非機能要件とは何か?フルスクラッチ開発で失敗しないために事業会社が押さえるべき設計の考え方
業務要件だけでは決まらない、システム投資の本質
2026-02-10

システム開発を検討する際、多くの会社さまが機能要件の整理には時間をかけます。一方で、後回しにされがちなのが「非機能要件」です。しかし実務の現場では、システムが期待通りに使われなくなる原因の多くが、非機能要件の軽視にあります。処理が遅い、障害時の対応が想定されていない、運用負荷が高すぎる。こうした問題は、機能不足ではなく設計時の判断に起因するケースがほとんどです。
本コラムでは、非機能要件の本質と、事業成長を前提としたシステム開発における重要性を解説します。
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目次
非機能要件とは何か
非機能要件とは、システムが「何をするか」ではなく、「どのように動くべきか」を定める要件です。たとえば、処理速度や同時利用人数、障害発生時の復旧時間、セキュリティ水準、運用保守のしやすさなどが該当します。これらはユーザー画面に直接現れにくい一方で、使い勝手や信頼性、事業継続性に大きな影響を与えます。非機能要件が曖昧なまま開発を進めると、稼働後に性能不足や運用負荷の増大といった問題が顕在化しやすく、結果として追加コストや手戻りを招く原因となります。機能要件と同等、あるいはそれ以上に、初期段階で整理・合意しておくことが重要です。
ポイントをひとことで
非機能要件の扱い方は、システムをコストとして消費するか、事業基盤として育てるかの分岐点になります。性能や可用性、運用負荷といった条件は技術論に見えますが、実際には事業リスクの許容範囲や成長速度をどう考えるかという経営判断の表れです。初期段階でこれらを言語化しない投資は、将来の選択肢を自ら狭める行為になりがちです。システム設計とは、現在の業務を再現する作業ではなく、将来の意思決定を縛らない余白を意図的に残す行為だと言えます。
非機能要件とは何を指すのか
非機能要件とは、システムが「何をするか」ではなく、「どのような品質や条件で動作するか」を定める要件です。代表的なものとして、処理性能、可用性、セキュリティ、拡張性、運用保守のしやすさなどが挙げられます。これらは画面や帳票のように目に見えにくいため、要件定義の段階で抽象的な表現に留まりやすい傾向があります。しかし、非機能要件は日々の業務効率やシステムへの信頼感を左右し、結果として業務定着度や投資対効果に直結します。機能が一通り揃っていても、非機能要件が不十分であれば、現場から敬遠されるシステムになってしまいます。
なぜ非機能要件は後回しにされやすいのか
非機能要件が軽視されやすい理由の一つに、「動けばよい」という短期的な視点があります。特に既存業務の置き換えを目的とした開発では、現行業務を再現することが優先され、将来の利用拡大や業務変化への対応が十分に検討されないまま進行することがあります。また、非機能要件は数値や基準で表現しづらく、事業側とシステム開発会社の間で認識のズレが生じやすい領域でもあります。その結果、曖昧な合意のまま開発が進み、稼働後に課題として表面化します。
非機能要件を整理するための観点
非機能要件は感覚的に決めるものではなく、観点ごとに分解して考えることで初めて具体化できます。以下は、設計段階で整理しておくべき代表的な観点です。
| 観点 | 主な検討内容 | 設計時に考えるべき問い |
| 性能 | 処理速度、レスポンス時間、同時利用数 | 業務が集中する時間帯でも待たされずに処理できる必要があるか |
| 可用性 | 稼働率、停止許容時間 | システム停止が事業に与える影響はどこまで許容できるか |
| 信頼性 | データ欠損防止、再実行可否 | トラブル時にどこまで自動で復旧すべきか |
| セキュリティ | 認証方式、権限管理 | 誰がどの情報にアクセスできる前提とするか |
| 拡張性 | 利用者増加、機能追加 | 事業成長時に変化するポイントはどこか |
| 運用性 | 運用負荷、監視方法 | 専門知識がなくても運用できる必要があるか |
| 保守性 | 修正・改修のしやすさ | 軽微な変更でも大きな工数が発生しないか |
| 移行・切替 | 旧システムからの移行方法 | 業務を止めずに切り替える必要があるか |
| 障害対応 | 検知、連絡、復旧手順 | 障害時に誰が何を判断する前提とするか |
| コスト | 初期費用と運用保守費用 | どこにコストをかけ、どこを割り切るか |
このように整理することで、非機能要件は単なる技術条件ではなく、事業判断の集合体であることが見えてきます。
事業成長と非機能要件の関係
非機能要件は、事業計画と密接に結びついています。将来的な利用者数の増加をどう見込むのか、業務量が倍になった場合でも処理時間を維持すべきか、障害発生時にどこまで事業影響を許容できるのか。これらはすべて経営判断です。非機能要件を詰めるという行為は、事業の成長シナリオをシステムに反映させる作業だと言えます。この視点が欠けたままのシステム投資は、短期的には成立しても、中長期的には足かせになりがちです。
フルスクラッチ開発でこそ活きる非機能要件
フルスクラッチ開発の価値は、自社の業務や事業方針に合わせて、非機能要件を柔軟に設計できる点にあります。処理性能をどこまで求めるのか、セキュリティ対策をどの業務に適用するのか、運用を誰がどの頻度で行うのか。こうした前提条件を初期段階で織り込むことで、無駄なコストを抑えつつ、将来の変更にも対応しやすいシステムが実現します。機能比較だけでは見えない部分こそが、フルスクラッチ開発の本質的な価値です。
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非機能要件を言語化するために必要な視点
非機能要件を明確にするためには、技術的な知識だけでなく、業務理解と事業視点が不可欠です。日常業務のどこに負荷が集中しているのか、止まってはいけない業務は何か、担当者が変わっても回る運用にしたいのか。こうした問いを重ねることで、初めて非機能要件が具体的な判断材料になります。システム開発会社には、要件をそのまま受け取るだけでなく、事業側の考えを整理し、言語化する役割が求められます。
まとめ
非機能要件は、システムの裏側にある補足条件ではなく、事業の将来を左右する重要な判断領域です。機能要件だけでシステムを評価すると、稼働後に見えない負担や制約を抱えることになります。初期段階で非機能要件を丁寧に整理し、自社の事業方針と照らし合わせて設計することが、長く使われるシステムへの近道です。システム開発は制作作業ではなく、事業判断を形にするプロセスであり、その成否は非機能要件への向き合い方によって大きく左右されます。
非機能要件まで踏み込んだシステム開発を実現するためには、要件を「決めきる力」と、それを事業の文脈で整理できるパートナーが欠かせません。当社フレシット株式会社は、業務内容や将来の事業展開を丁寧にヒアリングし、性能・運用・セキュリティといった見えにくい前提条件を、初期段階から具体的な設計判断に落とし込むことを重視しています。単に作ることを目的とせず、長く使われ、変化に対応できるシステムを前提に考える姿勢が、フルスクラッチ開発の価値を最大化します。自社の業務や事業に本当に合ったシステムを、納得感を持って形にしたいと考える会社さまにとって、当社フレシット株式会社は安心して相談できる選択肢となるはずです。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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