仕組みが並立し、横断的な判断がしづらくなるケースです。売上、原価、在庫、顧客情報がそれぞれ別の仕組みで管理され、数字の突き合わせに時間がかかる。現場は忙しくなり、経営層は即断できない。こうした状態は、機能不足ではなく、積み重ね方の問題から生じます。
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パッケージ導入と部分最適の落とし穴
既存のパッケージやSaaSは、短期間で一定水準の機能を実装できる点が魅力です。ただし、それぞれの前提や思想は異なります。複数の仕組みを組み合わせるほど、業務やデータのつながりは複雑になり、調整作業が増えていきます。
当初は「標準機能で十分」と判断しても、運用が進むにつれて独自要件が表面化し、追加開発や手作業での補完が増えていくことも珍しくありません。結果として、全体像を把握できる人が限られ、変更や改善のたびに大きな負荷がかかる状態に陥ります。
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「意思ある踊り場」が示すシステム投資の視点
近次期社長が語った「意思ある踊り場」は、成長を止めるという意味ではありません。拡張を前提に進んできた流れを一度見直し、何を続け、何を見直すのかを意図的に判断する時間を持つという考え方です。
システム投資においても同様に、追加を前提に走り続けるのではなく、「この仕組みは何のためにあるのか」「今後の事業判断に本当に必要か」を整理する局面が必要になります。すべてを網羅することよりも、判断を速くし、変化に対応しやすい状態を保つことが重要です。
全体感を取り戻すための設計視点
全体感を取り戻すうえで鍵となるのは、機能の多さではなく、情報のつながり方です。どのデータを基準にし、どこで判断するのかを明確にしたうえで、業務とシステムの関係を整理する必要があります。
フルスクラッチでの開発は、こうした前提をゼロから設計できる点が特徴です。現時点の業務をそのまま写すのではなく、将来の変更や事業拡張を見据えた形で、必要な範囲と役割を定義できます。結果として、不要な機能を抱え込まず、判断に必要な情報へ素早くたどり着ける仕組みを作ることが可能になります。
まとめ
機能を足し続けた結果、経営が重くなる現象は、特定の企業や業界に限った話ではありません。部分ごとの最適を積み重ねてきた先に、全体が見えにくくなるという課題が潜んでいます。
トヨタの「意思ある踊り場」という考え方は、システム投資においても重要な示唆を与えます。立ち止まり、全体を見直し、何を残し何を手放すのかを判断する。そのプロセスこそが、次の成長を支える基盤づくりにつながります。
ここまで見てきたように、システム投資で本当に問われるのは「どの機能を入れるか」ではなく、「事業判断を軽くし、変化に耐えられる状態をどうつくるか」という視点です。
当社フレシット株式会社は、要件をそのまま形にするのではなく、事業や業務の背景を丁寧に整理し、将来の拡張や見直しを前提にしたフルスクラッチ開発を強みとしています。パッケージでは合わせきれない業務や、部分的な改修を重ねた結果、全体が見えにくくなっている状況に対しても、ゼロベースで考え直すことが可能です。
「便利にしたはずなのに重くなった」「これ以上足す前に一度整理したい」と感じたときこそ、オーダーメイドで仕組みを設計する選択肢が生きてきます。事業の判断軸を取り戻し、次の成長につながるシステムを本気で考えたい会社さまにとって、当社フレシット株式会社は心強いパートナーとなるはずです。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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